ギリシャの神殿に「身の程を知れ」といった意味の言葉が掲げられていた。ソクラテスは文字どおりに理解した。「汝(なんじ)自身を知れ」は、モットーになる。宗教評論家ひろさちやさんの著作に教わった言い伝えである。古代ローマではこの言葉が骸骨の絵に添えられた。「やがて消える身」と理解した貴族は享楽的に生きる道を選んだという▼まったく同じ言葉でも、受け取る意味は人や時代により、戒めにも歓楽の勧めにもなる。ビル群や道路といった窓の外の光景もそこから何を感じ取るか、変える時が来ているかもしれない。そう思わせるニュースが最近あった▼イスラエルの研究機関によると、人がこれまでにつくったものの総量が一兆トンを超え、動植物などに由来するものを上回った可能性がある。想像が難しいが、ニューヨークの人工物は世界の魚の重さと同等になっているらしい▼驚くのは速さで、百年で急激に増えた人工物は、二十年後に生物由来の倍になる。素人目にも大変に思える地球への負荷だ▼環境も食糧や資源の供給も、経済成長重視が続く限り、破綻が避けられないという主張を見るが、説得力を与える研究成果に思える。街のコンクリートや金属から、成長の成果ではなく戒めや警告を読み取るときではないか▼あまり見たくない事実は、往々にして見るべき事実である。我々自身を知る時が来ていよう。
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