【対談】研究者のライフプラン:出産と育児 〜 子供を授かるのはいつがいい? 博士課程 vs. ポスドク~

今回は【研究者の出産・育児 対談シリーズ】 第1弾として、カメ&たぬきちが「いつ子供を授かるか」について話し合います。

カメもたぬきちも男性のため、男性側からの視点になってしまっているので、女性は全く異なる悩みもあると思いますが、男性サイドの体験としてご理解いただけたらと思います。

博士課程やポスドク中に出産を考えている方、また今現在は具体的な予定がなくても「いつかは子どもがほしい」と思っている方の参考になればうれしいです。

子供を授かるタイミングについて ~博士課程?ポスドク?~


カメ 
 
「僕らの研究スタイル」をいつも読んでいただきありがとうございます。私事で恐縮ですが、今春、第一子となる男の子が生まれました〜。

ただいま、研究と慣れない育児の間で奮闘中です。そこで、先輩パパのたぬきちと「研究者の出産・育児」について話し合ってみたいです。

早速だけど、たぬきちは博士課程中に子ども2人に恵まれたよね。子どもを授かるタイミングについて、どういうふうに考えていた?



たぬきち 
 
まずはおめでとうございます!めでたいです。

自分にとって子供を授かるタイミングは、アカデミアでのキャリアとか正直あまり考えなかったです。給付型の奨学金が貰えることになっていたから、ギリギリ生活できる気もしていたので、奥さんの希望で決めました。

もちろん自分としては、子供は博士課程でも後半だとか、学業が安定したらという希望はあったけど、自分が産むわけではないし、欲しい時に授かるかもわからない。出産は命がけだから、奥さんが今子供が欲しいのであればこちらに決定権はあまり無いと感じてたよ。



でも正直、いざとなったら博士課程を中退する覚悟はどこかにあったと思う。子育てって未知の領域だったし。博士課程で子育てしたって人殆ど聞いたことなかったので...。

一方で図々しくも頭の半分では「20半ばの人間が、例え博士課程だろうと子供を育てられないのであれば、おかしいのは自分ではなくて制度がおかしい」ぐらいに思ってたよ。笑

結局は奥さんが研究に影響が出ないように極力サポートしてくれたのでなんとかなった。教授の理解もあったのが大きいよね。自分の力では無い気もしている。



カメ 
 
子育てのために中退する覚悟を持っていたっていうのは、興味深いね〜。

博士課程中は研究、論文、卒業、次のキャリアパスとか、いろいろなプレッシャーがあるのに、さらに育児をしながら卒業できたのは、本当にすごいと思う。
 


UJA(海外日本人研究者ネットワーク)のインタビューで、ポスドク中に出産された先生が「(妊娠の選択肢がある場合)大学院中に子どもを産んでおくのがベスト」って話されてたんだよね。
 
(博士課程だと学生の身分で守られているけれど、ポスドクだとキャリアアップに重要な時期と育児の大変な時期が重なってしまうから、という理由を挙げておられました。興味をお持ちの方は、インタビュー動画 59分あたりからを見てください)



でも実際はたぬきちが言うように、博士課程中に子どもを育てている人は少ない。
 
たぬきちは博士課程中に出産・育児を経験したわけだけど、どんなことがメリットだと感じた? どういう人にとって、博士課程中に第一子を育てるのがベストな選択になるんだろう?



たぬきち

なるほど、そういう意見もあるのか。

UJAのインタビュー動画のように博士課程中に第一子を育てるのがベストというのはわからなくもない。でも人に勧めるほど楽なものではないし、制度や文化も学生の出産をサポートするほど成熟していないと思う。

メリットは若さ、少々無理しても大丈夫な歳だとは思う(もちろん個人差はあるのは当然として)。あと「締め切りギリギリに追い込む!!」というのが基本的に不可能になるので、自分の場合は時間の使い方が計画的になった。



一方で子供が大きくなれば子育てが楽になるというのも幻想なので、「楽になる」とは考えない方が良いと思う。確かに、アカデミアでのキャリアにおいて決定的な仕事となるポスドクの期間落ち着いて仕事ができるというのは事実だと思う。実際大学院時代の仕事がその人のキャリアを決めるって事は殆ど無いだろうからね。

デメリットとしては、お金がないこと。例えば都心の学進DCで貯蓄が無いなら結構厳しいかも。出産後奥さんが1年以内に復職できることが条件になると思う。ある程度身内(実家があっていざという時に助けをお願いできる等)がセーフティネットとしての機能がないと無理だと思う。



同世代に子供を持っている人がほぼいないので孤独を感じることは多い。UJAの方は大学院生は守られているというけど、大学院生は雇用保険もないし、貯蓄もない、学位がないので転職も不利。結局このあたりの要素がみんなを躊躇させていると思うよ。

カメは逆に今のファーストポスドクというタイミングについてどう思う?



