(一体、どういうカラクリだ?)
自分は、夢を見ているのではなかろうか…
裕太はそう疑う。
さっきまで、確かにクスノキの前にいたはずだ。
もしかして…頭をどこかでぶつけて、意識を失っているのではなかろうか…
とさえ思う。
オジサンの姿は、まったく見えない。
本当に…どこかに消えてしまったのか?
それとも自分が、どこかに弾き飛ばされてしまったのか?
(まさか…中に入ると見せかけて、どこかに行ったとか?)
色んな仮説が、頭の中でぐるぐる回る。
だが…裕太とジュンペイが見ている目の前で、そんなイリュージョンめいたこと、
出来るのだろうか?
「タイムトラベル?」
(いやいや、まさか!)
「テレポーテーション?」
(それは、あり得ない)
「ならば…一体、何なんだ?」
どこかで、見落としたことはないのか?
きっと、トリックがあったはずだ。
そう思い、裕太は暗闇で目をこらす。
だが…まったく視界がさえぎられ、自分の手のひらさえ見えない。
さっきまでいた神社の境内など、まったく見えないのだ。
「これぞ、一寸先は闇だな」
思わず苦笑する。
(どこかの穴にでも、落っこちたのか?)
そんな落とし穴など、まったく見えなかったけれど。
もしも、崖の下に落っこちたとしたら…
きっと、無傷ではすまないだろうな、と裕太は他人事のように
ボンヤリと考える。
「それにしても、オジサンはどこだ?」
とにかく、ここから脱出しないといけない。
一寸先さえ見えない、真っ暗闇の中…裕太は思い切って、手を
大きく伸ばしてみた。