文章:白金犬
翌日、聖十字騎士の上級騎士の制服に身を包んだエルフィーナは、聖十字騎士団事務所の小会議室を訪れていた。
「貴女がリリーナ先輩、ですね?」
肩まで伸びた栗色の髪に、どこか猫を思わせるような切れ長な目をした妖艶な雰囲気を纏った聖十字騎士リリーナは、窓から外の様子をうかがっていた。
エルフィーナが部屋に入ってくると、リリーナは振り向いて微笑みながら彼女を出迎える。
「ごきげんよう、エルフィーナ様。この度は、聖十字騎士団への入団おめでとうございます」
にっこりと、聖十字騎士に相応しい優雅な笑みと所作でもってエルフィーナを称えるリリーナ。こうまで純粋な行為はエルフィーナにとって悪い気がするものではなかったが、あくまでも無感情に瞑目すると。
「ありがとうございます」
と、一言だけ礼を言ってから、再び顔を上げて不思議そうにリリーナの顔を見返す。
「しかし、少々妙ですね。私にリリーナ先輩が待っていると伝えに来たのは、上級騎士の方でした。リリーナ先輩、失礼ではございますが、あなたは平民――下級騎士、で間違いありませんよね? 経験の長さについては存じ上げませんが、下級騎士が上級騎士を使用するようなこと、規律上あまり宜しくないと思います」
誰よりも清廉且つ厳格な聖十字騎士たるエルフィーナは、昨日入団したばかりの新人騎士である立場など厭わず、真っ直ぐとリリーナへと諫言を呈する。
いくら新人とはいえ、エバグリーン家の血筋の令嬢、それにこれだけの迫力を前にすればどんなベテラン騎士でも気圧されるだろう。
しかし、リリーナはその圧力をまるで受け流すようにして、優雅な笑みを浮かべる。
「ええ。私もどうかとは思ったんですが、どうしても彼女が私のために働きたいと言って聞かないので、止むを得ず。エルフィーナ様のお気に触ったのなら、よく言ってきかせておきますよ」
「……」
掴みどころのない返答をしてくるリリーナに、エルフィーナは眼を細くして警戒心を強める。どうも、ただの下級騎士ではないようだ。
「私がここにエルフィーナ様をお呼びしたのは他でもありません。ぜひ、エルフィーナ様の入団をお祝いして、贈りたいものがあるんです」
「贈り物……?」
エルフィーナが切り出すよりも先にリリーナが本題を持ち掛けてくる。
「そのまま、前を向いておいてくださいね」
ニヤニヤと笑いながらエルフィーナの方へ近づいてくるリリーナ。
この得体の知れない先輩騎士へ対して油断は出来なかった。……が、エルフィーナは家名の高等さを笠にして横暴を働くような愚者ではない。
先輩騎士が後輩を祝いたいというのであれば、上級・下級関係なく、ありがたくそれを受け入れるのが当然の礼儀だ。
エルフィーナの背後に回るリリーナが回ると、エルフィーナは首に違和感を覚える。
エルフィーナの首には、黒いチョーカーが装着されていた。
「これは……?」
「ふふ。やっぱり、とてもお似合いですよ」
首にまとわりつく違和感を持ちながら、エルフィーナは小会議室内の片隅に置いてある姿見の中の自分の姿を見ていた。
「……あ」
騎士として、特に女神ファマロスに仕える聖十字騎士などが装飾品などというのは、あまり好ましくはない。とはいっても、禁止されているわけでもないので、団内の騎士にはあまり派手ではない装飾品を身に付けている女性騎士が少なくない。
