一人コントは難しい…吉住 | りおみーのブログ ニュースとお笑い芸人に不毛な突っ込み

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主にお笑いのネタに関して、時々ニュースに関して、「これってどういう事?」をロジカルに分析してます。


一人コントは難しい、、、

□□□□□□はじめに□□□□□□

かなり遡りますが、
昨年12月の『女芸人No.1決定戦 THE W』で、
4代目王者に輝いたのは『吉住』さんでした。

『THE W』はジャンルを問いませんが、
『吉住』さんのネタはコントでした。

前号、前々号で書いたように、
コントの基本は、
「設定からの逸脱」か、
「逸脱した設定」です。

最終決戦のネタは、
コントの基本に忠実な、
「設定からの逸脱」で笑いを作っていました。


しかし、、、

普通のコントとは違います。

そう、、、

ピン芸人なんです。

いや、分かってるわ!

そんな芸人いっぱいおるわ!

…いや、確かにそうなんですけど、、、

登場人物の一人しか演じずにコントをするって、
実はスゴい事だと思います。

例えば、落語の場合は、
一人で複数人を演じる事が可能です。

コント以外だったら、
ピン芸人が人員不足を補う手段として、
フリップを使う等の手段があります。

一人コントの場合でも、
人員不足を補う手段として、
音声や映像を利用する事があります。

その場合、音声や映像がボケで、
演者はツッコミの事が多いように思います。

吉住さんのこのネタでは、
音声や映像は使わず(SEはあります)、
吉住さんがボケ役の銀行員を演じます。

それって、つまり、、、

「ツッコミ」が無いって事です。

難しくないですか?

「ツッコミ」が果たすべき全ての役割が期待出来ない訳ですから。

特に、
笑いのフォーマットの再提示が無いと、
せっかくボケても、
『今』『ココで』『このボケで』笑わせようとしている、、、
…という事が伝わり難いですよね。

つまり、それを伝える工夫が必要になる訳です。

□□□□□設定からの逸脱□□□□□

最終決戦のネタで吉住さんが演じるのは、
銀行強盗の人質になっている女子銀行員。

銀行強盗の人質という設定なら、
身体を寄せ合って震えてるとか、
こっそりと犯人の様子を伺うとか、
人質同士で励まし合うとか、
逃げる相談をするとか、
…等が、あるべきイメージでしょうか。

そんな設定から想定させるあるべき姿を裏切る言動で笑いを作るのが、
「設定からの逸脱」による笑い。

「設定からの逸脱」の笑いのフォーマットを一般的に表現すると、、、

< 基準 >:設定のシチュエーションに相応しく振る舞うべきにも拘わらず
< ズレ >:設定のシチュエーションに相応しくない振る舞いをする
<ツッコミ>:「何しとんねん!」「状況分かるやろ!」


吉住さん演じる女子行員も、
場の空気を読まず、
「支店長がカッコいい」
「支店長に告白する」
…と、銀行強盗の人質としては相応しくない言動を繰り返す事で、
ディスコミュニケーションを表現しています。


< 基準 >:人質に相応しく振る舞うべきにも拘わらず
< ズレ >:人質に相応しくない振る舞いをする
<ツッコミ>:「人質が何してんねん!」「えっ?この状況で?」

女子行員の言動は、
終始一貫おかしい。

場の空気を全く読めないディスコミュニケーションキャラクター。

でもね、ディスコミキャラだからといって、
始めから終わりまで観客が笑ってる訳ではありませんよね。

女子行員の場違いな言動すべてが、
笑いを引き起こすという訳ではありません。

実際には、
笑いが起こるポイントがあります。

…というか、笑いを獲るポイントを作っている訳です。

このネタでの笑いの作り方は、
大きく2つの方向性に分けられます。

(1)ディスコミキャラのズレをより強調した笑い
(2)ディスコミキャラをフリとする笑い

…分かりにくいですね。

□□□□□□(1)ズレ強調□□□□□□

方法の一つは、
仕草や表情、しゃべり方に特徴を持たせるといった、
意外とシンプルな方法です。

仕草やしゃべり方を再現するのは難しいですが、
下記の様な感じ、、、

「今、銀行強盗入られているんだもんね。
あー、でもさぁ、さっきの『お客様には手を出さないで下さい!』って、あれー、
メッッチャ…カッコよ~く、♡な…かっったぁ~?(о´∀`о)
…アタシね、、、支て~ん長~~のこと~~~♡、好きかもッ♡(///∇///)」

