実業家として名高いホリエモン(堀江貴文)が宇宙事業の小口投資を募集し始めました。「利回りくん」と名付けられた案件ですが、ホリエモンらしくない募集の仕方だったので取り上げてみます。

「利回りくん」とは

「利回りくん」は1口1万円で出資者を募り、宇宙関連の不動産に投資をするというものです。出資者は少額ながらも不動産に投資して共同オーナーになることで、不動産を利用する企業から家賃収入として定期的に分配金を受け取れます。

共同購入する不動産はロケットの組み立て溶接工場とのことで、この工場を利用するインターステラテクノロジズ株式会社(IST社)から家賃を回収するというものです。

利回りくん

大樹町ロケットファンド

所在地:北海道広尾郡大樹町字芽武149-6
物件概要:ロケット溶接組立工場
駐車場:有り
竣工日:2020.12.08
契約期間:2021.12.01〜2041.11.30
募集方式:抽選
募集期間:2021.09.15 10:00〜2021.11.15 23:00
募集金額:295,000,000 円

募集口数:29,500 口
一口出資金額:10,000 円

予定利回り(年利):5.71%
分配時期:6か月に一度
運用期間:6か月から
入居状況:入居予定

あくまでもクラウドファンディングにすぎず、リターンを期待するものではない

詳細ページにも記載されていますが、本件は“応援型”不動産クラウドファンディングとなっています。

ホリエモンは説明動画にて「投資」というワードを使い、銀行の金利に比べれば断然高い利回りが期待できると宣伝していましたが、予定利回りは5.71%とあり株式と大差ありません。

「宇宙事業への投資」という謳い文句で出資を募っていますが、仮に宇宙事業が期待通りに目覚ましい成長を遂げたとしても、出資者は株式投資と同程度の利益しか還元してもらえないものとなります。まあ”応援型”なんですから、利益を期待するようなものではないのでしょう。

この予定利回りであれば株式市場で宇宙関連銘柄を取引した方が、いつでも売却できる(換金性の高さ)という点において利回りくんよりもリスクが低いと考えられます。一応利回りくんも任意のタイミングで売却(解約)ができるようですが、株式市場ほど簡単にできるとは考えにくく、初心者向きの投資案件ではありません。

初心者向きではないし、リスクの説明が曖昧…

利回りくんは投資案件ですので、リスクが存在します。詳細ページには詳しく記載がされていますね。

私は不動産投資に詳しくないのですが、どうやら私と同程度の知識しか持っていない人も出資しているようです。「任意組合」「無限責任」といった文言がありますが、おそらくこれらのリスクについてもしっかり理解しているのでしょう。

YouTubeの動画ではホリエモンは一言もリスクについては説明していなかったのですが、きっと出資している人達は大丈夫なんだと思います。不動産投資に該当するため分配金は「不動産収入」ということになり、税金の申告やら手続きやらが面倒なことになりそうな予感もあります。

そもそもホリエモンは投資に否定的な考えだったのでは?

今回ホリエモンは「投資」というワードを使って広く一般人から出資を募っていましたが、私の知る限り、ホリエモンは投資に否定的な考えだったはずです。

  • 上場株には興味がない。投資するならベンチャーや非上場企業へのエンジェル投資に限る
  • 庶民が数百万円程度を投資しても無意味。お金は自己投資をするか面白いことをするために使い、稼いだお金はさっさと使い切るべし

このような主張を何度もしていました。

そのうえで今回の利回りくんの動画を見ると、なぜあれほどまでに庶民が投資をすることに反対していたホリエモンが、今回に限っては「投資」という言葉を使って広く一般人(庶民)から出資を募るのかが不可解でなりません。

ホリエモンが持っている「面白いこと、楽しそうなことにガンガンお金を使おうぜ!」という価値観を否定するわけではありませんが、”面白いこと、楽しそうなこと”は、人それぞれによって異なります。利回りくんは”ホリエモンにとっては”『面白そうな宇宙事業』になるのでしょうが、宇宙事業を面白そう・楽しそうだと考え、純粋な気持ちで出資したいと思っている人はごく少数しかいないでしょう。利回りくんのクラウドファンディングは順調に資金を集めていますが、果たして出資者のうち本当に宇宙事業に期待している人や、宇宙ビジネスに”夢”を感じて出資している人は何人いるんでしょうね…。

YouTubeのコメント欄を見ても、投資案件として語っている人は散見されますが、ロケットや宇宙に対する夢を語っている人はほぼいないようです。そもそも本当に宇宙に夢やロマンを感じているなら、すでに宇宙産業に従事しているか宇宙関連事業に出資している気がします。ホリエモンのロケット事業はわりと有名だと思いますし、いまさら庶民から小口でお金を集めるというのは謎ですし、ホリエモンが以前から主張していた『投資否定派』としての意見とも矛盾するメッセージを発信している気がして、なんとも残念な気持ちになりました。

出資するのは個人の自由ですが、同じ不動産投資をするならREITがありますし、宇宙事業への投資がしたいなら関連銘柄やETFがいくらでも見つかります。投資初心者が安易に手を出してはいけない案件なのではないのかな…と個人的には感じました。お金の使い道は自由ですが、「よくわからないもの」「仕組みを理解していないもの」への投資をするのはやめた方がいいです。もしも出資するのであればリスク・リターンをよく吟味し、自己責任で行いですね。

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