正しい事言ってます!…SAKURAI | りおみーのブログ ニュースとお笑い芸人に不毛な突っ込み

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主にお笑いのネタに関して、時々ニュースに関して、「これってどういう事?」をロジカルに分析してます。

なんと、、、

正しい事言ってるんです!

…不思議ですよね?

□□□□□□はじめに□□□□□□

『オールスター感謝祭』後の深夜に放送される、
有吉弘行さん司会の『オールスター後夜祭』をご存じでしょうか?

今年の春と秋の2回しかみていないのでそれ以前の事は知らないのですが、
ピン芸人のSAKURAIさんのネタが問題VTRで使われていました。

SAKURAIさんのネタの形式はギター漫談。

ギターの弾き語りで、
言葉を4つくらい並べて、
最後にその言葉の共通点を示すというのがテンプレート。

『後夜祭』の問題VTRでは、
言葉を羅列した後で切られ、
共通点部分を4択から選ぶ形で出題されていました。

SAKURAIさんを初めて見たのは、
『R-1ぐらんぷり2020』の決勝で、
面白いと思ったのですが、
深くは考えませんでした。

『後夜祭』で久しぶりにネタを見たのですが、
よく考えたらこのネタ、スゴいです。

何がスゴいって、、、

なんと、、、

正しい事を言ってるんですよ!

…それの何がスゴいって?

だってお笑いって、
基本的には、
間違った事、
常識からズレた事を提示し、
ディスコミュニケーションを感じさせる事で、
笑いを作るはずですよね。

つまり、演者本人や第三者、或いはフリップなど、
常識からズレた事を提示するディスコミュニケーション主体が存在するはずです。

それなのにSAKURAIさんは、
正しい事を言って笑いにしているんです。

簡単に言うと、
変な事を言ってない、
ボケてないんです。

それなのに笑いになるって、
実はスゴい事だと思います。

では、何が笑いになっているのでしょう?

3月の『オールスター後夜祭'21春』の出題ネタで考えてみます。

□□□□ディスコミュニケーション□□□□

上述のように、
間違った事は言っていません。(確認した訳じゃありませんが、観客は少なくとも間違っている事を笑う訳ではありません。)

…ではディスコミュニケーションは無いか?

……実は、
このネタのテンプレートそのものに、
ディスコミュニケーションが付随しています。

1つ目のネタ、、、


(A)「クジャク~~♪

カメレオン~~♪

飛び魚~~♪

ハエ~~♪

……日本から♪
……見えない♪
……星座~~♪」


言っている内容には(おそらく)間違いはありません。

伝えている情報は、

「クジャク座、カメレオン座、飛び魚座、ハエ座とかあるけど、日本からは見えません。」

…って事です。

でも、これをただ伝えたところで、
笑いにはなりませんね。

また、

「クジャク、カメレオン、飛び魚、ハエにはある共通点は何でしょうか?……それは、、、日本から見えない星座です!」

…とハッキリとクイズの出題と解答にしても笑いにはなりません。

ただ情報を伝えるのではなく、
ただクイズを出題するのでもなく、
このテンプレートにしている事がディスコミュニケーションになります。

では、どこがディスコミュニケーションでしょう。

例えば、
4つの単語とその共通点を言うだけなのに、
わざわざ歌にしたり、
ギターを奏で格好つけて歌ったりする事は、
大袈裟とか面倒臭いって感じませんか。

また、何の説明も無く単語を羅列するだけとか、
一単語に2小節を費やして「間」を作る事は、
勿体振ってるって感じませんか?