リリーナから贈られたそのチョーカーも、黒く地味なものでありながら、聖十字騎士の制服やエルフィーナの白い肌とよくマッチしており、控えめなお洒落という点では、とても良いセンスをしているように思えた。
(これ……アルフ、喜んでくれるかなぁ)
つい、そのようなことを考えてしまうエルフィーナ。
「よくお似合いですよ、エルフィーナ様」
思わずボーっとしていたエルフィーナは、そのリリーナの言葉によって現実に引き戻される。リリーナの細い指にうなじをなぞられると、全身をゾクゾクとさせてしまいながら
「こ、このような浮わついたもの、聖十字騎士には相応しくありません。リリーナ先輩のお気持ちはありがたく受け取らせていただきますが――」
エルフィーナがそこまで言った時、彼女はハッと言葉を飲んだ。
何故ならば、背後からリリーナが力強くエルフィーナを抱きしめてきたからだった。
「なっ、何を……?」
背中にリリーナの柔らかく暖かい体温を感じながら、狼狽えるエルフィーナ。そんなエルフィーナの反応を楽しむようにクスクスと笑いながら、その美しい金髪を手で掬うようにするリリーナ。
「ふふ……良い匂い。この時を待ち焦がれていましたよ、エルフィーナ様」
「リリーナ先輩……貴女は一体何を……っひゃ?」
エルフィーナの不意をつく形で、リリーナはエルフィーナのうなじに唇を押し付けてくる。そのくすぐったいような感覚に、エルフィーナはリリーナの腕の中でビクンと身体を反らせる。
「や、止めなさいっ! 何を……!」
そんな制止を求めてくるエルフィーナの言葉など全く意に介さないリリーナは、そのまま後ろからエルフィーナの乳房を下から持ち上げるように、優しく揉み始める。
「っく! な、何の真似ですかこれはっ! 私にこのような真似をして……!」
「ふふふ。貴女を士官学校で見かけたときから目を付けていたんですよ。正に聖十字騎士そのものである、清廉高潔なエルフィーナ様を、女性同士のドロドロとしたセックスにハマらせてあげますから……」
「ふ、ふざけるなっ!」
ぺろりと舌なめずりをしながら耳元でそんな卑猥な発言をしてくるリリーナに、エルフィーナは激昂しながら、彼女を睨みつけようと顔を振り向かせる。
その時、エルフィーナの唇に柔らかい感触が伝わってくる――リリーナがエルフィーナの唇を奪ったのだ。
「っっっっっ!!???」
あまりに突然のことに、思考が追い付いてこないエルフィーナ。最初何が起こったのか分からずに身体を硬直させた後、ようやく現実に頭が追い付いてくると、リリーナの身体を突き飛ばした。
「っきゃ。ふふ、いたぁ~い」
エルフィーナに突き飛ばされたリリーナは、多少顔をしかめるが、どこかふざけたような態度のまま、微苦笑を浮かべる。
対するエルフィーナは、眼に涙を溜めながら、必死に奪われた唇を手の甲で拭っていた。
(く、唇が……アルフのために取っておいたファーストキスが……こんな、こんな……っ! しかも女相手にっ!)
まるで親の仇でも見るような激しい憎悪を込めた目つきで、リリーナを睨みつけるエルフィーナだが、リリーナは全く堪えていないようだった。
「ふ、不潔なっ! この件は王宮の査問委員会に報告させていただきます! 聖十字騎士のままでいられると思わないで下さい!」
くすくすと笑っているだけのリリーナを見ていると、エルフィーナはポロポロと涙をこぼし始める。
(ど、どうしてこんな奴に……アルフのための唇が……ううっ……!)
