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2022年01月01日

神亀のおもひで

神亀のおもひで


三十数年の付き合いがある酒蔵がある。


数年前、
そこの専務は病気を患い、
他界した。


「専務!!」と呼ばないと、
聞こえていても
振り返らない「社長」だった。


************


あるとき、酒を買いに行った俺に、
奥さんが悲しそうな顔をして嘆いた。


「××万円、冷蔵設備にかかったんですよ…」


常温熟成の古酒の割合を
低温貯蔵古酒に切り替えていた頃だった。


俺も社会人なり立ての頃である。


この酒造の主力商品は、
ラベルにも、何も書いていないのだが、
「三代目」という意味の品名が表すように、
経費をかけて低温貯蔵をしている
三年古酒…なんだ。


酵母が糖を食いきっている辛口のおサケ。


余りに硬い味の日本酒は、
消費者に受け入れられなかった。


そうして、図らずも、
常温貯蔵・二年古酒となった。


若き専務は
その年は、出荷しなかった。


そしてその純米酒は、
ようやく三年目になって、
角が取れた。


その純米古酒を
古酒とアナウンスせずに
売りに出したのだそうだ。


「熟成」という言葉が異端を意味し、
なんの評価もされない
日本酒の非常識…


かつて、奥様から聞いた実話である。


*************


1993年、
あの平成の大凶作の年、
彼は大吟醸酒をつくらなかった。


契約している農家の
酒造好適米までもが
大凶作だったためである。


かろうじて収穫できた
酒造好適米の品質も、
彼を納得させる品質ではなかったのだ。


「こんなときこそ腕の見せどころじゃないか」


業界の多くの人から、
そう批判されたそうである。


「でも、ブドウの出来が悪かったら、
 フランスのワイナリーは
 その年の醸造をやめるよね」


俺がそう言うと、
「そうだよな!」…と、嬉しそうに、
でもちょっと弱々しく寂しそうに、
うなずいたことが思い出される。


************


ここは純米酒しか
造っていない蔵である。


ところがある日、
ひょんなことで
本醸造酒
(少量のアルコールを添加してある酒)
…があることを知った。


「昔からの付き合いがある居酒屋さん、
 ウチの本醸造酒が看板メニューなんだよ」


チェーン店でも何でもない、
古くからの顧客で、
この蔵が純米一本に絞り込む前からの顧客…


そこの年取った店主のために、
ごく少量、本醸造という、
アルコール添加をする酒を
つくっていたのだという。


「俺もその酒、飲んでみてもいい?」


その酒を定期的に購入することにした。


購入するようになって数年がたった時、
「これ、もうすぐなくなるョ」
…と専務から聞いた。


「それじゃあ、今度、ひとケース、貰おうかな…
 取っておいてください。」


そうお願いした、翌月…。


名醸造の直売所には
とても見えないポンコツな店で、
奥様が言った。


「あのお酒、またしばらく生き延びたわよ」


「エッ!! どういうこと??」


その時、
丁度専務が顔を出した
「うすめたから…だョ」


このときは、通常の常識ではない
「うすめ方」をしていたのだ。


さすがにもう、
ただ一軒の顧客のために
本醸造酒を醸すのはかなり前に停止し、
長く貯蔵していた
ひと桶だけになっていたのだが、
それも尽きようとしていたのだ。


でも、それを「うすめて生き延びる」…??


その方法を聞いて、絶句した。


それは、本醸造酒より、はるかに原料代、
コメの量がかかる、純米酒で、
「うすめた」というのだ。


「味が変わっちまったけどね。」


いたずらっ子のような眼をして笑う。


俺は、わがままを言って、
ひとケースでなく、
ふたケース、つまり12本、
購入させてもらった。


限りなく純米に近い、本醸造大古酒…


数年前、職場の親友を招いて、
2Fテラスで酒盛りをした。


この時に、
このとっておきの
本醸造大古酒を一本開けた。


買った時にすでに十年近い、古酒。


開けた時に、十五年は経っている大古酒。


色は黄金色。


味は、とてつもなく上品な
紹興酒のように育っていた。


まだ数本、外階段の下で、
常温保存中である。


それからさらに、
数年がたった。


いまはもう…


…俺が死んじゃう前に、
飲まなきゃ…な。


************


あけまして
おめでとうございます。


数年前の冬に書いて
「熟成していた記事」(…!?)を
ご紹介いたしました。


本年もどうぞよろしくお願いします。



では、今回は、
この辺で失礼いたします。


ご訪問ありがとうございました。


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この記事へのコメント
あけましておめでとうございます。

ワタシは浅学ゆえ日本酒はさっぱりですが、いつもおいしそうなお酒を紹介されますネ ^^
せっかくの正月、久々に日本酒なぞたしなんでみようかな・・・

にしてもワタシ的日本酒のイメージを覆す黄金色とわ ^^;
人間も酒と同じく熟成すればするほどいい味が出るようになりたいものですネ ^^;
Posted by GRANADAGRANADA at 2022年01月02日 08:19
明けましておめでとうございます!

お酒が飲めないのでお酒のことはさっぱりですが、
美味しいお酒で良い新年が迎えられましたでしょうか?

今年も、情緒と知識教養溢れるeco2houseさんの記事を楽しみにしています♪
今年はどこかでお会いできるといいなぁと思ってます。
本年もよろしくお願いいたします!
Posted by オディールオディール at 2022年01月04日 07:38
◆GRANADA さん あけましておめでとうございます。

>ワタシは浅学ゆえ日本酒はさっぱりですが、
>いつもおいしそうなお酒を紹介されますネ ^^
>せっかくの正月、久々に日本酒なぞたしなんでみようかな・・・

「日本酒」は、日本人の持つ、
大切な食文化の一つだと思います。
日本酒はコメからできる…
でも、「純米酒」という言葉がある不思議さ…
ぜひ、それを味わってみてください。

>にしてもワタシ的日本酒のイメージを覆す黄金色とわ ^^;
>人間も酒と同じく熟成すればするほどいい味が出るようになりたいものですネ ^^;

日本酒の熟成は、それに耐えるしっかりとした
「つくり」がされていることが大切です。
その上で、長い時間が創る、古酒みたいなにんげんに
なれたらいいですね!
Posted by eco2houseeco2house at 2022年01月05日 08:04
◆オディールさん 明けましておめでとうございます!

>お酒が飲めないのでお酒のことはさっぱりですが、
>美味しいお酒で良い新年が迎えられましたでしょうか?

エッ!? そうなんですか?
なんか、ガンガン、いけるっていうイメージでした…
私は最近、良いものを少しだけという路線ですが、
「いつものおさけ」で、楽しめたと思います。

>今年も、情緒と知識教養溢れるeco2houseさんの記事を楽しみにしています♪

…!? ありがとうございます。
でもなんだか、コソバユいお言葉です。

読んでいただいた方に、
なにかプラスになれば…
とは思っているのですが。

>今年はどこかでお会いできるといいなぁと思ってます。

確かに… そうできるとうれしいですね。

>本年もよろしくお願いいたします!

こちらこそよろしくお願いいたします。
Posted by eco2houseeco2house at 2022年01月05日 08:09
ご無沙汰しております。
ワタクシも大好きで千葉から蓮田まで定期的に通ってました。
とは言えちょいちょい行けないので行く時はアポを取って「7代目」にニシザワ酒店のお話しとか色々お話し聞かせていただきました(笑)
いやはや懐かしいです。
Posted by とらめふぁんとらめふぁん at 2022年05月15日 07:38
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神亀のおもひで
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