Harm’s Way(ハームス・ウェイ)
『Isolation(アイソレーション)』

シカゴの出身のEarth Crisis(アース・クライシス)系ストレートエッジ・ハードコア・バンドの2作目。2011年に発売された本作だが、この度10周年を記念して『10周年記念エディション』をリリース。この作品の記念エディションを発表した理由は、おそらく彼らの最高傑作にして、出世作となった作品だからだろう。

 

メタル寄りのハードコアでCrowbar(バール)やInfest(インフェスト)などとの影響が強かったデビュー作の『Reality Approaches(リアリティー・アプローチ)』。映画の残虐シーンのセリフを盛り込んだ3作目のEP『No Gods, No Masters(ノー・グッドズ,ノー・マスターズ)』。Converge(コンヴァージ)のJacob(ジェイコブ)が設立したレーベルDeathwish Inc. (デスウィッシュ)に移籍し、『Isolation(アイソレーション)』路線をさらにブラッシュアップした3作目の『RUST(ラスト)』。大手インディーレーベルのMetal Blade Records(メタル・ブレイド・レコーズ)に移籍し、ブラストビートのドラムや、Machine Head(マシーン・ヘッド)の音楽的要素を取り入れ、ヘヴィーメタルの王道を極めた『Posthuman(ポストヒューマン)』と、スローテンポなEarth Crisis(アース・クライシス)系ニュースクール・ハードコアに、あるときはホラー映画の要素を加え、またあるときは過激にブラッシュアップさせながら、独自に進化させてきた。そのなかでも『Isolation(アイソレーション)』が彼らにとって、この作品が個性を確立した作品であり、彼らのキャリアのなかで異質な作品だということが理解できる。だから今回、『10周年記念エディション』をリリースしたのだろう。

 

追加された4曲は、別の人の手によるリミックスバージョンを収録。この作品がなぜ彼らの最高傑作化というと、Nails(ネイルズ)やFULL OF HELL(フル・オブ・ヘル)に呼応するようなノイズハードコアなサウンドを取り入れているからだ。

 

Earth Crisis(アース・クライシス)系ニュースクール・ハードコアをベースに、格闘家が精神統一しているような静寂なメロディーやノイズなどを取り入れ、オリジナルティーあふれるハードコアなサウンドを展開している。ノイズといってもいろいろな種類があるが、彼らの取り入れたノイズとは、ラジオの電波の悪さのようなノイズや工場の圧縮機のようなノイズ。終始スローテンポで、じっくり聴かせる展開だが、そこには弱気などみじんも感じられない。格闘家のような内省的な闘争心と攻撃的な意識に満ちている。工場の大気汚染や都会の汚さをイメージさせる、屈強な男くささを感じる迫力あるハードコアなのだ。

 

そして追加された4曲は、イントロのみのリミックス。だがそのリミックスがすばらしい。銃声や都会の雑音を混乱した精神世界などをごちゃまぜにしたカオスなノイズと、静寂な魔界の深遠さをミックスさせた曲で、これからの彼らの進むべき方向性を示唆し、可能性を感じさせる4曲だ。