つまり、情報を伝えているだけなのに、
大袈裟に歌にしたり、
勿体振って答えを引き延ばしたり、
本来必要が無い手間をかけている事が、
ディスコミュニケーションに感じられる訳です。

< 基準 >:(ただ情報を伝えるためには)手間をかける必要は無いにも拘わらず
< ズレ >:(大袈裟に歌にしたり、勿体振って溜めをつくるなど)必要の無い手間をかける
<ツッコミ>:「歌にする事ちゃうやろ!」「早く言えや!」「普通に教えろや!」

□□□□□□落差拡大□□□□□□

情報を伝える形式が大袈裟で、勿体振っているという事は、
その情報の内容がくだらないほど、
そのギャップは大きくなります。

例えば2つ目のネタ、、、


(B)「留置場~~♪

拘置所~~♪

競輪場~~♪

ポプラ~~♪

……立川には♪
……全部ある~~♪」


(A)の情報そのものは雑学知識として「へぇ~」「そうなんだ」って思うけど、
(B)に関しては、その情報自体に「どうでもえぇわ!」「知らんがな!」って言いたくなりませんか?

つまり、(A)より(B)の方が形式と内容のギャップが大きくなり、
より強く、
「わざわざ歌にする事ちゃうやろ!」
「勿体振って言う事ちゃうやろ!」
ってツッコミたくなるでしょう。

落差が拡大して、
より面白くなるという事です。


加えて、(B)の情報には他の笑いも感じます。

実際の立川市は、
立川駅周辺のオフィス街、
百貨店・ショッピングモール等の商業施設、
博物館・美術館等の文化施設、
公園・スポーツ施設も多い、
東京多摩地区の中核都市です。

でも、このネタの偏ったラインナップを聞くと、
「何でそこピックアップすんねん!」
「もっと良いとこあるやろ!」
…ってツッコミたくなりますよね。

立川市と結び付ける施設の選択に、
ディスコミュニケーションを感じます。

< 基準 >:もっと立川の魅力が伝わる施設があるにも拘わらず
< ズレ >:立川の魅力が伝わりにくい施設を選択する
<ツッコミ>:「他にもあるやろ!」「何でそこやねん!」

□□□□□思い込みの間違い□□□□□

「思い込みの間違い」が成り立つ工夫もされています。

言葉の羅列を聞いて、
観客は当然「どういう事だろう?」って考えます。

考えた結果と実際の解答とはほぼ間違いなく異なるでしょう。

…だからと言って、
考えた結果が間違いである事そのものが「思い込みの間違い」の笑いになる訳ではありません。

それが笑いのフォーマットとしての「思い込みの間違い」になるなら、
全てのクイズやなぞなぞは笑いになるはずです。

「思い込みの間違い」の笑いになるのは、
予想する時の思考の方向性と実際の解答の方向性のギャップが大きい場合、
つまり、思いもよらない答えであるほど、
意表を突く答えであるほど、
「思い込みの間違い」が効果的に機能します。

脳トレ系の番組とかで、
予想外の答えに「えーっ!分かるかぁ!」って笑っちゃう事ありません?

このネタなら、
例えば、星座である事を明らかにして、

「クジャク座~~♪
カメレオン座~~♪
飛び魚座~~♪
ハエ座~~♪
……日本から♪
……見えない♪
……星座~~♪。」

…では笑いにならないでしょう。

「~座」を付けず、
動物という枠組みの話のようにミスリードしているからこそ笑いになる訳です。

< 基準 >:動物の事かと思ったら
< ズレ >:星座の事だった
<ツッコミ>:「えっ?動物の話ちゃうんかい!」「星座かい!」

この観点からは、
共通点部分の言い方にも工夫が見られます。

「日本から見えない星座。」ではなく、
音楽にのせて「間」をあけたり、
「これ等の星座は~~♪日本から見えない~~♪。」でもなく、
「星座」という言葉を最後に持ってきて、
「…日本から………見えない……星座~~♪。」
…とするのには、
「思い込みの間違い」の笑いの観点からは、
「思い込み」を醸成する効果があります。

