ショーン・ベイカー監督の「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2017年)をご紹介します。
Untitled Photo by Craig Duffy
source:
ショーン・ベイカーは「ANORA アノーラ」でカンヌとアカデミー賞を制覇した監督ですね。
「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」の主人公は6歳の少女ムーニー。
物語はリーマンショックの影響を受け続ける貧困層の暮らしをムーニーの眼差しを通して描きます。
そしてムーニーの母親でシングルマザーのヘイリーです。
安モーテルにヘイリー母娘を含めた貧困層が住んでおり、すぐ近くにはフロリダのディズニーワールド。
アメリカの闇と虚像。
このコントラストがエグい。
安モーテルは薄紫色、フロリダの青空は美しい。
なので一見ファンタジーっぽくなってまだ観やすくなってはいますが…。
ディズニーワールドの周辺に空き家が多いのも、騙された人達によるサブプライム住宅ローンの投資で大量に生じてしまった空き家ですね。
ヘイリーはかなり荒んでいます。
詐欺まがいの商売と慈善事業とママ友のダイナーからパンを横流ししてもらって食いつないでいます。
ヘイリーは最終的にはディズニーランド目当ての観光客を客にとるようになってしまう。
ムーニーは幼くて、まだよく分かってないけど、悪戯の度を超したやはり嘘や欺すことが当たり前に身についている。
そんな母娘に手を焼きながらも、根気よく支えるのがウィレム・デフォー演じるモーテルの支配人ボビー。
ボビーがいい人なんです。でも普通はやってられないでしょう。
ショーン・ベイカー監督の視線はきっとボビーの眼差しなんですね。
ムーニーとお友達が空想遊びをして日々を過ごしています。
こういう子どもの世界は時代や国関係ないんだな、と。
このように空想、夢を見るのに本来金は要らない。
でも、ここではその自由が危うい。
夢を体現するディズニーワールドは、すぐ目の前にあるのに、貧しい彼女たちは入ることは出来ない。
ラストシーンは素晴らしい!(というか、これしかない、というラスト)。
もし、経済的にある程度でも心配なければこの親子はどうだったろう?
しかし、彼女たちは貧困というリアルからは逃れられない。
貧困は暴力、犯罪、無教育等々、ありとあらゆる問題を生み続けます。
養育環境は劣悪、危険だらけ。
舞台が現代のアメリカだから、描くのも現実否認は出来ないんですね。
夢を見ることさえ大金がかかる、というリアル。
この映画を観て、日本のシビアな現状を考えざるを得ませんでした。
観光地化した日本で夢を観ることが出来ているのは誰なんだろう?
日本は今犯罪が増え、汚れている。
国民はどんどん搾り取られている。
さらに貧しくなった日本の家庭にとって夢の国で遊ぶことは文字通り夢のまた夢となりつつあるんじゃないのか?と。
このまま日本が無策のまま転げ落ちた先はこの映画の世界でしょうか。
「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」はかなりキツいリアルを突きつけてくるものがありました。