最近ギャンブル(馬券)から遠ざかっている自分はこれには行こうと、楽しみにしていた。
午前中は精神科医の基調講演などあったが、車で行ったら会場の駐車場が満車だったので一旦帰宅し自転車で出直して午後から参加ことにした。
午後は、トップページ|特定非営利活動法人いちごの会 アルコール依存・薬物依存・ギャンブル依存症回復 (ichigonokai.jp)このNPO法人いちごの会(大阪市)さんから来られたお二人による第10回記念講演「リカバリー(回復)に大切なこと」から始まった。ここでは、そのうち統括施設長さんの話を取り上げる。
まず驚いたのはその歴史。1999年から始まるという。もう20年以上活動してらっしゃる。当事者は初期治療だけではなかなか回復が難しい、だからデイケアを、となり、そこから更に社会参加に向けての就労支援に行き着いて、小規模作業所となったらしい。さらに驚いたのは就労支援先の多様さ。紹介されていたものの一部を上げると、
ヘルパーズハウス運営
グループホーム運営
自転車利用適正化事業(放置自転車の処理の仕事だと思われる)
住宅の清掃
製作所
カフェ
芝刈り・庭の剪定
錦温泉(銭湯)の清掃
墓地の清掃
介護全般
畑仕事
と次々と画像・映像を出して説明していらっしゃったが、こんなに広範囲に仕事を見つけて依存症(依存症だった)利用者さんを就労にもつないでいくことができるのだとただひたすら驚きながら興味深く見ていた。
そして最後のほうで、依存症と依存症からの回復のモデルを提示されていた。
知る→実感→やったら(賭けたら・飲んだら・打ったら)どうなるか→やらないための実践→仲間との交流→傾聴・自分語り→回復
いやぁまさにそうだなと思いながら聞いていた。
この最初の「知る」は誰でも取り掛かりやすい、馬券を買いながらでも、パチンコパチスロをやりながらでも、本を読めばいい訳だ。私だって、2019年の最初に自分が依存症ではないかと疑ったとき、ギャンブル依存症関連、依存症の認知行動療法の専門書?など、本を数冊買って読んだ。でもそれで終わってしまった。「実感」に至るまでが相当長い。そして「実感」に至るか、本当に切羽詰まって、自分はもう狂気そのものなんじゃないか、自分は頭が狂ってるんじゃないか、自分はその意味でやっぱり病気なんじゃないか、と思って初めて、底つき(とおもわれるもの)が来る。そしてやっと、「やったらどうなるか」→「やらないための実践」に移っていける。外に助けを求めてセンターにもつながり、そしてGA(AA、NAなどなど)などの自助グループ、病院にやっとつながれる。そして参加する前は意味あるのかと思っていた自助グループ、ミーティング(現在はネットでのミーティングもある)に参加して、目から鱗が落ちる体験を何度もして、回復の過程に入っていくのだ。
依存症は孤独の病だ、とも言われる。当然そうなれば、理屈ではその孤独を癒すのは、「仲間」だということになる。それは親密な人でなくてもいい、GA、AAのような、言いっぱなし聞きっぱなしのミーティングでも不思議と大きな効果があるのだ。だが、やってみなければ分からない。参加してみて初めて分かる。
そんな思いを交差させながら、NPO法人いちごの会の方の説明を聞いていた。
「やめ続けてこそ 見えてくるものがある」
喜び・充実
これは本当に実感としてあるし、単にそれは、空が青いとか、動物や植物を生き生きとして見ることができるとか、そういうものだけではなく、仕事においても工夫しようと考えが向くし、少しは将来に希望を持てるようになる。不思議なものだ。それが、リカバリーの一過程なのかもしれないが、リカバリーの一過程にとどまらない、いわばコペルニクス的転回が起きて、依存症になる以前の自分とも違う自分になれるというような。それを突き詰めていけば、全てを受け入れられるのだろう、そう思えるようになった。
最後に、アメリカの「回復の権利章典」というのを紹介していた。初耳だった。
「全ての人は回復する権利を有している」
リカバリパレードというのもあるらしく~~ ひえぇ~~先進国最先端の国アメリカ~~~と思ってしまった。回復の権利章典ってまた大仰な名前を付けたなぁ西洋っぽいなぁと思いながら、これからちょっとググってみます、はい。こんなのあったんだなぁ。勇気づけられる考え方だ。
この後も、様々な自助グループの模擬ミーティング、体験談、紹介があって、そのあと講演者の皆さんが登壇しての1時間弱のトークセッションもあり、午後だけでも相当濃いフォーラムだった。午後から参加でも、重厚、かつ終わった後に少し気が晴れる、そんなフォーラム、いや、情報量も感情の量も十二分に溢れ出ているようなフォーラムでした。有難うございました。