Turnstile(ターンスタイル)
『Glow On(グロウ・オン)』

ボルチモア出身のハードコア・バンドの3作目。アラブのメロディーからやRage Against the Machine(レイジ・アゲンスト・ザ・マシーン)のヒップホップな要素、クイックサンドのトリッキーな要素など、あらゆるハードコアを総まとめにした内容の『Nonstop Felling(ノンストップ・フィーリング)』に続き、出世作となった前作の『Time&Space(タイム&スペース)』は、野太いギターのハードコアを中心に、The Stooges(ザ・ストゥ―ジーズ)のような扇情的なロックナンバーや2コード・2ビートのネイキッドむき出しハードコアを展開した作品だった。サウンドの方向こそと違えど、CODE ORENGE(コード・オレンジ)やFULL OF HELL(フル・オブ・ヘル)などのバンドと同様、最先端のハードコアを提示した作品だった。

 

前作以上にさらに話題となっている今作では、エレクトロポップな要素を取り入れ、かなりポップな作品に仕上がっている。今作でも独特なリズムを刻む野太いギターのオールドスクール・ハードコアが、サウンドの骨格になっている部分に変わりはない。コンガなどの独特な打楽器から、高音のリヴァーブギター、静と動のコントラスト、ムーヴシンセ、静けさにブンブンうねるベースからファンクなリズムなどを、ハードコアのフォーマットに取り込み、雑多で複雑な音が絡み合っている。

 

まるで朝露のようなキラキラ光る希望にあふれた美しさと、雲の上の世界のように幻想的でゆりかごのような心地よさを想起させるサウンド。ハードコアから進化した実験的で新しいサウンドであることに間違いはないが、そこにはハードコア本来の魅力であった攻撃性や熱量はない。だが、自分たちにしかないオリジナルティーを追求しようとする姿勢と、夢のなかのような幻想的な世界は、聴くものを虜にさせる魅力がある。けっしてハードコアではないが、オリジナルティーを追求している観点からすれば、素晴らしい作品といえるだろう。

 

エロクトロポップに路線変更したしたといえば、BRING ME THE HORIZON(ブリング・ミー・ザ・ホライズン)の『amo(アモ)』を思い起こすが、そこまで売れ線を目指しセルアウトにした作品でもない。個人的に彼らのなかで一番好きな作品は、ハードコアにヒップホップやネオ・サイケなどの別の要素を加えたバンドたちのサウンドを総まとめにした『Nonstop Felling(ノンストップ・フィーリング)』。そういった意味では、ハードコアの魅力を失っていささかさびしさを感じるが、これはこれで魅力のある作品だ。