「そうだ、何か言ってなかったか?」

 じいちゃんも、裕太の肩を揺さぶる。

「えっ、そんなことを言われたって」

いきなり言われても…思い出せるわけが、ないじゃないかぁ~

裕太は今にも、爆発しそうだった。

だが母さんが、そんなことであきらめるわけもなく…

「あんた、何かあるでしょう?

 場所とか、何か変わったことがあったとか、

 誰かに会ったとか…」

じれたように、母さんがイラついた尖った声で言う。

 

 誰かに会った?

 あれっ?

 それって…

該当するのは、ただ1人。

「おじいさんだ…」

ふいに、思い出した。

「おじいさんって?」

「誰よ、それ」

急に一同が色めきだった。

「どんな人?」

「幾つくらい?」

「どこの人?」

「見たことのある人?」

一斉に聞かれても…裕太も答えようがない。

「よくわかんないよぉ

 じいちゃんくらいの歳の人かなぁ」

あまりにも、漠然としている。

でも…確か、前にも会ったことがある…

「じいちゃん、前にも言ったよね?

 炭焼き小屋のおじいさんだって」

「炭焼き?」

せっかく思い出したのに、何だか大人たちの反応がおかしい。

「そんな人…この島にはいないわよ!」

少なくとも、私は知らない…

あんた、大人をからかうもんじゃないわよ、と母さんは目に見えて

イライラしているようだった。

じいちゃんも、ジュンペイの母さんも、お回りさんも、否定はしない。

なんだ、知らないのか…といういささか落胆したような顔つきをしていた。

母さんも、疑わしそうな目で、裕太を見る。

「だって、そう言ったもん」

だが裕太は裕太で、一向に引き下がるつもりはなかった。

 

 

 

 

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