「うわっ」
近い!
思いの外、清子の顏が目の前にあったので…
宗太郎はドギマギして、あわてて身体を起こす。
いきなり動いたので、軽く目まいがしたのだけれど…
これでようやく、清子との間に少し距離が出来た。
「ふーん」
相変わらずオジサンは、ニヤニヤしている。
「よかったな、色男!」
からかうように、声をかけてくる。
「ちょっと、よせよ!」
神林くんが尖った声を出すので
「わかったよ」
オジサンはふぃっと、目をそらした。
「お前たち…私が犯人だ、と勘違いしてはいないか?」
いきなりオジサンが、自分から核心をつく。
「えっ、違うのか?」
神林くんの強い口調が響く。
オジサンはムッとした顔で、神林くんの方を向く。
「お前まで、何を言っているんだ?
知っているくせに…」
だがオジサンは、あくまでも強気の態度だ。
そこまで言い切るなんて…
よっぽど自信があるのか、本当に何もしていないか、どっちかだ…
認めたくはないけれど、あらためて宗太郎はそう思う。
「ね、本当に、何もしてないんだよね?」
探るように、宗太郎はオジサンに向かって言う。
オジサンはチラッと裕太を見ると
「そんなの、するわけがないだろ?
何でそんな…リスキーなことを、しないといけないんだ」
キッパリと言い切る。
「自分にとって、ソンになることは、しない主義なんだ」
そこまで言い切られたら、これ以上、何も言うことは出来ない。
「そうなの?」
「そうだよ!」
これでおしまい、というばかりに、オジサンはパンと手を打ち鳴らした。