あまりに唐突に唇を奪われたことが、本当に悲しくて、理不尽で受け入れられなくて、目の前のこの先輩騎士への憎悪がこみ上げる。この衝動のままに、腰の剣を抜いてその身を切り裂いてやりたい――その想いを堪えるだけ精一杯だった。
「クスクス……そんなの、無理よ。貴女は、もう私の唇を味わってしまったもの」
「……は?」
ぺろりと自分の唇を舐めるリリーナ。その薄いピンク色の舌が、やけに妖艶に見えてしまうエルフィーナは、自分が付けられたチョーカーが淡く光るのに気づいていなかった。
「唇に私の柔らかい感触が残っているでしょう? ふふふ。男のごつごつとしたキスなんかと比べ物にならないくらい柔らかい感触が。女同士のキス……気持ちいいんだから」
「……く、来るなっ!」
唇を尖らせ、先ほどの口づけをエルフィーナに意識させながら近づいてくるリリーナ。エルフィーナがつけているチョーカーの光が明滅し始めると、怒りと悲しみで一杯になっていたエルフィーナの唇に、先ほど触れたリリーナの唇の感触が鮮明に思い出される。
(た、確かに柔らかくて……それに、暖かかったけど……)
「もう1回しましょ?」
唇に指を当てて、エルフィーナがリリーナとのキスの感触を思い出していると、すぐ目の前にリリーナの顔が迫っていた。お互いの吐息が吹きかかる程の至近距離だ。
「ん~……」
「や、止め……」
チョーカーの明滅が激しくなると、唇に残るリリーナの唇の感触が強くなっていく。あの甘くて柔らかい感触を思い出すと、エルフィーナはリリーナの身体を突き飛ばすことが出来なかった。
「……ちゅうう」
「んんん~っ!」
そのままリリーナに唇を吸われるエルフィーナ。
今度は不意を突いたものでも、強引なものでもない。抵抗しようと思えば、その余地は充分にあった。しかし、何故かエルフィーナはリリーナの唇を拒否出来なかった。
(や、やだっ! 女同士でこんな……)
同性同士の粘膜接触の嫌悪感に、唇を塞がれたエルフィーナは、ようやくそこでリリーナを突き飛ばそうとするが、そのエルフィーナの両手をリリーナが握ってくる。
「は、離せっ……んんんぅ?」
指を絡め合わせるように両手を握りしめてくるのと同時、リリーナの唇が開き、その舌がエルフィーナの唇をなぞってくる。
キスは唇を触れ合わせる恋人同士の神聖なる儀式――そう信じ込んでいたエルフィーナにとっては、衝撃的なことだった。
「やめっ……き、汚い……んんうっ?」
ねっとりと唇を舐られたと思ったら、突如リリーナの舌が唇を割って入ってくる。エルフィーナの口内を愛撫するように舌でなぞっていくと、舌同士が触れ合う。
「っ……!」
「れろ……ちゅっ……」
口内で逃げようとするエルフィーナの舌を、リリーナは深く舌を突き入れるようにして、決して逃がさない。逃げ場のないエルフィーナの口内で、リリーナがエルフィーナの舌を絡めとる。
「はむぅ……ん……れろ……っ!」
両手を握られたまま、エルフィーナは同性の舌の感触に、身体をビクビクと震わせる。同時に首のチョーカーの明滅が徐々に激しくなっていく。
(し、信じられないっ……し、舌が絡められて……っ……で、でも……なに、これ。とても柔らかくて……不思議な……)
舌が絡め取られて、リリーナの感触を感じている内に、堅く固まっていたエルフィーナの全身が徐々に弛緩していく。両手を握られている指先から、リリーナの細くて暖かい指の感触が伝わってくると、エルフィーナもまるで握り返すようにして力を込めてしまう。
「ふふ、チョロいですね。エルフィーナ様……んむぅ……」
一度唇を離して、頬が赤らんでいるエルフィーナにそう零してから、再び唇を塞ぐリリーナ。舌を差し入れれば、今度は抵抗は見られない。半開きになっている唇から舌を差し込むと、難なくエルフィーナの舌を絡め取ってしまう。
「んっ……んっ……んっ……」
