(ボクの本当に大切なものって…なんだ?)
さっきからずっと、裕太は考えている。
友だち?
新しい自転車?
野球帽?
それとも、じいちゃんに渡された地図か?
どれも、裕太にとっては大切にしているものだけれど…
一番大切なのか、と問われたら、違うような気もする。
『そんなに深く、考えなくてもいい。
直感で、パッと思いつくものは、なんだ?』
なぜか龍神は、さらに聞いてくる。
「わかんないや」
結局あれこれと、思い浮かべたけれど…一番か、と聞かれると、たぶん
違うような気がするのだ。
あっさりと、それを認めて、裕太は潔く頭を振る。
「そんなに簡単には、答えられないよ。
だって…ジュンペイも、じいちゃんも、母さんも、颯太も…
みんなボクにとっては、大切なんだもん」
キッパリと、裕太は答える。
龍神は、裕太の目を、じぃっと見つめると
『それが答えなのか?』
重々しい声で、そう尋ねる。
「うん…」
うなづきかけて、(ちょっと待てよ)
裕太はふいに、戸惑う。
(本当にこれでいいのか?
これでもしも、竜神が納得しなかったら、ジュンペイは
このまま、もとに戻れないかもしれないぞ)
何の根拠もなく、そう思うと…意味もなくモジモジとし始める。
『自分のことだろ?簡単なことだ。
キミが今、一番大切にしているものだ』
もう一度、竜神は裕太に答えを求めた。