今回ご紹介するのはコメディ「屋根裏部屋のマリアたち」(2010年)。とても面白かったですね。
"women on the sixth floor" Photo by mandyseyfang
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舞台は1960年代のパリ。
ジャン(ファブリス・ルキーニ)は証券会社を経営する中年男。
妻シュザンヌ(サンドリーヌ・キベルラン)とアパルトマンで暮らしています。
ある日、シュザンヌと感情的にぶつかったベテランメイドが辞職してしまいます。
「スペイン人は勤勉」と聞いたシュザンヌは、アパルトマンの6階(屋根裏部屋の女中部屋)に住み始めたスペイン人のマリア(ナタリア・ベルべケ)を雇います。
マリアはパリに来たばかりですが、聡明で勤勉なのでジャンも気に入るんですね。
ある日、屋根裏部屋の共同トイレが故障したため、ジャンは修理工を手配します。
これを機にジャンとスペイン人女性達との交流が始まるんですね。
6階のスペイン人女性たちは、貧乏だけど踊って歌い、笑顔を大切にしている。
その姿に心打たれるジャン。
ある日、ジャンが顧客で魔性の未亡人(絵に描いたような魔性系で大爆笑)と浮気していると思い込んだシュザンヌは、ジャンを追い出してしまいます。
致し方なくジャンは6階の屋根裏部屋の1室に住むことに。
でもジャンはこの部屋で人生初の自由を得るんです。
ジャンはスペイン人メイド達との暮らしの中で、人生を謳歌する喜びを知るんですね。
そしてジャンはマリアに惹かれてゆきます。
マリアもジャンのことが気になるように。
人生を謳歌しだしたジャンの姿を見て、シュザンヌも自分自身の人生のあり方を見つめ直し始めるんですね。
ジャン、シュザンヌ、マリアはどんな人生の選択をするのか?…というお話です。
当時のスペインは軍事独裁政権が支配する暗黒時代で、内戦で悲惨な体験をした多くのスペイン人たちが国外に脱出していたんですね。
移民の彼女達がありつける仕事は、キツくて薄給のメイドくらいしかない。
でも彼女たちは仲間を思い遣り、離れ離れになっている母国の家族を一番気遣っている。
この映画のスペイン人のメイド達は、悲壮感は心の奥底にしまって、皆で支え合いながら本当に人生を楽しもうとしているんです。
「屋根裏部屋のマリアたち」は、中年期の危機が背景にある恋物語ですね。
ルイとシュザンヌはふと「今までの自分の人生は空虚だった」と気づくんです。
シュザンヌは「ルイが魔性に誘惑されないか?」と心配するけど、ルイは「マリアが誰か他の男に誘われないか?」と不安になっている。
悲劇的なすれ違いも笑えるんです。
いい年しても色恋となると滑稽な姿をさらしてしまう男女の姿が微笑ましくもあるんです。
そして中年の危機をいかに解決するのか?
皆が悩み、生き方を見直して、時に思い切るんですね。
そうい時期って誰しもあると思います。
確かに中年の危機は身近なテーマでシビアですよ。
でも「屋根裏部屋のマリアたち」はコメディータッチで描かれていて、ポジティブな雰囲気なんです。
コメディの良さだと思うんですよね。
(※今回は2014年8月25日の過去記事をリライトしました)