眉間に皺を寄せながら、しかしエルフィーナはリリーナの舌の感触を楽しんでいるように見えた。首のチョーカーが、エルフィーナの内心を代弁しているように明滅するのを見ながら、リリーナは囁く。
「その調子ですよ、エルフィーナ様。さあ、貴女からも舌を伸ばしてくださいな」
「い、ぃや……無理、私……女性同士でなんて……っああ……れろぉぉ」
リリーナが片手を離して、エルフィーナの首のチョーカーを指でなぞる。その際、リリーナの指先が淡い光を放ち、魔力をチョーカーへ込めると、エルフィーナは言葉とは矛盾しながら、おずおずと舌を伸ばし始める。
「んっ……れろ……は、恥ずかしいっ……!」
「いいのよ、エルフィーナ様。ここには私達しかいないんですから……ちゅば……ちゅう」
控えめに舌を伸ばしてきたエルフィーナの舌を吸い出すようにすると、リリーナはお互いの口の外で舌を絡め合わせる。
「はふっ……れろ……んんぅ」
「ちゅ……れろ……れろ……」
何も知らなかったエルフィーナだったが、リリーナの舌の動きに合わせるように、自分からも舌を動かして絡めていく。頬を赤らめて、瞳を閉じているエルフィーナは、まるで助けを求めるようにリリーナの手を握りしめている。
「はうっ……れろ……だ、だめ! 止まらない……怖い……ちゅっ……!」
チョーカーから、何か暖かいものが込みあがってきて、エルフィーナは自分の身体を止められない。リリーナの舌に求められれば求められる程、自分も積極的に舌をからませていく。
「エルフィーナ……目を開けなさい。私を見ながら、キスをするの。ちゅば……ちゅ……」
舌を動かしながら、リリーナは甘く囁く。その声を聞くと、何故かエルフィーナは逆らえない。ぎゅっと閉じていた瞳をゆっくりと開いていくと、舌を絡ませながらリリーナと見つめ合う。
「ふぁ……ぁ……ちゅうう……れろっ……れろっ! ちゅうう……」
リリーナの妖艶な瞳と見つめ合っていると、まるでその中に吸い込まれていくような感覚に陥り、エルフィーナの思考は全て真っ白に染め上げられていく。
エルフィーナも瞳を細めながら、うっとりしたような表情へと蕩けていく。
「ん……ちゅ……そう、もっと唾液を絡めなさい。もっと激しく……ちゅば……ちゅう……そうよ、上手。もっと私を求めて……」
「……んちゅう……ちゅっ、ちゅっ……れろぉぉ……んぐ、ごくんっ……!」
2人は見つめ合いながら、恋人同士のような濃厚な唾液交換を重ねていく。びちゃびちゃと淫猥な音が響き、2人の口からは唾液が垂れ落ちるくらいの濃厚なキスを十数分もの間続けながら、ようやく2人が唇を離すと、唾液の糸が地面に垂れ落ちていく。
「ぷはぁ……はぁ、はぁ……あうぅ……わ、私をどうするつもりなのですか……!」
脳が溶けるような、激しく甘いキスから解放されたエルフィーナは、口の周りをお互いの唾液でべとべとにしながら、リリーナを見つめていた。言葉では気丈に振舞っているが、その瞳は欲情に濡れているのは明らかだった。
「言ったでしょう? 女同士の良さを教えてあげるって」
「っ! い、いやっ……何をっ……?」
リリーナがエルフィーナの制服のボタンに手を掛け始める。しかし既に濃厚な口づけで身体が蕩けているエルフィーナはそれを遮ることが出来ない。身体を震わせながら、なすがままに服を脱がされていく。
「最初に徹底的に女の良さを教えてあげるわ。男なんかじゃ決して満足できない変態に仕上げてあげる。ま、キスはもうそうなっちゃってると思うけどね」
リリーナが妖艶な表情でそう言いながら、エルフィーナの頬から首筋へかけて舌を這わせていく。そして首に付けているチョーカーをペロリと舐め上げると、一際大きく輝いて、何かの力がエルフィーナの中に入り込んでくる。
「っく……! こ、これ……何かの魔術具?」
「ご名答。でも、安心しなさい。これには貴女の嫌がることを強制させるような効力は無いわ。すこ~しだけ素直になれるお手伝いをするだけの道具よ。本気で嫌なら、すぐに自分で外せるしね」
