実家の街、2日目…あの大ヒットアニメ映画を鑑賞。ちょっとここが気になったけれども、とても良い作品だったのだ…

トップの写真は、息子の通う大学のキャンパス内で撮った紅葉である。国立大学に関していつも羨ましく感じるのは、広大な国有地を贅沢に利用した開放感だ。僕の通った都内の私大など、広いとはいえない敷地内でいつも何処かで工事をしていたものだ…。

僕の実家の市の中心部からやや外れた長閑な地区に立つこの大学は、終戦まで陸軍の操練場だったという記録が残っている。当然ながら射撃の訓練なども行われていたので、広いことこの上ない。隣には大学医学部付属病院まである。これもまた大きい。
ここは広大なだけではなく、所々には並木が設けられ、四季折々の樹木の様子もまた楽しむことが出来るのだ。上の紅葉はそのひとつ。あと、アケビの木もあった。実がなってパックリと口を開けている。そんな写真も撮った。

大学の近隣には、前回もご紹介した音楽ホール等もある。小澤征爾氏のフェスティバルが開催されるなど、クラシック音楽の演奏にも利用されている。その付近にはイチョウの木々を見ることが出来た。たわわに銀杏の実がなっていたのである。
その樹木の下では、ご老人たちがゲートボールを楽しんでいた。時折、イチョウの落ち葉をかき分けては、銀杏を見つけ出してビニール袋に集めている。あとで茶碗蒸しに入れて食すのだろうか、と僕は想像した。茶碗蒸しの銀杏は息子の好物なのだw

さて、夕刻に実家へ赴くと、我々は早速、自分たちの靴を玄関の隅の方へ隠した。今回は息子へのサプライズ来訪なので、その瞬間まで悟られるわけにはいかないのである。ちなみに、僕の車はいつも家の裏側に停めているので、直ぐには見つからない筈だ。
そこから待つこと小一時間、息子の自転車の音が聞こえてきた。その刹那、娘がスマートフォンを手に取る。息子に架けるためだ。母とかみさんは、台所で料理中である。晩ご飯はさぞかしご馳走なのだろう。

「あ、お兄ちゃん?お誕生日おめでとうー。いまどこ?」などと、娘は如何にも実家から遠く離れた自分のうちにいるようなことを装うw これは演技力が要求されるな。僕には出来ないかもw
二言三言、話してから「じゃあね!」と電話を切る。息子は家に入って来た。そしてリビングへ…。「じゃーん。私たちは、ここにいたんでした!」というわけなのであった。

息子は「おおっ!」と驚くも、「何となく分かった」とも。どうして?と訊くと、この家の外や中で、えも言われぬ美味しそうな香りが漂っていたからだ、という。それで、「誰かお客さんが来ているのかな?」と察したのだとも。流石!我が息子。聡い!!
でもまあ、一応サプライズは成功なのである…ということにしておこうw それから料理に舌鼓を打ち、バースデーケーキを賞味したのでした。初めて買ったケーキ屋さんだったのだけれども、大変に美味しゅうございました。


さて、翌日は生憎の雨であった。高速道路の渋滞を避けるため、夜近くに帰ることにしようと決めていた。よって、それまでは自由時間なのである。この日は祝日だったので、息子は大学が休みなのだけれども、自室でレポートなどの課題に取り組んでいる。
我々はどうしようか?となった。そこで、かみさんと娘と僕とで映画でも観に行こうということになった。時あたかも、新海誠監督の新作が公開中である。映画館をほぼ占拠する勢いの大ヒット作品だ。ちなみに、新海監督は実家のある地域の直ぐ東方のご出身である。

娘はおじいちゃんから貰ったお小遣いで冬物のコートを買いたいそうなので、シネコンつきのショッピングモールへ行くこととなった。車を駆って出掛けると、映画館寄りの駐車場は既に満車。なるほど、と思った。僕は別の立体駐車場に停めた。
お昼過ぎの上映回のチケットを買い、それまでの時間はショッピング。僕は書店へ行き、かみさんと娘は洋服屋さんへと赴いた。書店では英語学習の棚で英検関連の書籍をチェック。やはり1級の学習書は品揃えが少ない。でも最低限のものは置いてあるという印象だ。

