埼玉県川越市にあるコンディショニングジムBlueFit(ブルーフィット)の代表で、
理学療法士の粟生田です。
本日は2016年に脳梗塞を発症し、左片麻痺などの症状を呈した
サッカー元日本代表のラモス瑠偉さんの
リハビリで一番良かったメニューについて書かせて頂きます。
29日放送にテレビ朝日「徹子の部屋」で放送された内容になります。
脳梗塞を発症され入院していた時には体の左側が動かず、
車いす生活を送っていたそうです。
リハビリセンターに転院後も過酷なリハビリが続き、
自主的なリハビリもかなり行っていたそうです。
そんな中本人様曰く、
「結構つらかったけど、一番良かったのはサッカーボールでのリフティングをやったこと。
『右(足)がやってるよ、あなた(左足)もやりなさい』って」
少しづつできるようになってきて、
「これ大変だったですよ。20回ですよ。毎日少しずつやって。めちゃくちゃ嬉しかったですよ。
やらないとダメです。意識も大事ですね。目的とか」とのこと。
専門的に考えると難易度も高く、
転倒によるケガや
代償動作(麻痺をかばった体の動かし方)による悪いクセがついてしまうリスクもあります。
しかし、自分が昔行っていたスポーツ(運動の記憶)、
好きなサッカー、そして少しづつやれるようになる嬉しさ(情動)、
左右両足を用いる運動(身体の左右間の協調性)、
麻痺側の足を積極的に動かす運動(麻痺側下肢の随意性を引き出す活動及び脳の賦活)、
麻痺側下肢の支持性及び立位バランス能力の向上
(麻痺側下肢及び体幹を主とした抗重力筋活動の賦活)、
ボールを蹴る、コントロールする際の足からの感覚(触覚や圧感覚などの感覚情報の入力と巧緻性)、
などなど、様々な機能に働きかけるプログラムだと思います。
もちろん他にも視覚やリズムなど様々な要素が関係しているかと思いますが、
このお話を聞いて感じたのは、
何より重要なのはモチベーション、情動かと思います。
昔からリハビリテーションを提供する際にはモチベーションが大切、
「リハビリ自体や将来の目標(~できるようになりたい)に対するモチベーション」などはもちろん、
「個別のリハビリプログラム単体を行う際のモチベーション」も
対象者様のやる気を引き出せるものの方が
効果が得られやすいと経験的に思われていたように感じます。
今では脳の研究が進み、リハビリを行っている際の脳血流や
脳の賦活している部位もわかるようになりました。
脳のより詳細な働きや関連性も研究が進んでいます。
情動をつかさどる脳の神経回路は“大脳辺縁系”といわれ、
その中には、”側坐核”といったモチベーションと関係する脳の部位があります。
リハビリテーション時のこの側坐核の活動と
大脳辺縁系と運動機能を司る脳の部位(大脳皮質運動野)の活動に強い関連があることが分かっているそうです。
また他にも、情動と関連している前頭葉の眼窩前頭皮質の活動と
運動機能の回復にも関連性があることが分かってきているそうです。
そもそも脳の感情を含んだメカニズムに関しても
以前のような「脳のある部位にどんな働きがあるかという局在論」ではなく、
もっと広範な関連性、「脳神経のネットワークとして理解すべき」との見方に変わってきていると思います。
より新しいリハビリテーションの知見を知ることで、
昔から経験的には感じられていたことも
根拠(エビデンス)をもって提供されるようになってきました。
話は少し戻りますが、昔から知られているジェームス・ランゲ説では
「人は悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」と述べられていました。
(身体⇒情動を喚起)
「苦しい時、悲しい時こそ笑顔を作るといい」といったことにもつながっているかと思います。
(この辺の詳細は省略します)
しかし、好きなことを行っていると体が動き出し(情動・精神⇒身体)、
好きなことで体を動かしていると気持ちもいい状態になっていく(身体⇒情動・精神)。
心と体の二元論ではなく、心と体はつながっている。
そんなことを改めて感じたお話でした。
リハビリに実際に取り込んでいる方やリハビリや運動指導を提供する方はもちろん、
教育や技術指導を提供する教師やインストラクターなどや、
子供を育てている親御さんなどにも少し関係する視点かと思いました。
もしご興味ある方は参考にして下さい(他にも支えてくれた方の話もあるそうです)。
リンク