はた目から見ると、きっと情けない格好をしていることだろう…

「どこに行くんですか?」

思わず聞くけれど…

彼女は黙って彼を細い腕に支えるようにして、上空をフワリと飛び上がる。

 遥かかなたに、湖が見える。

そしてその手前には、緑に囲まれる野原が見える。

そこにはさっき見かけた少女と男の子が話しているのが見えた。

まるでフィルムが、コマ落としで映し出されるように、

恭介の眼前で、広がっている。

笑ったり、怒ったり、おばあちゃんと手をつないで歩いていたり…

 そうして気が付くと…

再び屋上に、戻っていた。

だけども、何かが違う…

恭介は敏感に気が付いた。

そこに流れる空気が…

気配がどこか違う。

まるで眠っていたように、よどんでいたものが、

急に霧が晴れたように、風が吹き抜ける…

そんな気がした。

 

「あと、少しね」

 先ほどまで、黙っていた女性が、再び口を開いた。

「あっ…」

恭介は、彼女に目をやる。

また少し、彼女が成長している。

(どういうカラクリなんだ?)

まるで、恭介が思い出すたびに、少女が大人になっていた。

(一体、どのくらいまで年をとるのだろう?)

まさか…

そう思いついた時に、彼女はクスクスと笑う。

 

 それは不思議な瞬間だった。

目の前の景色が、ゆっくりと変わっていく。

どこかで、オルゴールの音がする。

それを合図に、いつの間にか、自分はホテルのフロントの前に

立っていた…

 

 

 

 

 

 

 

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