お運びをいただきまして、厚く御礼申し上げます。
今日は、端正な落語で心をつかむ正統派、柳家さん喬師匠をご紹介します。

落語ライターとしての執筆依頼も増えてきましたので、今回は落語評論家テイストでお送りします。


本寸法の古典落語に定評のある柳家さん喬。
その丁寧な語り口は心地よく、登場人物の感情の機微がすっと伝わってくる。
日本舞踊藤間流の名取でもあるさん喬の落語は実に上品だ。
女性の描写が秀逸で、『文七元結』や『たちきり』といった人情噺はとくに人気が高い。

しかし五代目柳家小さんの芸を受け継ぐさん喬は、滑稽噺も絶品。
寄席ではよく『棒鱈』『そば清』などの噺で客席を沸かせている。
本人も「滑稽噺のほうがやっていて楽しい」と述べており、人情噺が多くなるのはファンのニーズを考えてのことだ。
そのほか、演じる人がいなくなった演目の掘り起こしや新作落語にも果敢に取り組んでおり、その幅の広さには驚かされる。

弟子は喬太郎を筆頭に11人。
弟子たち一人ひとりの個性に合わせ、丁寧に育ててきた。
直接師匠から落語を教わることが少ないといわれる落語界の中で、さん喬は頼まれれば喜んで教える方針。
芸の継承にも余念がない。

2017年には紫綬褒章を受章。
芸歴も50周年を迎えたが、さん喬はおごることなく日々高座に上がり続ける。
軽い噺から大ネタまで聴き手を魅了する正統派の芸は、落語通はもちろん、初心者でも十分に楽しめる。


というわけで、さん喬師匠のご紹介でした。
ぜひ寄席で師匠の珠玉の芸をお楽しみください。

さん喬師匠についてもっと詳しく知りたい方は、以下がおすすめです。