新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

「ミスター総理」安倍晋三さんの死去で失うもの

本当は別のことを書くつもりでしたが、今日2022年7月8日、安倍晋三元総理が奈良市内で参議院選挙候補者の応援演説中に山上徹也という男が銃で氏に向かって発砲し、病院に搬送されたものの死亡するという事件が発生しました。あまりのショックと悲しみ、犯人山上に対する激しい怒りと愚別、そして安倍さんの死によって大きく揺らぐであろうこの国民生活の安全や経済・雇用に対する危機意識で頭の整理ができない状況です。ここでは経済知識のことを中心に取り上げ、政治的な話や時評は時評編ブログで書くようにしていますが、今回この場で安倍さんの追悼をさせて頂きます。

安倍さんは2012年末に四半世紀近くにも及び慢性的デフレ不況体質に陥っていた日本の経済と雇用を立て直すために、異次元といわれるインフレターゲットつきの量的・質的金融緩和政策の導入や積極財政、規制改革の3つを軸とした経済再生プランを公約に掲げ、衆議院選挙に挑みました。その選挙に圧勝し第2次安倍政権を発足させアベノミクスを始動させます。

 

筆者は東日本大震災直後の2011年あたりより、俗にいうリフレ派といわれる論客の論考に興味を持つようになり、金融政策の重要性に気づくようになります。その後2012年に安倍自民総裁(当時)が大胆な金融緩和政策を導入するといってくれたことに大きな期待と喜びを感じたものです。筆者が「暮らしの経済手帖」を開設したのは2017年のことでしたが、大きく誤解されていた金融政策についてブログ上で丁寧に解説していきたいと思い、記事を何本も書きました。それらの記事は「リフレーション政策(異次元金融緩和政策)|新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)」でまとめてあります。

 

日本の新聞・テレビなどのマスメディアや左派系の野党は金融緩和緩和政策について「輪転機をグルグルまわしてお札を刷りまくり、ばら撒く政策だ」とか「突然ハイパーインフレを起こす」「株式投資をする富裕層だけを肥え太らせるだけだ」「トリクルダウン理論だ」などというトンチンカンな批判ばかりを繰り返していましたが、金融緩和政策で大事なのは民間企業が資金繰りを心配することなく、積極的に事業を行って雇用や設備投資などを拡大させることです。安倍さんは雇用の拡大を第一に考えて異次元金融緩和をはじめたのです。その結果として企業投資がぐんぐん伸びて、2018年には人手不足状態が叫ばれるようになったのです。残念ながら一般家計の消費の方がなかなか積極的にならず、インフレターゲット2%にはなかなか到達しませんでしたが、2014年あたりから新卒求人倍率が伸び、近所のスーパーに行っても従業員募集の案内放送が頻繁に流れるほどの状況になります。企業の事業意欲活性化と雇用改善は安倍政権が遺した大きな政治的功績といえましょう。

 

あと経済政策ではないのですが、安倍総理は在任中に自国が主導するかたちで日・米・豪・印の戦略協定(クワッド)構想をまとめていくなど、従来の日本の政治家にはなかった世界レベルで通用する外交センスを魅せつけていました。アメリカのトランプ(元)大統領とも巧くタッグを組み、覇権主義を露骨にみせる中国共産党を牽制します。安倍さんは極右だと揶揄されてきましたが、実際には自国日本だけではなく世界全体の平和と安全保障に大きく貢献した政権だったといえましょう。筆者は日本国民に対して非常に誠実な政治家であったと安倍さんを評価しており、「憲政史上最も偉大な総理」という言葉を捧げたいと思っております。

 

2020年9月に安倍総理が病気療養のために辞任をされ、菅義偉政権がその跡を引き継ぎました。この内閣はしっかりと安倍政権の経済政策や安全保障戦略を忠実に継承していたのですが、岸田文雄現政権になってから財務省や日銀官僚の顔色を伺うような態度ばかりとるようになり、安倍・菅政権の政治的資産を食い潰したり、否定するような動きをみせています。

 

安倍さんは生前、コロナ禍から民間の経済活動が十分回復していない状況をみて金融緩和の継続や積極財政の必要性を進言されてきました。

日銀金融緩和の継続を 自民・安倍氏:時事ドットコム (jiji.com)

外交・国防についてもロシアによるウクライナ侵略や中国・北朝鮮による軍事侵攻の危険性が増加する中で防衛強化についても訴えかけています。

安倍元首相、防衛予算のための国債発行の必要性に言及 - 産経ニュース (sankei.com)

安倍さんの死でただでさえ懸念されていた金融緩和解除の動きや財務省による防衛予算削減の動きが加速していくことにならないでしょうか。あと自民党内で金融政策について理解しようとしたり、積極的財政政策を進めるべきだと主張する議員さんがじわじわ増えてきましたが、筆者は安倍さんという重石がなくなり彼らが変節して過剰な財政規律偏重主義者や金融引き締め一辺倒の日銀理論に戻ってしまうことを警戒しているところです。

 

安倍さんがいなくなったことで、再び日本の景気や雇用が低迷し、ますます国力を衰弱させ、やがては外交力や防衛力も綻んで、中国共産党やロシアに蹂躙されるようなことになることを危惧しています。そのようなことになった場合、安倍さんを殺害した山上徹也は売国奴国賊として末代まで罵られることになるかと思います。

 

参考

「今でいう新しい資本主義を狙っていた」 経済ブレーンの浜田氏、安倍氏悼む - 産経ニュース (sankei.com)

全般ランキング


政策研究・提言ランキング

ご案内

「新・暮らしの経済手帖」は経済の基礎知識についての解説を行う基礎知識編ブログも設置しております。画像をクリックしてください。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200814191221j:plain
https://ameblo.jp/metamorphoseofcapitalism/

ameblo.jp

 
サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター  

https://twitter.com/aindanet