発言内容だけでなく、
場に相応しくない、
浮かれたしゃべり方や仕草がおかしい、、、

…とはいっても、
ギャグの様に、仕草やしゃべり方そのものの滑稽さを笑う訳ではありません。

発言内容のズレを、
仕草やしゃべり方で強調する事で、
場の雰囲気とのギャップをより大きく感じさせる訳です。

空気を読めない、
状況を理解してない、
…といったディスコミュニケーションを、
より強調しています。

< 基準 >:人質に相応しく振る舞うべきにも拘わらず
< ズレ >:人質に『まったく』相応しくない振る舞いをする
<ツッコミ>:「人質が何してんねん!」「えっ?この状況で?」

フォーマットは同じですが、
ディスコミュニケーションの強調を『まったく』で表現しています。


あげくのはてに、
犯人を怒らせ、威嚇発砲されます。

同じく、仕草や表情を再現するのは難しいですが、
下記の様なイメージ、、、

「バンッ!(>_<")
~~~~~~~~(゜ロ゜;ノ)ノ
…はいっ???(゜〇゜;)?????
うるさかったですか?( ゜o゜;)
…ごめんなさ~い、、、(-人-)
静かにします、、、、(^_^)ゞ
ε=ε=ε=ε=ε=(((ノ≧∇≦)))ノ」

(突然の発砲に)驚き、
(予想外の出来事に)ビビって後ずさり、
(何故発砲されたか解らず)戸惑い、
(自分が理由だと)理解し、
(犯人を刺激しないよう)謝罪し、
(服従?の意思を示すため)敬礼し、
(ピンチを切り抜けて)浮かれて席に戻る、、、

発砲されて、
直前までビビっていたのに、
その緊張から解放された後に席に戻る時には、
浮かれてペンギンみたいにピョコピョコ歩くシーンでは、
笑いに加えて拍手も起きます。

「ディスコミュニケーション」のフォーマットは同じですが、
この落差は、
より「緊張の緩和」が効いていますね。

そもそも、
銀行強盗というシチュエーションと女子行員というディスコミキャラの間には、
緊張と緩和の対比がありますが、
このシーンでは、
発砲により緊張が高まり、
時間軸でも緊張の緩和が効いていて、
その変わり身の早さは、
より強く緊張の緩和を感じさせます。

< 基準 >:銀行強盗、発砲の緊張感と比較して
< ズレ >:女子銀行員の言動の緊張感の無さ
<ツッコミ>:「どんだけ緊張感無いねん!」「力抜けるわ!」


その後、再び発砲された時に強盗にはなった一言、

「ごめんなさい、
ごめんなさい、、、、、
すぐ撃つじゃん!('ε'*)」

…も、空気を読まない強烈なディスコミ発言ですね。


この様に、
笑いのポイントを作る手段の一つは、
ディスコミキャラを強調したり、
緊張の緩和を効かせる事で、
笑いのフォーマットの落差をより大きく見せるという方法です。

□□□□□□(2)フリにする□□□□□□

上記引用の前半部分、

「バンッ!(>_<")
~~~~~~~~(゜ロ゜;ノ)ノ
…はいっ??(゜〇゜;)?????」

銃声にビビって思わず立ち上がり後ずさる仕草とその表情にも笑いが起きます。

でも、突然発砲されて怖がるのは、
普通の反応です。

普通の反応の何が笑いになっているのでしょう?