「……星座~~♪」というワードが出るまで、
動物の話題であるというミスリードを引き延ばす訳です。

□□□□□□テンションリゾルブ□□□□□□

このテンプレートにもう1つ付随するのが、
「テンションリゾルブ」。

…というより、これこそがこのテンプレートで一番効果的に笑いを作り出す仕組みです。

テンションリゾルブは「?」の緊張から「!」で緩和する変化に感じる笑い。

単語の羅列に感じるのが「?」で、共通点が示されて「!」です。

< 基準 >:意味が分からない緊張状態(?)から
< ズレ >:意味を理解した緩和状態(!)への変化
<ツッコミ>:「そういう事!」

注:このネタに関しては、
「!」を引き起こす言動には、
逸脱としての<ズレ>は何も無いのですが、
テンションリゾルブとしては、
変化する前を<基準>、
変化した後を<ズレ>として、
笑いのフォーマットの形式に当てはめています。

「?」から「!」への変化に笑いを感じるテンションリゾルブは、
この「?」と「!」のギャップが大きいほど面白くなります。

ハッキリと質問する訳ではなく単語を羅列するだけの形式や、
一つの単語に2小節を使い「間」を作る事は、
テンションリゾルブの観点からは、
「?」を煽っている「テンションの醸成」と解釈できます。

分かりやすく書くと、
説明も無く尺を取ってただ言葉を羅列する事は、
「?」を「????」に増幅する訳です。

結果として、
「そういう事!」が、
「そーゆーコトォ~!!!」になる感じです。

「?」から「!」への変化ってそもそも笑いか疑問に思うかも知れません。

私の理論は、
「笑い=ツッコミたくなる気持ち」。

「そういう事かい!」って言いたくなるその気持ちが笑いです。

上述したように、
脳トレ番組とかで予想外の答えに笑いながら「分かるか!」って言いたくなる事がありますが、
同時に「そういう事!」とも言いたくなるので、
「テンションリゾルブ」とも解釈できます。

ただ、「テンションリゾルブ」単独で機能するというより、
「ディスコミュニケーション」や「思い込みの間違い」との相乗作用で、
笑いを増幅する効果があると考えた方がいいと思います。

何故テンションリゾルブが一番効果的だと思うか。

テンションリゾルブがより効いているネタほど面白いからです。

『後夜祭』で使われたネタはたった4つですが、
後のネタの方が、
「?」を煽ってテンションリゾルブの効果を増幅するようになっていました。

□□□□□□具体例□□□□□□

3つ目のネタ、、、

(C)「秦野市~~♪

秦野市~~♪

秦野市~~♪

秦野市~~♪

大和市~~♪

……LUNA SEAの
…メンバーの出身地~~♪」

(C)は(A)(B)と明らかに違いますね。

同じ秦野市が4つ続き、そこで終わらず5つ目もある。

しかも1つだけ違う。

観客の頭の中は、
「?…同じ秦野市??…また???…どういう事????…えっ5つ?1つ違う?????」
…って感じ。

「?」を煽ってテンションリゾルブの効果を引き出しているのが分かります。

答えを聞いて、より一層、
「そーゆーコトォ~!!!」
…ってツッコミたくなる訳です。

(D)はさらに違う形で「?」を増幅。

(D)「サ~~♪

レ~~♪

ガ~~♪

マ~~♪

パ~~♪

ダッ~~♪

ニ~~♪

サ~~♪

……インドの♪
……ドレミファソラシド~~♪」

(A)(B)(C)では意味の理解出来る単語が羅列されましたが、
(D)では意味のない一音の文字が羅列。

これでは解答を予想する事どころか思考する事が不可能。

しかも4つどころか5つでも止まらず8つ。

観客の頭は、
「?…?…?…?…????????」
…って感じ。

意味が無いので「?」しか存在しえない訳です。

テンションリゾルブの効果を最大限に利用していますよね。

□□□□□□まとめ□□□□□□

このテンプレートだからこそ生まれる笑いの相乗効果。

それを上手く使って尻上がりに面白くなるように配置しています。

特に、
引っ張って、
煽って、
「?」を大きくして、
テンションリゾルブの
落差を増幅するのが効果的。

…でも、間違った事は言ってない。

正しい事を言って笑いにしてる、、、
…って、やっぱスゴいですよね。


m(__)m


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