それから、半額に値下げされた新品バーゲン本のコーナーを物色。15年くらい前に出版された書籍が多いようだった。やや旧くなった在庫品を出版社や取次が放出したのだろうか。僕は、その中から3冊を選んで購入。良い買い物でした。
娘は幾つかの候補から迷いに迷って、真っ白のハーフコートを買ったようである。1万円をゆうに超えるお値段だったそうだけれども、今回のような臨時収入のときでなければなかなか買おうとは思わなかったのかも知れない。これもまた良い買い物だったのでは。

さてさて、新海誠監督の「すずめの戸締まり」である。このシアタースクリーンでは、座席の多くがソーシャルディスタンスでひとつおきの割り当てであった上に、我々は壁寄りの席を選んだので実にゆったりと鑑賞することが出来た。
物語は、率直に言って、近年の新海作品の総決算であるという印象を受けた。少なくとも、今作を含めた3作品の中では出色の出来なのだ。実に、監督のこれまでにないパッションが溢れていたように思う。「結局これが作りたかったのだな」という感じである。

僕は個人的に、中盤の都内のシーンで衝撃を最も大きく受けた。やはり、このストーリーの中では最も見知った場所なので、我が事のように受け止めることが出来たのである。かたや、東京から遠く離れた我が実家の地域の方たちはどう観ていたのだろう?とも思ったのだった。
そんな訳で、今作は特にお勧めしたい作品であるのだけれども、ひとつだけ気になった点があった。所謂「美術」の部分の作風の変化である。アニメの用語で「美術」とは背景部分の絵のことを指す。これが新海誠監督の過去の作品のそれとは大きく異なっているのだ。

一例として、以下をご覧いただきたいと思う。下は「すずめの戸締まり」の一部画像である。注目して欲しいのは、星空に天の川銀河が描かれているところ。新海監督の作品では毎回のように登場する、謂わば常連出演者だ。きっと天体が余程お好きなのだろうと思う。

一方で、下は今から遡ること15年前の作品より一部分。「秒速5センチメートル」の第2章ラストシーンの夜空だ。やはり、天の川銀河が描かれている。まるで、長時間露光の天体写真のような、実に印象的な深みのある美しさである。感嘆のため息が出そうな程に…。

僕は、この種の美しさこそが新海美術の真骨頂のひとつであると考えている。こう言っては何だけれども、「すずめの戸締まり」で描かれている平面的な天の川銀河に嘗てのような美や深みを感じることが出来なかったのだ。(でも好きなんです、新海誠監督作品…)
何故このような変化が起きているのかと言えば、恐らくメインとなる客層の需要に合わせるためであろうと考えられる。言うまでもなく、今は中高生が主なターゲットであろう。彼ら彼女らが観たいのは、きっと「美術」よりも寧ろ「動画」の方なのだ。

アニメの世界で「動画」とは、絵の中で動きのある部分のこと。例えば、キャラクターとかメカなどなどである。若い子たちはジッと止まっている背景画の美しさを鑑賞するよりも、やはりどうしても、その手前で縦横無尽に動き回るキャラクターに注目するのだと思う。
製作側も当然ながら、そのことを把握しているので、限られた期間と予算の中で結局は動画の方に多くのリソースを割くことになるだろう。これは決して良し悪しではなく、売れるものを確実に作って提供するための知恵のようなものである。監督のご苦労が偲ばれる…。

僕は今回、「すずめの戸締まり」を鑑賞して、この作品の隅々を心から楽しみ、目に涙を溜め、笑いながらも、上のような点が気になって書いたというわけなのだ。どうか新海誠監督作品の「美術」の美しさに今も心奪われる者がいることを憶えて頂きたく、と思いながら…。

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