横隔膜と内臓の関係
今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。
寅丸塾の管理人です。
結局この夏も、コロナに振り回されてばかりでしたね…
仕事に支障をきたしながらもやる気の波が通り過ぎない内に頑張って記事を書きます。
前回の記事では、体幹の1番上にあたる胸郭出口について述べてきましたが、
今日はもう少し下の空間について切り込んでみます。
横隔膜とは
セミナーでもブログでも繰り返し言及している「横隔膜」ですが、改めて振り返っておきます。
横隔膜とは体幹の真ん中で上(胸)と下(腹)を隔てるドーム状の筋肉です。
呼吸における最重要な筋肉で、
息を吸うときに収縮し、ドームの頂点が下がります。
そして、胸郭が広がり胸腔内は陰圧となるため肺が膨らみます。
逆に、
息を吐くときには横隔膜は緩みます。
肺が元に戻ろうとする力と広がった胸郭が閉じる動きが起きて、肺から空気が押し出されます。
要するに、横隔膜は
・息を吸う動作で下がる
・息を吐く動作で上がる
ことで、肺を肺を膨張-収縮させて換気をしています。
また、
この筋肉は骨格筋の中でも随意的にも不随意的にも制御されています。
我々は意識的に呼吸を早くしたり遅くしたり少しの間なら止めることもできます。
しかし、
寝ているときや意識していないときでも呼吸は自律的に行われており、生きている限り止まることがありません。
つまり、
横隔膜は手足の骨格筋と同様に随意的に動きを調整できる一方で、自律神経によって支配され休むことなく一日に2万回以上も上下運動をしているわけです。
横隔膜の上にあるもの
我々セラピストにとっては今更感満載な話をしましたが、ここからは横隔膜の周りには何があるのか?
という話です。
当たり前のことですが、体幹には臓器が詰まっています。
これはあくまでも模式図ですが、
体幹の上端(肺)から下端(膀胱/生殖器)まで、隙間なく詰まっているのが分かると思います。
ちなみに、横隔膜の位置はここです。
我々セラピストは伝統的に、
体幹については骨格筋のみをイメージすることが多い傾向にあります。
が、実際には骨格筋を中心に、その他の組織の位置関係を把握する重要性が近年注目されてきました。
先ほど横隔膜が上下に動いているといいましたが、
文字通り横隔膜の上に「乗っている」組織があります。
それが心臓です。
心臓は、
それこそ休むことなく血液を全身に送り続けている循環系の最重要器官ですが、
心膜という膜によって包まれています。
この心膜は、
ざっくり言うと心臓が体の中でズレることなく位置を保つために脊柱や肋骨からぶら下がって保護している膜ですが、
心臓の隣接組織ともくっついて、より強固な安定を保っています。
ただし、
過度に安定しすぎると動き自体を妨げてしまうため、ある程度の遊びが不可欠です。
つまり、
横隔膜と心臓は心膜によって物理的に連結しており、心臓の動きは
・心筋による自律的な運動
・横隔膜に連動した上下移動
という2つの運動パターンを持っていると言えます。
したがって、
血液循環の要である心臓のパフォーマンスは、
心疾患による心筋自体のトラブルによって低下することはもちろんですが、横隔膜の動きが悪くなる(=呼吸が下手になる)ことでも少なからず影響を受けるのではないかと私は考えています。
横隔膜の下にあるもの
では、横隔膜の下には何があるのか?
見ての通り、肝臓や胃が横隔膜の下に接しています。
特に、
肝臓は人体で最大の臓器であり、その位置と大きさから横隔膜のドームは右側が突き上げられたような構造になっています。
この肝臓について、細かく機能とか役割とか言い出したらキリがないんですが…
パッと見、
なんか「漬物石っぽい」と感じませんか?
というのも、
肝臓のすぐ下には胃腸があり、栄養を吸収しながら蠕動運動によって食物を運搬していく消化管としての役割があります。
そのとき、
横隔膜が収縮すると天井が下がっていき、肝臓という漬物石が上からプレスしてくるわけです。
そして横隔膜が弛緩すると天井が上がり腸へのプレスが開放され、これがポンプのような役目を果たし、内から腹圧を調整して消化管の働きを助ける
という働きをします。
故に、
呼吸の浅いクライアントの問題を考慮するときには、そもそも動力が不足しているため内臓自体の動きも少なく、消化管系のパフォーマンス不足にもなりかねないことを考慮してみると、問題を診る視野が広がってきそうですね。
おなかが硬い問題
横隔膜と内臓にはかなり関係が深いことが何となく伝わった思いますが、
内臓なんてものは通常、直接目に触れるものでないのでイメージしにくいのが実際のところです。
最近診ていて気になったことの一つに、
「自分のおなかに指を沈めていけない子」
がまぁまぁ多いということ。
本来、
鳩尾から下腹部までの空間は、子供であれば腹筋も強固でないためリラックスした状態ではかなり柔軟性があります。
が、
子供に自分で鳩尾やへその周辺をゆっくり指で押してもらうと、
すぐに痛がったり気持ち悪さを訴えたりする子がいました。
これが何を示すかというと、
・腹筋(腹直筋)を固めすぎている
・内臓同士が安定しすぎてズレてくれない
・そもそも横隔膜が使えてない
・神経系(迷走神経・交感神経節・横隔神経…)への物理的なストレス
などが考えられます。
多くの患者がそうであるように、
筋肉の使い方が下手で「固める」という手段に頼ると、呼吸は浅く早いパターンになります。
そのとき、横隔膜の運動は抑制しており内臓に対するポンプの役割も不十分になります。
内臓も平滑筋という筋肉ですから、本来は身体の動きに合わせて微妙に形を変えたりズレてくれます。
しかし深部での微調整ができないことでエネルギー効率が悪くなり、
・腰や足が重い
・動きにキレがない
・姿勢が悪い
・すぐ疲れる
など、パフォーマンスの低さにつながっていく子供が意外と多いなと感じました。
・・・長くなってきたので次回に続きます。
まとめ
横隔膜と内臓の関係についてフワっと紹介してきましたが、
「そんなん療法士の守備範囲じゃねーわ」
「論文が掲載されてない=エビデンス(根拠)はない」
という人もいます。
が、
人間の構造において筋骨格は全体の一部でしかないということも事実です。
少なくとも私が見てきた「結果を出せるセラピスト」は、目の前の患者の問題と向き合える人です。
臨床家にとってはそれが最優先事項。
今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。