怠惰の美徳 梅崎 春生
社会学者のマックス・ウェーバーは、合理化が隅々まで進展した社会において、
(人間がつくったはずの)社会システムに、(逆に)人間が取り込まれ、
がんじがらめになっている様を「鉄の檻」という表現で予言しました。
その「鉄の檻」に閉じ込められてしまうと、人は「檻の中のルール」を至上とし、
檻内での順位争いに明け暮れるため、まるで機械であるかのように
人間性を劣化させていくと言われます。
(勘の良い方はすでに、思い浮かべているかもしれません。あの人の顔、この人の顔...)
この生き地獄のような檻から抜け出す方法はただ一つ。
それは、檻の外側から「檻内を俯瞰する視点」を取り戻すこと、だけです。
この本を簡単に表現するならば自主的に、明確な意志を持って怠けている男の本です。
ひょっとすると上記を読んだだけで、嫌悪感を持つ方もいらっしゃるかも知れません。
しかしここで考えるべきことがあります。
私たちの多くが無意識に「怠ける者=嫌悪すべき対象」と感じてしまうことが、
すでに私たちが檻の中にとらわれていることの証しとなるということです。
檻内の基本的ルールは強者の論理でつくられています。
競い合い、その勝敗や優劣で順位づけを行うシステムにおいて、
競い合いにそもそも参加しない存在は、ただの「バグ」でしかありません。
しかし、そんなバグのような存在だからこそ、システムの本当の姿を見極められるのです。
「狂っているのは私か?それとも社会そのものか?」
筆者は身を賭して観察した社会の実相を極上のユーモアで淡々と表現していきます。
それは時に笑い転げたくなるほど滑稽で、時に痛々しいほど哀しいものです。
私たちはドロップアウトすることを、まるで命が終わるかのように怖れます。
しかし、脱落してみなければ見えない景色・視点が必ずあります。
この本はそんな「擬似ドロップアウト体験」をさせてくれるまさに稀有な本なのです。
編者の荻原魚雷さんがもう最高の仕事!!解説も◎!!
新ブックレビュー20冊目のために温存しておいた店主のとっておき中のとっておき!
今だからこそ読まれ、スポットが当てられるべき作品です!!
この本のズバリ!!ここがポイント!!
自前で怠けている分には誰にも後指さされるいわれはない。
私は自主的に怠けているのである。
滝なんかエッサエッサと働いているようだが、眺めている分には一向変化がなく、
つまり岩と岩の間から水をぶら下げているだけの話である。
忙しそうに見えて、実にぼんやりと怠けているところに、言うに言われぬおもむきがある。私は滝になりたい。
僕にはっきり判っていることは、
とにかく今の時代が居心地よくないということだけであった。
そういう最大公約数を皆と分ち合っていた。
ー 梅崎春生
なぜこんなに生きづらいのか。その答えを本当に知りたいのならば、
「怠け者」の視点から人と社会を見つめてみなさい。本当は何が異常かが分かるから。
↑名作「怠惰の美徳」の仕掛人で編者こそ荻原魚雷さん!!ハイスピードを良しとする現代社会において、
その真逆に恋焦がれ続ける男の絶品エッセイ!!絶対合わせて読むべき。
↑「もっと休みくれっ!!」というあなたが、もし「明日から2000日休んでいいよ」と言われたら???
予測不能、奇想天外な心の旅路を擬似体験してみたら???
↑頭をすっぽりと覆ったダンボールは社会への帰属の拒絶。完全なる個体となった人間から見る
社会とは?現代人とは?奇才の構築した心の迷路へさあ、いってらっしゃい。
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