「働きたくないでござる」「働いたら負けだと思っている」「労働はクソ」このような言葉を聞くたびに、私はいつも心の中で「ウンウンそうだよね~」と頷いています。しかし生きていくためには労働が必要であり、あくまでも理想論として聞き流してきました。

ところがこの「働きたくないでござる」を実践している集団があると聞き、心が揺れ動いています。

全世界で95万人以上のメンバーがいるというアンチワーク集団『サブレディット(r/antiwork)』について調べてみました。

サブレディットについて

サブレディットを団体名のように書いてしまいましたが、サブレディットは集団の名前ではありません。「レディット」という投稿サイトにおける、一部のコミュニティや集まりのことをサブレディットと呼んでいるだけです。5ちゃんねるの「VIPスレ」やツイッターのハッシュタグのようなものをイメージしてください。

アンチワーク集団はそういったサブレディットの1つで、r/antiwork という表記を使っています。

r/antiwork の目的は「すべての人の失業」ではない

サブレディット(r/antiwork)のことを調べるために、彼らの投稿ページ(スレッド)を覗いてみました。

サブレディット(r/antiwork)

一番上に書いてある文言は

Antiwork: Unemployment for all, not just the rich!(アンチワーク:金持ちだけでなく、すべての人の失業!)

とあります。

r/antiwork は、生活のために働かざるを得ない人だけではなく、お金持ちの人も含めた全人類を失業させることが目的のようにも読み取れます。

しかし、FAQページを読んでみると、「すべての人を失業させる」がどのような意図だったのか、真の目的が書かれていました。

r/antiwork

A subreddit for those who want to end work, are curious about ending work, want to get the most out of a work-free life, want more information on anti-work ideas and want personal help with their own jobs/work-related struggles.

Frequently Asked Questions
Why do you want to end work?

Because the modern day workplace is one where you are expected to work despite your own individual needs or desires. Work puts the needs and desires of managers and corporations above and beyond workers, often to the point of abuse through being overworked and underpaid.
You guys are just lazy, right?

Some of us are lazy, sure. What’s wrong with that?
Why “antiwork”?

Anti-work has long been a slogan of many anarchists, communists and other radicals. Saying we are anti-job is not quite right because a job is just an activity one is paid for and we are not all against money. “Anti-labor” makes us sound like we’re against any effort at all and we already get that enough as is. (We’re not, by the way.)

The point of r/antiwork is to start a conversation, to problematize work as we know it today.
But without work society can’t function!

If you define “work” as any activity or purposeful intent towards some goal, then sure. That’s not how we define it though. We’re not against effort, labor, or being productive. We’re against jobs as they are structured under capitalism and the state: Against exploitative economic relations, against hierarchical social relations at the workplace.

Are you anarchists? / Are you communists?

Some of us are.
What’s the meaning behind the user flair flags/symbols?

See here
I hate my job, what should I do?

Tell us about it! No, seriously, tell us what’s going on and what your goals are and maybe we can share some ideas. 🙂

 

Google翻訳

r /アンチワーク

仕事を終わらせたい、仕事を終わらせたい、仕事のない生活を最大限に活用したい、反仕事のアイデアに関する詳細情報を求めている、自分の仕事や仕事に関連する闘争について個人的な助けを求めている人のためのサブレディット。

よくある質問
なぜあなたは仕事を終わらせたいのですか?

なぜなら、現代の職場は、あなた自身の個々のニーズや欲求にもかかわらず、あなたが働くことが期待されている職場だからです。仕事は、マネージャーや企業のニーズや欲求を労働者を超えて、しばしば過労や低賃金による虐待のポイントに置きます。
君たちはただ怠惰ですよね?

私たちの何人かは確かに怠け者です。それの何がいけないの?
なぜ「アンチワーク」なのか?

反労働は長い間、多くのアナキスト、共産主義者、その他の過激派のスローガンでした。仕事はお金を払うだけの活動であり、私たち全員がお金に反対しているわけではないので、私たちが反仕事であると言うことは完全に正しくありません。 「反労働」は、私たちがどんな努力にもまったく反対しているように聞こえます、そして私たちはすでにそれをそのまま十分に得ています。 (ちなみに、私たちはそうではありません。)

r / antiworkのポイントは、会話を開始し、今日私たちが知っているように仕事を問題化することです。
しかし、仕事がなければ社会は機能しません!

「仕事」をある目標に向けた活動または意図的な意図として定義する場合は、確かに。しかし、それは私たちがそれを定義する方法ではありません。私たちは努力、労力、または生産性に反対していません。資本主義と国家の下で構造化されているため、私たちは仕事に反対しています。搾取的な経済関係に対して、職場での階層的な社会関係に対して。

あなたはアナキストですか? /あなたは共産主義者ですか?