カメ 
 
個人的には、ちょうどいいタイミングだったと思う。

自分は大学院1年目で結婚をしたんだけど、子どもを持つのは博士課程を修了してからって漠然と思ってた。
 
というのも、博士課程で初めて自分主導で研究をすることに対して、ちゃんとやっていけるのかどうか不安だった。その不安を抱えながら初めての子育てをするのは、自分にとってハードルが高すぎるというか、自信がなかったんだよね。
 


けど現実問題、妻の年齢(8歳上)や希望もあって、博士課程の後半ごろから妊活に挑戦してた。自分たちはもちろん、一般論としても、妊娠・出産の可能性は年齢とともに低くなってしまう。妻とは「子どもを授かることができたらすごく幸せなことだけど、もしそうでなかったとしても、1度きりの人生楽しもう」って話してた。
 


奇跡的に妊娠が叶ったのは、博士課程を修了してポスドクとしてドイツに引っ越す直前。結果的に、ポスドク1年目、妻はコロナ禍での妊娠・高齢出産になったわけなんだけど、無事に元気な子が生まれてきてくれた。
 
自分たちが経験して思ったのは、もし少しでも将来的に子どもが欲しいなら、女性は婦人科検診(ブライダルチェック)、男性も定期検診を受けて将来に備えておくといいかもしれないってこと。今パートナーがいない人でも、健康状態をチェックしておくことはプラスになるんじゃないかな。
 


そんな感じで今日に至るけど、このタイミングで良かったのかもしれないって思う。
 
研究室のボスは育児中の研究者に理解があるし、育児中のポスドクが自分以外に2人いるというのも心強い。あと、ドイツは国も人も子どもに温かいんだよね。例えば、毎月の子育て支援金は子どもが18歳になるまでもらえる。
 
理解力のあるボス x しっかりとした社会保障は、子育てに好条件で有り難いと感じているよ。



ただ、研究と育児の両立は、本当に難しい。
 
子どもが生まれてから、研究の進み具合がスローペースになってきてしまい、ボスから苦言を呈されて、ちょっとどころじゃなく焦りを感じてる。。。



たぬきち

仲の良いポスドクの一人が”There is no perfect time to have a baby”と言っていたのを覚えている。
 
これって真理だと思っていて、子供を育てるのに完璧な時なんてほぼ無いんだよね、もちろんその人にとってある程度ベストな時ってあると思うけど。上の言葉も正確には子育てが楽になるタイミングは無いっていうニュアンスで自分は受け止めている。

だから博士課程中に育てた人もいるし、ポスドクで育てた人もいるっていう事をまず知ってほしいよね。それぞれいいところも悪いところもあるけどね。


 

まとめ:研究者の出産・育児について 〜 いつ子供を持つか〜

「博士課程」で、子どもを授かるメリット&デメリット

◎ 若さ・体力

◎ 周囲の助けを得やすい

◎ 子育てに慣れておけば、ポスドク中に研究に打ち込める

◎ 将来について真剣に考えるようになる

X お金がない

X 研究・論文・卒業・卒業後の進路などのプレッシャーと育児の大変な時期が重なる 

X 同じように育児中の博士学生は少ないので、情報交換ができない

 

「ポスドク」で、子どもを授かるメリットデメリット

◎ 博士課程よりは経済的に安定している

◎ 同じように育児中のポスドクや同僚がいる可能性が高く、情報交換ができる

X (妊娠の選択肢がある場合)不妊治療の必要性や、妊娠中および出産のリスクが高くなる可能性がある

X(海外ポスドクの場合は特に)周囲の助けを得にくい

X ポスドク契約期間内(自分の場合は2年)に結果を出さないといけないプレッシャーと育児の大変な時期が重なる

 

あとがき


博士課程・ポスドクに関わらず、妊娠・出産は奇跡、そして子育ては体力的にも精神的にも、想像以上にチャレンジングであることを実感します。
 
いずれにせよ、子どもを授かるタイミングを考える上で最も重要なのは、「自分とパートナーが子どもを育てることに前向きかどうか」ということだと思います。
 


十分な衣食住を提供できるかどうか、愛情を注いで育てられるかどうか、親としての責任をきちんと果たせるかどうか。これらのポイントに関しては、自身の経済状況、周囲からのサポート体制の有無、親としての自覚など、様々なことが関わってくると考えられます。
 
家族の形態は今後ますます多様化していくことが推測されますが、ご自身のライフプランに合ったちょうど良いタイミングを見つけていただくために、今回の記事が少しでもお役に立てれば幸いです。



次回【研究者の出産・育児 対談シリーズ】 第2弾は「研究と育児をどう両立するのか」について話し合います。
 
 
 

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1 件のコメント :

  1. 更新された日がわからないので、ちょっとためらいましたが、色々伺ってみたい…と思ってコメント残してみます。

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