確かにその仕草、表情自体も滑稽で、
「何やねんその顔!」
…とも突っ込めます。

…ただ、それに加えて、
この様にも突っ込みたくなります。

「そら、そうやろ!」
「なんで『?』やねん」
「驚きすぎやろ!」

…つまり、
自らのディスコミュニケーションな言動により引き起こされた事態にも拘わらず、
予想外の出来事かの様に、
驚き、怖がる事が、
可笑しい訳です。

< 基準 >:(自らの言動により)強盗犯が怒る事が予想出来るにも拘わらず
< ズレ >:強盗犯が怒る事が予想出来なかった様に驚く
<ツッコミ>:「そら、そうやろ!」「自業自得や!」「なんで『?』やねん」

発砲に驚くという自然にも思える行動も、
その前の状況から逸脱した言動の存在を踏まえると、
逆にディスコミュニケーションになってしまうという事です。


このネタの冒頭の台詞、、、

「ねぇねぇ、サトミ大丈夫?強盗がこの銀行に立て籠ってからもう3時間か、、、
何か単独犯っぽいし、お客様だけでも解放してもらいたいけど、、、
そうだね、さっき支店長が頼んでたけどダメェ……だったもんね。
ねぇ、サトミ、、、支店長だけど、彼女いるのかな?(^w^)、、、
……分かってる、分かってる、今じゃないよね、、、」

場に相応しい発言から、
場に相応しくない発言、
さらに、場を理解している発言。

この振り幅が笑いを作ります。

< 基準 >:自ら場に相応しくない発言をしたにも拘わらず
< ズレ >:場に相応しくない事を理解している発言をする
<ツッコミ>:「分かっとるんかい!」「分かってんなら言うな!」


「ねぇ、サトミ。私、決めた。支店長に告白してくる、、、うん、今から!そうだよ!今からだよ!えっ?今はダメって、何で?…あのね、サトミ。私達に生きて帰れる保証なんて何処にも無いんだよ!」

「私達に生きて帰れる保証なんて何処にも無いんだよ!」
…って発言内容自体は間違ってない、、、

…んですが、
突っ込みたいでしょう。

散々、状況に相応しくない言動をしていたのに、
上から目線で自分だけが状況を理解しているかの様に話すのがツッコミ所です。

しかも、その命の危険を大きくしているのは、
自分のディスコミ行動ですからね。

ディスコミキャラ故に、
正論がズレになっている訳です。

< 基準 >:自ら状況を理解しない発言を繰り返しているにも拘わらず
< ズレ >:状況を理解しているかの様な発言をする
<ツッコミ>:「何、分かった風の事言うてんねん!」


< 基準 >:より危険な状況を自らの言動で招いているにも拘わらず
< ズレ >:より危険な状況を他人事の様に発言する
<ツッコミ>:「どの口が言うとんねん!」「お前のせいやろ!」



「あ、あのー、支店長~、好きです。付き合って下さい!\(__)/……あー、言っちゃった、、、
『バンッ!(銃声)』
みんな、ザワザワしない!殺されちゃうよ、、、ね。」

この、
「みんな、ザワザワしない!殺されちゃうよ、ね。」も、

この発言だけを切り取ると、その内容は正論。

でも、その状況を作り出しているのも本人ですからね。

「お前が言うな!」
って突っ込みたくなります。

< 基準 >:危険な状況を自らの言動で招いているにも拘わらず
< ズレ >:危険な状況を他人事の様に振る舞う
<ツッコミ>:「お前が言うな!」「何で他人事やねん?」


これらは全て、
ディスコミキャラに徹し、
ディスコミ行動を繰り返していたが故に、
本来間違ってないはずの言動が、
逆におかしくなっています。

ディスコミキャラを前振りにしている訳です。

これが、2つ目の笑いのポイントの作り方です。

□□□□□□まとめ□□□□□□

この後どうなるかは、
ぜひ観てみて下さい。


ディスコミキャラを作り上げて、それを演じるのはコントの常道です。

…かといって、
ディスコミキャラに徹していれば、自動的に笑いになるという事ではない訳です。

コンビ、トリオのコントなら、
ツッコミが存在し、
そのツッコミの機能として、
笑うポイントを明示する事が出来ます。

それが出来ないピン芸人の一人コントで笑いを作り出すって、
想像以上に難しいと思います。


m(__)m


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