耳元でエルフィーナの耳を舐りながら吐息を吹きかけるエルフィーナは、再び彼女のうなじへ舌を這わせながら、制服をはだけさせて脱がせていく。
「んっ……っふ……い、いや……」
リリーナの柔らかくて官能的な舌の動きが、エルフィーナから抵抗する気力を奪っていく。
「好きよ、エルフィーナ。愛しているわ」
同性同士なのに、何度も囁かれながら、首筋から鎖骨へキスをされていく。するとエルフィーナは身体的にも精神的にも反応してしまい、ビクビクと身体を震わせる。
「っん……や、止めなさい……」
漏れ出る声を、何とか耐えるために指を口に咥えるエルフィーナだったが、リリーナはそんな抗弁など全く無視をする。制服を剥がし、その美しい肉体と純白の下着を見て、熱っぽいため息を吐きながら。
「真っ白くて綺麗ね……でも、貴女には紫とかピンクの派手なレースも似合いそうね。お上品な騎士様が、そういう低俗で下品な下着を身に付けるようになるのも……ふふふ、ゾクゾクしちゃうわ」
エルフィーナと同じように、リリーナも身体をゾクゾクと震わせながら、極めて慣れた手つきで下着のホックを外してブラジャーを取り払う。
すると形の良いエルフィーナの乳房がポロンと零れ出てくる。
「い、いやっ! 見るな……見ないでっ!」
「無理よぉ、こんな可愛いおっぱい。うふふ、いただきま~す」
リリーナは悪戯っぽく言いながら、半開きにした唇を近づけていき、先端の突起物を唇に含む。
「っん! な、なんということを……っふああっ!」
「ん……む……敏感ね。すぐにコリコリに固くなってきたじゃない。ちゅ……れろ……ちゅう……」
リリーナは熟練した娼婦のように、唇で先端部を吸って、舌で転がすように愛撫をする。エルフィーナの反応を見ながら、もう片方の乳首も唇と舌で可愛がりながら、もう片方の乳房は手で愛撫を加えていく。
「っあああ! ど、どうして……これは……エバグリーン家に対しての侮辱以外の何物でもありませんっ! 許さない……っあああ~!」
「へぇ、私の舌で可愛がられてもまだそんなこと言ってられるなんて、本当に真面目な騎士様なのね。まあ、でもすぐに変態になっちゃうんだけど」
身体の反応はともかくとして、言葉では未だに気丈な態度を保っているエルフィーナに、リリーナは乳房への愛撫を続けながら、手をエルフィーナの下半身へと下ろしていく。
スカートの中に手を伸ばし、内腿を焦らすように擦りながら、その手を徐々に足の付け根の方に伸ばしていく。
「っひ! や、止めなさい……この変態っ!」
「あら、今頃気づいたの? そう、私は可愛い女の子大好きな変態なの♪」
エルフィーナの侮蔑の言葉すら、嬉々として受け流すリリーナは、スカートの中でその指で、彼女の最も敏感な部分へと触れる。
「でも、エルフィーナも私以上の変態になるのよ? 私の手で、女の子だ~いすきな、生粋のレズビアンにされちゃうの」
「っひう! や、やだ……そんなところ触らないでっ!」
リリーナはエルフィーナの腰へ手を回して逃がさない。そのまま、エルフィーナの尻肉の感触を楽しむように揉み解す。
「こ、これ以上は本当に止めなさい……貴女、この国で生きていけなくなりますよ……!」
「へぇ~、この期に及んで脅してくる度胸は大したものだけど、涙目じゃ説得力ないわよぉ?」
もはやエルフィーナの言葉などリリーナには全く届いていない。リリーナはスカートの中へ伸ばした指を踊らせて、ショーツの上から優しくその敏感な部分を刺激し始める。
「っん! んんんっ……!」
リリーナの指から与えられる甘い疼きが、エルフィーナの全身に込み上がってくる。エルフィーナは漏れ出る甘い声を抑えるために、再び指をしゃぶるようにして耐える。
