25 ダブル移植の語り部(書籍版)まえがき
ドナー(臓器提供者)という存在は、本当に不思議な立ち位置のままで、手術を受け、入院生活を送ることになります。身体的には、メスが入り、臓器を切り取られたり、摘出される訳ですから、当然、痛みはありますし、カテーテルやドレーンといった、さまざまな管も挿入され、まさに「病人」そのものです。ですが、元々ドナーは健康体なので、時間の経過とともに、健康を取り戻すことは、半ば、保証されています。その上、手術後の身体の痛みはあるけれども、それと引き換えに、大切な家族を救えたという、精神的な充足感に、満たされます。〈痛いのにうれしい〉という、アンビバレントな心情を抱えて、退院することになるわけですが…そんな「つかの間の病人」でも、退院して、久しぶりに電車に乗った時の、キラキラした解放感や、「今日からは、家の中で、何をしてもしなくてもいいし、何でも好きなものが食べられる」という、選択の自由を、取り戻した喜びは、今でも鮮やかに、よみがえってきます。にほんブログ村にほんブログ村にほんブログ村にほんブログ村