私たちの何人かはそうです。
ユーザーフレアフラグ/シンボルの背後にある意味は何ですか?

こちらをご覧ください
私は自分の仕事が嫌いです、どうすればいいですか?

それについて教えてください!いいえ、真剣に、何が起こっているのか、あなたの目標は何かを教えてください。おそらく私たちはいくつかのアイデアを共有することができます。 🙂

  • 仕事の無い生活を満喫するためにはどうすればよいのか?
  • 仕事をしたくない人が、仕事の無い生活を手に入れるためには何をしたらよいのか?
  • 仕事に関する問題の解決策を教えて欲しい

このような情報をみんなで共有することが目的とされています。

「働きたくないでござる」「働いたら負けだと思っている」「労働はクソ」という方もたくさんいますが、”反仕事”に関する情報交換の場として存在しているようですね。

仕事がなければ社会が機能しないことを理解したうえで、搾取的な労働や階層的な社会構造に対して疑問を投げかけ、改善していくというのが、r/antiwork の目的だとわかります。

「怠惰であることの何がいけないのか?」「怠け者が労働しなければならないとき、どうすればいいのか?」こういったことも書かれていました。自分が怠け者であることを受け容れたうえで、労働と向き合っていくというのは良い考え方だと思います。

仕事の重要性は認識しつつも搾取的な労働に対しては即座にNo を突きつけ、必要ならば仕事を辞めていくというのは日本でも普及してほしいです。ブラック労働、サービス残業、低賃金労働・・・こういったものを一掃するのに一役買ってくれるはずです。労働者を奴隷のように利用する悪質な企業が淘汰されれば生産性の高い企業だけが生き残り、賃金上昇しにも貢献してくれます。有給・育休の消化が増えて少子化に歯止めがかかったり、定期的な休みが取れるようになり心を病む人も少なくなるでしょう。

なぜ r / antiwork はメンバーが急増したのか

r / antiwork に参加するメンバーは2021年以降、急増しているそうです。

なぜ急増することになったのかというと、コロナの影響で仕事を失った人が増え、政府による休業補償金のおかげで無理に働く必要がなくなったことが一因とされています。コロナの脅威が低下し経済活動が再開され、企業側は人材が不足しています。しかし労働者は無理に働く必要がないため、募集をかけても人材が集まりません。そのせいで人件費も高騰しており、労働者が強気に出ているのです。

少しでも気に入らないことがあったらすぐに辞め、条件の良いところへ移る。こういったことが起こっているわけです。このへんの事情については、以前にもブログに書きました。

コロナ禍前と比べて労働者側の価値が上昇しているにもかかわらず、以前と同じような扱いを受けたことにキレた労働者たちが「中指立てて辞めてやったぜ」と勢力を拡大し、r / antiwork のメンバー数も増加しています。

失業率・求人率がコロナ以前とは明らかに変化

労働者たちが無理して働かなくなったことを示す、1つのデータも出ています。

リッチモンド連邦準備銀行(アメリカ合衆国の連邦準備銀行の1つ)が発表している「失業率と求人率の相関性を示すグラフ(Beveridge Curve)」を見ると、コロナ以前とコロナ以後に明確な違いが見られます。

Beveridge Curve

コロナ前後での違いを一言で表現するなら、「求人率が上昇しても失業率が高いままになった」ということになります。コロナ以前であれば求人が増えれば失業者の数は減っていましたが、コロナ以後は求人率が高まっても失業率は高いままです。

働く意欲はあっても、給与や待遇などの労働条件に納得することができず、無理して働くよりも失業者でいることを選ぶ人が増えたということです。

アメリカは元々、生活するために奴隷のような条件でも働くような人はいませんでした(これが日本とは明らかに違う点です)。これがコロナ禍を経てさらに強まり、労働者は自分が勤務する会社を以前よりも厳しい目で見る様になりました。

感染症による世界的な危機に瀕し、失業保険や社会保険が以前よりも充実していたことも一因だと考えられますが、労働市場に大きな変化が起きていることは明らかです。

これからもインフレは続く

今回はアンチ・ワーク集団『 r/antiwork 』が躍進していることについてと、アメリカの労働市場で起きている大きな変化について書きました。

労働者が安い賃金では働かないようになると、企業は高い賃金を餌にして労働者を募集するか、設備投資をして人間ではなく機械に働かせるようになります。労働の機械化は手間もお金もかかるため、いまはまだ「賃金を増やして労働者を募集する」状態です。

これにより賃金が上昇した分を商品価格に反映させていくため、物価の上昇が起こります。したがって今後もしばらくはインフレが続きますので、お手元の現金はできるだけ早く株や貴金属、知識などと交換しておくことをおすすめします。

インフレの時代は現金の価値が目減りしていくので、まさに”現金はゴミ”ですね。

インフレ対策になる現金の逃避先候補の関連記事