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創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

無責任落語録(44)「桂枝之進落語会『進撃のツアー2022 in鹿児島』」観覧記

 

る11月3日マルヤガーデン4階で催された「桂枝之進落語会『進撃のツアー2022 in鹿児島』」を観覧したので、備忘録をしておこう。
桂枝之進さんの詳細についてはこちら。

桂 枝之進 | 上方落語家名鑑
上方落語協会ウェブサイトから)

入門は17歳、現在21歳。非常にお若い噺家さんである。

 

噺家さんを聞きに行くのは、落語愛好の道においては一つの投資である。
一人の若き芸人が、これから幾千万の高座を経て大看板に成長していく。ご本人の言うとおりいつかは人間国宝になるかもしれない。もしそうなったら、ぼくは周囲に「昔、枝之進さんの若い頃の高座を見たことがあってね」と自慢しようじゃないか。

こんなことを言っては大変失礼かもしれないけど、若手は、そりゃあベテランと比べたら、いろいろと足りない。でも客だって、最初は素人耳で、いくつも見聞きして通になっていく。客も育っていくんです。だから謙虚に芸を見つつ、芸人を見る。人間ドキュメントの一瞬に立ち会う。

そんなつもりで観覧に出かけたのであります。

 

て、会場は二〇から三〇人程度のこじんまりとした部屋で、落語を聞くにはいいキャパだと思う。
ただ、場所の構造が特殊で声がわんわん響く。そこにきて元気に大声で話すから、正直聴きづらいところがあった。反響して声が重なり、次のせりふとからんじゃって、カミシモを切っても話者が変わったことに気付かないところがあった。

あの感じだったら普通に話しかけるような声量でもいけたんじゃなかろうか。規模的には「お座敷」でやる感じに近いと思う。が、これまた概念の問題で、お座敷を模するのは関東で、上方は辻講釈発祥だ。

 

は2席。牛ほめ、崇徳院

鹿児島人に分かりづらい関西語があったと思う。ゆっくり言ってくれたらなんとなくニュアンスを掴めるかもしれないけど、早い調子だと理解する前に噺が進んでしまって、全体的に何を言ってるか分からなくなる。音が響いてなおさらだ。

関西弁はメジャーな方言で、関西の人には「全国に通じる」と感じる部分があるかもしれない。が、それはせいぜいイントネーションと一部の言い回しのみで、単語となると別だ。噺家さんも分かっていて、テレビと高座録音で単語が違ったりする。たとえば「らくだ」の冒頭にでてくる「どぶさる」「ごねる」というのは、録音では聞いても、テレビではあんまり聞かれない。それはその二つが関西以外ではあまり知られていないからそうしているのだと思う。
もし「一字一句変えてはならない」という禁がないのであれば、標準語に訳してあると、関西以外の人はありがたいだろう。

 

ほめは、いい間だなと思ったところが何カ所もあって、どこかで感じた間合いだなぁとよくよく考えたら、大師匠の6代目文枝さんだった。言い立ての多い話は一本調子になりがちなので、間ってほんとに大事なんだなぁと思った。

 

徳院の方では、大師匠を感じたところはなかった。
てったいが追い詰められていく雰囲気がもう少しあったらなと思った。
どうやったらそれがでるのか、自分で考えてみた。

話中のてったいさん、何日も走り回ってしんどいわけだが、仕型の端々に彼の強欲が垣間見えたらいいのでは、と思う。強欲とはつまり、旦那がくれると言う「金と不動産」ほしさである。さらにここで忘れてはならないのは、てったいは付き合いの長い坊(ぼん)が恋煩いで死ぬかもしれない事実を、ほぼ忘れ去っているところである。そんな冷血漢のわりに小心者で、旦那と妻にはへこへこしている。その小物感をそのまま描くとみじめなので「せをーはやーみ!」と大声を出すことで滑稽に振る……というのがいいのかなあと思ってみた。素人考えです。

 

と、芸とは関係ないのかもしれないが、舞台装置としてのお衣装について思った。つやのあるシルバー(?)で、それ自体はいいと思うのだが、噺の中でそれは「若旦那」の姿である。牛ほめも崇徳院も町人が主役なので、地味な方が感情移入しやすかったかな、というのは、ある。誰かご贔屓が用意してあげないといけない! が、ぼくには財力がないorz

 

枝之進さんは、入門4年と考えると、そのうち二年くらいは新型コロナ感染拡大で、なかなか活動できなかったことだろう。そんな中でへこたれず芸道精進し、元気いっぱいの高座……ぼくは素直に元気をもらったと思う。不惑を過ぎて最近「若い人から元気をもらう」という言葉の意味を理解できるようになってきたが、そのでかいのを一発いただいた。感謝申し上げたい。

   *

なんだか苦言が多くなっちゃってごめんなさい。

繰り返すが、聞き手として、若い噺家さんの芸に触れるのは一つの投資であり、耳を肥やす一つの機会。
これからもどんどん触れていこうと思います。
人間国宝になってください! 応援しています! いよっ!

 

オチケン

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