長文になります


達真空手(ダルマカラテ)では年に一回、合宿をおこなっています。合宿の場所は毎回決まっているわけではありませんが、今年11月21日・22日の二日間の日程でおこなわれた合宿は、極真空手(きょくしんからて)の聖地である千葉県の清澄山が舞台となりました。



達真空手に入門して8年になりますが、これまでに一度も聖地を訪れたことはありません。僕以外の他の道場生も、宗家を除いては誰も訪れたことがなかった場所で、満を辞してと言いますか、ようやく今回の合宿で聖地巡礼を果たすことができるという、僕にとっても、また他の道場生にとっても特別な意味を持つ機会になったように思います。



達真空手の合宿で何故ゆえに極真空手の聖地を訪れるかについては少し触れる必要があるかと思いますが、当ブログに掲載している宗家のプロフィールからも由縁を辿ることができますのでお手隙の時にでもご参照頂けましたら幸いです。



達真空手とは何か



簡単にその由縁を申し上げますと、宗家が極真空手世界チャンピオンの中村誠師範と師弟関係にあられ大山倍達総裁の元でも稽古に専念しておられた歴史があるからです。



そして何を隠そう宗家は、数々の取材を重ねた末に大山倍達総裁が山籠りしていたまさにその場所を発見した第一発見者でありそのエリアに建てられた記念碑の発起人でもあられます。



僕たち道場生はそうした経緯を聞いていますし、大山総裁の随筆も読んでいますので、世界最強と呼ばれた男がどんな場所でどんな稽古を積んでいたのか、ということに興味を抱かないわけがありません。



極真空手の聖地

大山倍達総裁修行の地 記念碑



その実際の場所はかなりの山奥で危険な場所でもあると聞かされていますが、今回の合宿ではその場所を目指すというのが目的の一つになっていましたので、参加する道場生にとってただならぬ緊張と特別感を抱くのは至極当然のことでした。



たとえその実際の場所にいけなかったとしても、清澄山という地は大山総裁が稽古に励んだ地であり、また、日蓮聖人ゆかりの地でもありますので、そうした地で基本に立ち返って稽古ができるというだけでも特別な合宿になることは想像に難しくありませんでした。



しかし、合宿の日程が近づくにつれて道場生の間に一抹の不安がよぎり始めました。それまで快晴続きだったはずなのに、合宿の日程だけが雨の予報になっていたのです。そうして迎えた合宿初日の早朝。天候は不安的中の雨、でした。



小雨くらいなら山籠りの現場に行ける。そんな期待を誰もが胸に密かに抱きながら、目指すは合宿の宿舎となる清澄寺(せいちょうじ)。この古刹は、元々は天台宗だったものが徳川秀忠の命により真言宗に改宗し、さらに、この寺に得度された日蓮聖人が遊学の末に日蓮宗に改宗したことから、現在では日蓮宗となっています。



清澄寺 本堂



大山総裁は日蓮聖人を尊敬していたことから修行の場としてこの地を選んだそうで、当時のご住職とは恐らく親しい関係だったと想像されます。



アクアラインのパーキングエリアで早めの昼食を済ませて、車一台通るのがやっとという里山の細道を抜けて清澄寺に着いたのがお昼をだいぶ過ぎた頃でした。山門の少し手前にある記念碑の前でご挨拶を済ませて荷物を各自宿坊に預けると、いよいよ達真空手の修行の始まりです。



記念碑の前にて


清澄寺 山門



今回の合宿では、達真空手の基礎中の基礎となる『力禅(りきぜん)』を3つの異なる場所で3度に渡っておこないましたが、稽古始めの最初の力禅は清澄寺の境内にある奥の院でおこないました。



奥の院へは誰もが登れるようになっているのですが、この場所は、日蓮宗のとある大きな宗教団体が清澄寺で修行する際には有志しか登れない特別な場所として設定されているほど神聖で霊気の溢れる場所となっているようです。



清澄山のエリアに足を踏み入れた時から感じていましたが、この辺り一帯は既に空気感が違っていて、特に奥の院へ向かう山道から山頂にかけてはピシリと引き締まるような澄んだ空気が張り詰めている感覚をずっと感じていました。