「そうやって、甘い声を出している方が可愛いわよ? これから言葉使いはゆっくりと仕込んであげるから、とりあえず手っ取り早く、快楽を知ってしまいましょうか?」
リリーナが次第に指の動きを速く、そして深くしていくと、やがてそこがショーツの上からでも分かる程の熱さと湿り気を帯びてくるのが分かる。
「う、あ……ぁ……わ、私お漏らしを……? どうして……?」
「えっ? 嘘? 本当にオナニーもしたことないの? --ふふふ、思っていた以上のお宝じゃない」
そんなエルフィーナの反応に、リリーナは興奮しているようだった。顔を赤らめて息を荒げ始めると、ショーツの中へと手を滑り込ませる。
「ひゃうっ……!」
「これはね愛液っていって、女の子がもっと気持ちよくなりた~いっていう気持ちなのよ。エルフィーナはエッチで変態なレズビアンだから、これからたくさんこれを出すのよ?」
「い、意味が分からない……あい……えき?」
「そ。まあ、でも変態なエルフィーナはそんな上品で可愛らしい言い方じゃなくて、マン汁って呼ぶといいわよ」
エルフィーナにその意味は分からなかったが、低俗で下品なイメージだけは伝わってくる。自分がそんな言葉を使うはずなど有り得ないと思いつつも、リリーナに囁かれば、本当にそうなってしまいそうな恐怖に、エルフィーナは顔を引きつらせる。
「っあ……っあ! だ、だめ……んんん~~~っ!」
リリーナの指が直接エルフィーナの秘裂を責め始めると、クチュクチュという淫音が響いてきて、エルフィーナの羞恥を煽る。意志とは関係なしに身体の底からこみ上げてくる声を、指を咥えて必死に我慢するエルフィーナ。
「ああっ、すごいわエルフィーナ。その物欲しそうな顔も素敵よ。私の指で感じているのね? でも、我慢なんてさせないんだから」
悦楽に顔を歪めるエルフィーナに興奮しながら、リリーナは指の動きを激しくすると共に、乳房への愛撫も加えていく。
「っくぁぁ……っあ……も、だめ……ああああ~っ! ああああんっ!」
激しく、そして恐ろしい程までに官能的なリリーナの責めに、エルフィーナはついに声を上げてしまう。それは自分でも驚くくらい、今までに出したことのない甘い喘ぎ声だった。
「んっ! も、ダメっ! だめだめだめっ! 何これっ! 身体が飛びそう……アソコが……アソコが、おかしいっ!」
生まれて初めての絶頂の予兆で、目を剥いて身体を痙攣させ始めるエルフィーナに、リリーナは耳を舐りながら囁く。
「いいわよ。イキなさい。私が、生まれて初めて貴女に女の絶頂を教える女よ。私の指で、幸せになりなさいな」
「ひ、ひうっ……はううっ! し、幸せに……ひゃあああんっ! んああああ~~~! も、もう……私っ……!」
身体が、頭がはじけ飛びそうになる。そんな未体験にして強烈な感覚にギュッと身体を固くして絶頂に備えるエルフィーナだったが、彼女が達する前にリリーナが唇を塞ぐ。
「っっっっ!! ~~~っ! !!!!」
舌を絡ませながら唾液を送られて、深いキスと共にエルフィーナは絶頂を迎える。
リリーナの腕の中で、陸に上げられた魚のようにビクンと身体を大きく反らせるエルフィーナ。
尚も舌を絡めてくるリリーナと身体も心も繋がっている感覚になって、エルフィーナは嬉しそうに目尻をトロンと下げてしまう。
「……ぷはぁ。ふう、ごちそうさま♪ どうだったかしら、エルフィーナ? 初めての絶頂は?」
初めての絶頂に脱力したエルフィーナは、そのまま後ろの会議机に背中をぶつけるように倒れると、胸を激しく上下させる。
「き、気持ちひい……こんなの、初めて……♪」
完全に気をやっているエルフィーナから漏れ出た本音に、リリーナは満足そうに微笑む。そして彼女の首筋に付けられたチョーカーを指でなぞると、再びチョーカーは淡い光を帯び始める。
「これは、私と貴女の愛の証。いつ、どんな時も、絶対に外してはダメよ」
聖十字エルフィーナの、百合の快楽に塗れた日々がここから始まるのだった。