春日山田皇女と春日娘子〈「日本書紀歌謡」の謎〉 | 邪馬台国と日本書紀の界隈

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邪馬台国・魏志倭人伝の周辺と、まったく新しい紀年復元法による日本書紀研究についてぼちぼちと綴っています。

『日本書紀』の継体天皇7年条に次のような歌が収載されています。

 

隠国(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の川ゆ 流れ来る 竹の い組竹節竹(くみだけよだけ) 本辺(もとへ)をば 琴に作り 末辺(すゑへ)をば 笛に作り 吹き鳴す 御諸(みもろ)が上に 登り立ち 我が見せば つのさはふ 磐余(いわれ)の池の 水下(みなした)ふ 魚も 上に出て歎く やすみしし 我が大君(おおきみ)の 帯(お)ばせる 細紋(ささら)の御帯(みおび)の 結び垂れ 誰やし人も 上に出て歎く
                ※坂本太郎ほか校注『日本書紀(三)』(岩波文庫)より

 

 この歌は、春日山田皇女(かすがのやまだのひめみこ)の歌です。継体天皇の子である勾大兄皇子(まがりのおおえのみこ)(後の安閑天皇)が春日山田皇女を迎え入れた際に、春日山田皇女が詠んだとされる歌です。
 

 では、この歌が詠まれたのはどこでしょうか?
 この歌には、「泊瀬川」「御諸山」「磐余」が登場します。
 「泊瀬川」は、古来「こもりくの泊瀬の川」と歌に詠まれた初瀬川です。「こもりくの」は泊瀬(初瀬)の枕詞です。大和川の上流の川です。
 「御諸山」は「三輪山」のことです。
 そして、「磐余」は初瀬川を下った地域の名称です。

 すると、歌に詠まれているのは奈良盆地南東部、現在の桜井市あたりの光景であることがわかります。

 



 ところが、「勾大兄皇子(後の安閑天皇)は歌の舞台に存在できない!」のです。

 なぜなら、継体天皇は治世20年目に磐余玉穂宮に遷宮されて初めて大和に入ったとされているからです。それまでの19年間は、大和に入ることができずに奈良盆地北縁部の淀川沿いの宮を転々とされています。そのような状況で皇子だけが大和に住んで妃を迎えるなどということはきわめて考えにくいのです。


 では、『日本書紀』編纂者たちはそのような経緯を記している一方で、なぜ冒頭のような歌をここに挿入したのでしょうか?
 それが、継体天皇朝と仁賢・武烈天皇朝の並立説(並立期間は507年から525年の19年間)を想定すると答えが見えてきます。

 

■二王朝並立の復元紀年

 

 継体天皇と仁賢天皇の子どもが立太子する年が同じなのです。
 継体天皇の子の勾大兄皇子(後の安閑天皇)は継体天皇治世7年(513年)に皇太子となっていますし、仁賢天皇の子の小泊瀬稚鷦鷯尊(後の武烈天皇)は仁賢天皇治世7年(513年)に皇太子となっています。
 さらに不思議なことに、安閑天皇の皇后は先に見た「春日」山田皇女であり、武烈天皇の皇后は「春日」娘子(かすがのいらつめ)なのです。

 

 一気に結論に進みますが、春日山田皇女と春日娘子は本来同一人物だったのではなないかと推測できるのです。
 そして、立太子の年にこの女性(ここでは仮に〈春日皇女〉とする)を妃としたのは安閑天皇ではなく武烈天皇だったと考えられるのです。
 

 つまり、いったん継体天皇の紀年と仁賢天皇の紀年が並列に並べられたとき、仁賢天皇7年(513年)にあった武烈天皇の立太子記事と春日皇女を迎え入れたという記事が、直列の紀年に修正される際に継体天皇7年へ、立太子記事は流用され、春日皇女記事は移動させられた可能性を想定できるのです。


 武烈天皇に注目すると、諱は小「泊瀬」稚鷦鷯尊(おはつせのわかさざきのみこと)ですし、宮は「泊瀬」列城宮(はつせのなみきのみや)です。まさに「泊瀬」の天皇なのです。
 だから、冒頭の〈春日皇女〉が「こもりくの泊瀬の川」と詠んだ歌は、安閑天皇に向けて詠んだものではなく、武烈天皇に向けて詠まれたものだったと考えられるのです。


 では、安閑天皇の本当の皇后は?

 

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