どうしても上手く介助をしてあげたい!!
こんにちは。しばらくご無沙汰しておりました。
実は少々考え事をしておりました。私の職場の利用者様のことです。
その利用者様は昔大工の棟梁でした。バリバリの昔堅気の方でとても笑顔が素敵な利用者様です。その素敵な笑顔から「太陽さん」と他の利用者様から呼ばれる程とびっきりの笑顔を振りまいてくださいます。
その太陽さん、病気の影響でアッというまにレベルが落ちてしまいました。
私と出会ったときは一人で歩いてブラックコーヒーを飲みにデイルームまで来り、お風呂もお湯さえとってあげれば一人で入っていました。トイレだってオムツを使わずにいたのです。それが2年前の状態。
太陽さんはまず足が弱くなりました。転倒が続き次の一歩がなかなか出なくなりトイレに間に合わなくなってしまいました。手すりを使ったり歩行器を使ったりしていましたがとうとう車いすになってしまいました。次に手に力が入らなくなっていきました。すると食事のおはし、スプーンが持てなくなります。お食事のお手伝いを私たちがするようになりました。リハビリに励んではいるのですが思うように結果が出ないため本人もやる気がなくなり今では立位もとれず全介助になってしまったのです。
太陽さんはその急激な自分の体の変化を受け入れることができません。車いすへの移乗、トイレ介助、入浴介助の時は特に大変になります。
昔気質の太陽さんは「女の人の力は借りたくない!」という考えをお持ちです。
太陽さんは骨太で体格もしっかりとしており体重も重い。きちんとした姿勢や重心の移動をしないととても危ない状態になります。自分が壊れることもあります。現に数人のスタッフが太陽さんの介助の時に腰を痛めています。
でも太陽さん。どうしても女性の介護士に体重を預けることができません。
介護をされている方ならおわかりかと思いますが、利用者様が介護士に体重を預けることにより重心が一つとなり移動、移乗しやすくなります。
でも太陽さん、手に力が入り身体をそらしてしまいます。特に女性職員には「照れ」もあるのでしょう。身体に力が入りこわばってしまいます。
そのためトイレ介助、入浴介助では時間もかかりとても大変な時間になってしまいます。これは私たち介護士より太陽さん本人がとても大変な時間になってしまっていました。
そんなあるときコールがなり私が対応しました。
「太陽さん失礼します。どうされました?」
「トイレに行きたいんだけど…。」
「わかりましたよ。今用意するから少しお待ちいただけますか?」
「えっ??行っていいのかい?」
「えっ??トイレ出るんですよね。それならトイレ行った方がいいですよね?」
私は意味がわからずこう返答してしまいました。
「トイレ行くっていうと嫌な顔されるんだ…。」
悲しかったです。そういう対応をされていたのかと思うと胸が痛みました。
確かに太陽さんの介助は大変なのですが、私にはとても学びの多いことでした。
無意識のことでもそんな表情を浮かべていたのだろうか…。申し訳なかったです。
「こないだもお風呂をシャワーにするって言われたんだ。」
「えっ?太陽さんお風呂大好きじゃないですか!!」
「うん。大好きだからシャワーじゃ入らない。って言ったんだ。そしたら嫌な顔されたんだ。アンタくらいだったんだよ。お風呂いれてくれていたの。」
知らなかった…。私は夜勤が多いため、太陽さんの入浴介助にあたるのは月に1回ほど。私は太陽さんがお風呂の中で「あ~。」と満面の笑みを浮かべながら気持ちよさそうにするのを見るのが好きで道具を駆使してできる限り入浴をしていたのです。
「ごめんなさい。そうだったんですね。気が付かなくて本当に申し訳ございません。」
謝るしかなかったです。
トイレ介助をしてお部屋に戻ったとき太陽さんはいいました。
「こんな体になって…。早く死にたい。何もできない。」
私は介護士としては失格なのかもしれません。その言葉を聞いたとき無性に腹がたちました。
「ちょっとまって。何もできない?違うでしょ?トイレで用を足してるでしょ。ご飯だって普通のご飯を食べれてるでしょ。お風呂にだって入っている。何もできないとあきらめたら本当に何もできなくなりますよ。確かに太陽さんの介助は大変かもしれない。でもね。それは太陽さんの協力がなければできないんですよ。私はいつまでも太陽さんにお風呂に入って「あ~」って言ってもらいたい。だからどうやったら太陽さんが一番楽でおまけに私たちも楽になれるかを考えているんですよ。お互いが何も見つけてもいないのに諦めるのは早くありませんか?やれるだけのことをやりましょうよ。諦めるのはそれからでも遅くないじゃないですか。
太陽さん、私は経験もあまりなくてうまく介助できていないと思います。私も勉強しながらだけれども絶対太陽さんを上手に介助できるようになりたいんです。一緒にがんばりませんか?」
介護士としては利用者様に介護が大変なんていうのはありえないことです。禁句ですよね。でも人として心からぶつかってみたかった。
「できるかな?」
「まずはやるだけやってみましょうよ。なるようになるさ!」
太陽さんはとびっきりの笑顔をみせてくれました。久しぶりのこの笑顔。見れて本当によかったです。私たちの試行錯誤は現在進行形です。
介護をされているみなさん。どうか私に知恵をわけてください。
私は太陽さんをどうしても楽に介助をしてあげたい。楽というのはお互いに楽じゃないと意味がないのです。
沢山の動画を見ました。家で家族を相手に練習もしてみました。道具も使いました。
でもいまいちしっくりとくるものがないのです。どうか良い方法があれば教えて頂ければ嬉しいです。
お読み頂き有難うございました。