お世話になっている花屋さんによると、今年の冬は寒いのだそうだ▼スイセンなどは必ず家の中に入れておくようにと教えてもらった。なるほど、そう言われてみれば、いつもの年より少し寒いような気もしてくる▼早いもので、この間、年が明けたと思ったら、もう「寒九」である。一月五日の寒の入りから九日目のことで、今年は昨日の十三日がその日だった。<寒の水飲み干す五臓六腑(ろっぷ)かな>細見綾子。寒の水の説明はいるまい。寒九に汲(く)んだ水は一年のうちで最も澄みきっていると伝えられ、服薬に用いるのがよいという。お酒や化粧水や紙すきなどにも「寒九の水」は欠かせなかった▼寒九にまつわる、もうひとつ、よく聞く言い伝えが、「寒九の雨」。この日、雨が降るとその年は豊作になると信じられていた。ただし、関東など太平洋側はこの時期は雨が少ないそうで、その分「寒九の雨」にありがたみを感じていたのかもしれない▼天の神さまにおまけしてもらって、雨ではなく、雪でも豊作の兆しとして認めてもらえないかとつまらぬことを考えてしまう。雨はないが、北陸や新潟などでは大雪である。風も強まっている。短時間で積雪が増える危険もある。こうなると「寒九」ではなく「寒苦」の方の漢字を当てたくなる▼「雪は豊年の瑞(しるし)」とはいうけれど北国にしんしんと降り積もる雪が心配である。春よ来い。
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