こうした空気感の中でおこなう力禅は、普段自宅や稽古場でおこなっているものとは全然違う感覚が呼び覚まされてきます。



この場所で力禅を始めて自分がまず感じたのは"大地"でした。足の裏から伝わってくる離そうとしても離れがたい、自分と一体となっている大地の感覚です。



この場所には杉の大木がそこかしこにあるのですが、長い年月をかけてこの場所に根付いたそれらの大木のように自分も大地と一体となっていくような感覚にとらわれました。



冷たい風が頬をかすめ、小雨が肩を濡らし、杉の梢は風に揺れていましたが、自分もこの森の一部になっていくような感覚に包まれました。



そうしているうちに、今度は空から引っ張り上げられるような感覚に見舞われました。大地だけではなく天とも繋がっている、その狭間に立って呼吸している自分が思い浮かんできました。



冬の冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んで、こんどは体内に生まれた二酸化炭素を外に吐き出す。普段の生活の中では自動的に無意識におこなってきたこの自然のサイクルが、ここではまるで地球と一緒に呼吸しているような錯覚を覚えました。



力禅は立ったままの姿勢でおこなうもので、数ある型の中には両腕を前に突き出しておこなうものや膝を曲げて中腰でおこなうものもあります。



これを何十分もおこなうのはとてもキツいのですが、肉体的な苦痛を感じるどころか、自然の中で呼吸している自分が心地良すぎてずっとこのままで居たいという心境の方が強く、気づいてみれば1時間以上が経過していました。



宗家の合図で『動力禅』『歩法』を各自がその場でおこなってこの時間の稽古を終えましたが、皆んなそれぞれに清々しい表情をしているのが分かりました。



相変わらず小雨が降っていましたが、そんなことは誰も気にする気配すらありませんでした。



下山して宿坊に戻った後は、空手着に着替えて寺の道場内での基本稽古となりました。古刹である清澄寺の研修道場は立派なもので、畳敷きの広い道場には立派な祭壇が置かれています。



僕はかつてこの道場である方の講話を聴くために訪れたことがあるのですが、まさかこの場所で空手着を着て空手の稽古をする日が訪れるとは夢にも思いませんでしたし、こんな立派な道場で空手の稽古ができる機会も滅多にないだろうと思いました。



あまりにも立派な道場なので気合いの声をどこまで張り上げればいいのか分からず遠慮気味にしていましたが、それでも自分の中の邪心を打ち払い魔を斬るつもりで内心では気合を込めて一つ一つの技を出すようにしていました。



いつもおこなっている基本稽古が特別なもののように感じられました。



宗家(右)との組み手の様子

信育道場にて



初日の稽古はここまでとなり、あとは楽しい食事とお風呂の時間です。合宿というと粗末な食事を思い浮かべるかも知れませんが、達真空手の合宿は違います。宗家が特別な精進料理のお弁当を用意して下さり、さらに特別な日本酒まで出てきました。合宿にもかかわらず、料理にはこだわりがあるのです。



そんな料理とお酒を囲んでの食事時間は、いつもの稽古の時の張り詰めた雰囲気とはガラリと変わって談笑しながらの楽しい時間となりました。こういう時間がたまにあるからこそ、また頑張ろうとか、もっと頑張ろうとか思えるのかも知れません。



でも、実のところ、精進料理だけではお腹が満たされなかったのですが、達真空手を応援して下さっているパトロンさんが差し入れて下さったアンパンとカレーパンを風呂上がりに頂くことができ、お陰でその夜はグッスリと眠ることができました。



ただ、一つだけ気掛かりだったのは、夜がふけるにつれて雨足が強くなっていることでした。一晩ガッツリ降ってくれて、翌日はスッキリ晴れてくれたら、と誰もが思っていたかも知れません。





2日目の朝。早朝5:30に集合した時点では雨が降っていたのですが、いざ力禅をしに外へ出るタイミングになると不思議なことに小雨になり、宿坊の裏手の広場で力禅を始める頃になると雨がピタリと止みました。



その場所は少し小高い丘のようになっていて、千光山一帯を見渡すことができてその先には太平洋が一望できました。眼下には雲海が広がっていて、山肌をこすりながら雲が移動していく様は、まるで墨絵にでもなりそうな神秘的な光景でした。



力禅、動力禅、歩法から推手までの稽古をこの場所でおこないましたが、その間中、雨は止んでいました。そしてその後、本堂での御祈祷に全員で参加させて頂く頃にはまた雨が降り出していました。



