筋肉格闘俳優、ボロ・ヤンがシリアルキラー役を演じてヒットした格闘アクション作品の続編。

麻薬捜査課のタレクとリンダの活躍によって世間を震撼させていた連続武道家殺人事件、通称『死の配達人事件』は殺人鬼チョンの逮捕によって解決した。

拘置所に収監されたチョンは看守の嫌がらせをその殺意と怪力によって威圧し、恐れられる存在となっていたが裁判により有罪が確定し、静かにその時を待っていた。

そんな中、ビクター率いる傭兵組織が拘置所を襲撃し、チョンを連れて脱獄させる。

捜査一課に戻ったリンダはこの頃からかつてチョンが引き起こしていた殺人事件の模倣犯というべき事件を担当していた。
チョンの脱獄を知ったリンダは彼の仕業を疑うも、過去のトラウマから確信が取れず、再び今では恋人となったタレクに協力を求める。

遺体の傷痕からチョンが使っていた虎爪拳のように見えたが、タレクはこれはチョンではない別の人間の仕業と見抜き、脱獄したチョンの狙いを探るべくリンダと捜査を開始する。
事件は明らかにチョンを意識したものであり、脱獄した彼を誘き寄せるための何者かの仕業であった。

その頃脱獄し、連れられたチョンはビクターたちと共にサンフランシスコへと向かっていた。
アメリカ最大のチャイナタウンがあるここではその裏社会を牛耳るダー・ロー・ファーが年に一度世界各国から格闘家たちを集い、地下格闘トーナメントを開いていた。
ダーは同門で兄弟弟子にあたるチョンを呼び寄せ、虎爪拳一派の首領の座を奪うべくビクターと手を組み、チョンを大会に参戦させる。

チョンもまたダーによって囚われ消息を絶っている師匠を救うべくダーの画策にのらざるをえなかった。

一方、チョンを追うタレクとリンダは彼がサンフランシスコに向かったことを知り、先回りしてチョンを連れるビクターたちの行動を伺っていた。
彼らがチャイナタウンで開かれる地下格闘トーナメントに出場することを知り、二人はチョンたちを一網打尽にしようと潜入するのだが、ダーたちに見つかり捕らえられてしまう。

タレクが虎爪拳の使い手と知ったダーはトーナメントに参戦させ、チョンたちとの潰しあいを画策する。
さらにタレクが妙な行動を起こさないようにリンダは人質として捕らえられとある収監房に投獄されていた。

囚われの身となったリンダはそこでボロを着た老人に遭遇する。
衰弱しているその老人はチョンたちの虎爪拳の師匠その人であった。
ダーの真の目的は虎爪拳の首領に与えられる人知を超えた超能力であり、その源のなっているのが神の紋章が刻まれた扉であった。

チョンがこれまでに武道家たちを殺害したあとにその戦利品を捧げる行動をとっていたのはこの儀式からきたものであったのだった。

トーナメントは遂に開催されタレクらは予選としてサバイバル戦に参加させられる。
激闘の末に勝ち残ったタレクは猛者たちが集結するトーナメント本戦への参加資格を勝ち取り、名を連ねる。
そこにはビクターや宿敵チョンの姿もあった。

遂に始まった本戦。主要の戦士たちは順当に勝ち進み、タレクは決勝トーナメントへ進出。
ダーの企み通りになるかと思われた矢先、収監房から師匠を連れてリンダが脱出。
それを知ったチョンは反乱を起こし、師匠を危機に陥れた裏切り者ダーを追う。
トーナメント自体が混沌とするなかリンダはタレクと合流。タレクはチョンを追いかける。

しかしタレクの前にはビクターが立ちはだかる。
そして逃げるダーは追いかけてきた師匠を手にかけると扉の方へ逃げ込もうとする。
襲いかかる敵をなぎ倒しダーに迫るチョン。

果たしてそれぞれの戦いの結末は…

シンシア・ラスロックら香港映画で活躍してきた俳優たちが凱旋し話題を呼んだ刑事アクション作品の続編。

カナダ出身の格闘俳優ジャラル・メーリとシンシア・ラスロックのバディもので古来のカンフーをモチーフにした格闘アクションが話題を呼んだ前作。
武道家連続殺人を追うというサスペンスタッチな感じからハリウッドではなかなか珍しい本格的なカンフーを題材にしたアクションとマニア心をくすぐるシチュエーションが注目されたなかで、何よりも話題となったのは本作のラスボスとなったシリアルキラー役のボロ・ヤンであった。

香港時代よりもゴツく鍛えられらた肉体から繰り出される豪快無比な虎爪拳のアクションは主役であるジャラル・メーリ以上の迫力で、シンシア・ラスロックのアクションも霞むインパクトを残していった。

そんな続編となる本作はそのボロ・ヤンをストーリーの基軸としており、主役であるはずのジャラル・メーリらを差し置いて事実上の主役となっている。
そのためか悪役としての扱いが薄れ、いわばダークヒーロー的な存在として描かれており、前作にあった狂気や空気感とは全く違ったものとなっている。

薄れたサスペンスタッチ感を補うため今回は格闘アクション作品では王道のジャンルである『地下格闘』ものを取り入れ、娯楽性のテコ入れを図っているのだが、クライマックスではそれも尻切れトンボ状態となってグダグダとなっており、変な超能力要素も入れ込んだために作品自体の印象としては散漫化。そしてその混沌としたまま思わず『?』となるようなエンディングを向かえる。

アクション的には地下格闘トーナメントが導入されたことで見処は広がったものの、そのためか主要キャラたちの活躍も分散化。
特にシンシア・ラスロックは余ってしまった感が否めなく、クライマックスまで主だった出番はない。それどころか恋人同士となったジャラル・メーリとのいちゃつきぶりが目立つ結果に(笑)

多彩な格闘俳優たちの一騎討ちでみせる格闘アクションが地下格闘ものの醍醐味であるが、本作は結構レベル的には高めで、前作に比べ多少スリムになったジャラル・メーリも連続蹴りなど躍動感溢れるファイトをみせるほか、安定したボロ・ヤンの戦いぶりも良い。
なおかつ名だたる経歴を持つ格闘俳優たちが今回は出演し、今回のジャラル・メーリとのマッチアップとなった全米空手チャンピオン出身のエヴァン・ルーリをはじめ、『ヒットマン』でジェット・リーを苦しめたグレイウルフことポール・パブロフスキ、ウェポンマスターのエリック・リーなどそのメンツの豪華さからすれば前作よりもパワーアップしているといえる。

クライマックスでは出番のなかったシンシアも対ポール、ジャラル・メーリ対エヴァン・ルーリと一騎討ちの見せ場があるのだが、ボロ・ヤンだけは今回のラスボスであるオー・スン・ホンがアクションを見せる間もなく終わってしまうのでかなり肩透かしな感じに。
それまで圧倒的なパワーと存在感を見せつけていただけにあっけなさすぎであった。

ラストのとんでもない方向への展開も含めて、ボロ・ヤンに始まりボロ・ヤンでかき回された本作。
総じてのアクションはレベルが高いのだが、肝心の主役級であるボロ・ヤンのアクションに関しては物足りなさが残る作品となってしまったといえる。

評価…★★★
(更なる続編もあるようだが殺人鬼から神様のようになっていく展開はなかなかぶっ飛んだ脚本である(笑))

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