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創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

無責任落語録(42)「かごしま寄席~落語協会 寄席普及公演」観覧記

 

題の件、11/19川商ホール(鹿児島市民文化ホール)観覧にまいりました。その模様を書き留めておきます。

『かごしま寄席~落語協会 寄席普及公演~』

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この公演、普通の落語会とはちょっと違う。スポンサーやお旦の招きで、というのではなく、一般社団法人落語協会の主催で行われる公演である。もしやこれは、古い芸人伝にしばしば回顧される「」というやつなのか? 新型コロナは大分落ち着いたものの、人々の外出控えが続いているこの国の状態で、寄席で待っていても客がこないのならこっちからいっちょう行ってやろうじゃないかと、そういう企てなのかもしれない。一朝一座だけに。

寄席形式の公演はうれしい。囃子も音源じゃなくて、下座さんがいて、太鼓があって。客入れ前に袖で太鼓が鳴ってると空振で緞帳が揺れる。CDじゃそれがない。あの空気がビンビン揺れる感じが「はじまるよ」という高揚感を与える。

番組もいい。一席の持ち時間は寄席同様15分~20分。間にはさまって色物さんの芸を見るのも実に好い。豊かで贅沢な「おあすび」である。どうもこう、落語だけの会とか独演会というのは、長いし、飽きるし、正直どっか苦痛と戦っているところがある。我慢して食らいついて、一瞬の冴えみたいなものをなんとか見つけ出そうと悶えながら聞いている自分にたびたび出くわす。

 

演の内容は以下のとおりでした。

 

速報に載りきらなかったことを書いていこう。

客席はほぼ満席で、おじいさんおばあさんばかり。見渡す限りじじじじじじ、ばばばばばば。なんで年寄りばかりなのだろう。もっとも、金曜日の夕方6時なんて、若い人はみんなまだ働いてるわいな。

オープニングに寄席囃子の生演奏があった。分かりやすくて面白かった。前座のあがり、というのをはじめて知った。出囃子の例で、上方の笑福亭鶴瓶、芸協の三遊亭小遊三の出が掛かった。落語協会の人のを掛けないところが粋なもんだと思った。

開口一番、春風亭一花さんは、口跡がはっきりとして聞きやすく、登場人物がよく見えた。女性落語家はみなさん苦労があると思う。噺を身に刷り込む以前に、登場人物の了見を覚え込まなきゃならないが、なにしろ落語は男が主人公の噺ばかりだ。男の噺家よりも数段大変だと思う。その苦労と研鑽のよるものだろうか、登場人物はこの日随一の輪郭を持っていて素晴らしかったと思う。しかし……不思議なことに、ときたま「落語をしている人を演じている人」に見えてしまうことがあった。この現象ははじめてみた。どういう解決法があるだろう。ううむ。

ロケット団さんは、東京の寄席でも数度拝見している。相変わらずバカバカ受けていた。コロナ自粛の時、動画サイトで寄席中継があってロケット団さんが出ると知り、東京ですごく笑わせてもらったのを覚えていたので楽しみにして聞いたのだが、なぜかぜんぜん冴えがなかった。聞いたことがあったネタだったのに。無観客というのもあるのだろうけど……。だが今公演では爆笑大爆発。一体感がいい。ネタで笑かすテレビ向けの芸人もいれば、観客をどこかにつれていってくれるライブ向けの芸人もいるんだと思う。

中トリ柳家喬之助さんは、脂の乗った力強い芸で客席を圧倒した。最近の落語ブームを引っ張っている若い真打さんと似た芸風なのかしら。前回コラムの彦いち師の項で同様のことを書いたが、このところ、この傾向はかえって無個性に思える気がする。いきおいの中に味わいが欲しい。

林家二楽さんは紙切り芸。切り絵の仕上がりに感嘆の声が続いた。技術もさることながら、テーマにたいして常に客席の期待を超えてくる「そうきたか!」感が毎度心地よい。それにしても話がおもしろい。寄席で二楽さんが出て、後で振り返ると一番笑ったのが二楽さんというケースは多いんじゃないか。あと、聞いていて、声が円丈さんに似てるな、と一瞬思った。

トリは春風亭一朝さん。短い持ち時間の中で、小さなくすぐりを大胆に省き、ラストのお涙頂戴のシーンをたっぷり聞かせる。噺の寸法を変幻自在にコントロールした圧巻の芸である。かといって、噺の骨組みを無理に押し流してしまうことなく、折り目はしっかり整っていて、耳に鮮やか(これは一花さんにも感じた)。笑いどころを惜しまず大いに笑わせる。笑うことは素晴らしいことだと思わせていただいた。ありがとう落語、ありがとう一朝師匠。

 

上、生意気な感想をつらつらと並べてみました。
ひとつ希望を言うと、ひとつくらい新作落語がはさまってもよかったんじゃないかな、と。
引き続き鹿児島での落語公演があったら、覗いてみようと思います。
おしまい。

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