朝食を済ませた後は、3度目の稽古をするために宗家と場所の選定をおこない、さらに大山総裁修行の現場に行けるかどうかを話し合いました。



雨足は少しづつ強くなっていましたので稽古ができる屋根のある場所を探したのですが、宗家の古い記憶の中にそのような場所があり、地図上で確認すると大山総裁修行現場の近くに野外ステージが見つかりました。



修行現場へ行くかどうかはその時の天候次第ということにして、チェックアウト後は屋根のある野外ステージに向かいました。





広い公園の敷地内にそのステージはありました。雨は勢いを増していました。それほど広くはないステージでしたが、各自が思い思いの場所を選んで力禅を始めました。



その間に宗家と僕は、大山総裁修行現場への道筋を確かめるために別行動を取ったのですが、実のところ、宗家がこの地を訪れるのは7年ぶりくらいになるそうで、修行現場にいくのはもっと久しぶりのため正確な場所が分からないという状況でした。



そのような状態で道場生全員を連れて行動するのは危険なため、別行動を取ったのですが、大山総裁の修行現場というのは地元の人でも滅多に寄り付かないような山深いところで、そこへ行くのは決して簡単なことではなかったのです。



宗家の古い記憶の中で大体の目処は立っており、予め地図上で確認していました。そして修行現場へ辿り着くための第一ポイントは、"ある印"を見つけることにありました。



その印の場所から川に降りて、さらに30分ほど山の中を掻き分けて進むと現場があったのだそうです。



「細い山道の右側に川が流れていて宗家が道端で見つけたある自然の目印(非公開)があった」



これが宗家の古い記憶の中にあった第一ポイントの確証でした。そして地図上で予め確認しておいた地点まで車で向かおうとしたのですが、何としたことか、そこへ向かう道の途中が崖崩れで通行止めになっていたのです。



大岩と大木で完全に道が塞がれていたために、たとえ自分たちがそこを越えられたとしても道場生を危険に晒すわけにはいかないと判断してそのルートは断念しました。



しかし、万一の場合に迂回ルートがあることは予め突き止めていました。その迂回ルートを辿って目印となる第一ポイントまで行くかどうかはこの時点では判断できず、そもそも雨は朝からずっと降り続いていたのです。



宗家と僕はとりあえず野外ステージまで戻り、皆んなと合流して稽古を始めました。動力禅、歩法の後は、今回は『爆力(ばくりき)』をおこないました。



爆力は、力禅によって内に蓄えた力を、技を通して瞬時に外に放出する方法です。爆発するようなパワーが技に宿るために『爆力』と名付けられていますが、簡単に身に付くものではありません。僕は8年経ってもまだこの技が身に付いていません。



土の上で爆力を正確におこなうと土に穴ボコができてしまいます。爆力を何度もおこなうとそこら中が穴ボコだらけになります。それくらいに強い振動が伝わるような技なのですが、この感覚を掴むのに皆んな苦労しているようでした。



そうこうしている内にいつの間にか小雨になり、空が白んできて雨雲の中に青空を見つけられる状況になってきました。



昨日からの経験では、稽古の時になると雨が止むという不思議な体験をしてきた僕たちは、ここにきてもまた再びその体験をすることになろうとは、薄々ながら期待はしていたものの、本当にそうなってきたことに少なからず驚きを覚えました。



道場生の一人である唐橋さんはその場で何度も天気予報を確認して、それまでとは状況が変わってきて午後3時頃まではこの天気が持ちそうだと言います。僕の中でも行くなら今しかないとの思いが増していましたので唐橋さんと共に宗家にそう打診しました。



宗家は行くなら昼食を済ませてからと考えておられたようでしたが、昼食は断念して直ぐに第一ポイントに向かうことになりました。時刻は午後の1時頃だったと思います。



タイムリミットは2時間。大山総裁修行現場までは行けないにしても、第一ポイントまでは行けると思いました。



その途中、宗家の記憶からも失われていた神社があり、全員でお参りしました。とても立派な神社でした。



僕自身は少しでも早く先に進んだ方が良いのではという焦る思いがあったため神社に寄っている余裕などあるのかと思いましたが、結果的にはこの行動が命運を左右したのではないかと思っています。



次週につづく。



記事:河辺林太郎



清澄寺 信育道場にて



★こちらもご覧ください

【動画・達真空手演武〜日本刀VS空手〜】

 

 

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https://m.youtube.com/watch?v=X2cSlqip8T4

 

 

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