11月になりました。
今月のカレンダーは姫路城です。
美しい姫路城には妖怪や幽霊の話も残されています。
よく知られているのは次の2つの物語。
「宮本武蔵の妖怪退治」
羽柴秀吉の義理の兄・木下家定が姫路城主であった頃、剣豪として有名な宮本武蔵は、ひそかにその名前を隠して足軽として奉公をしていました。
その頃、城内では夜な夜な天守に妖怪が出るという噂が広まっており、見張り番の者たちもおそれをなして見張りを勤めることができない状態が続いていました。
しかし、ただ一人武蔵だけが平気で夜の番をしており、それを聞いた家老が、その足軽の正体が武蔵であることを見破り、妖怪退治を命じました。
その夜、武蔵は手に灯ひとつを持って、真っ暗な天守に登ります。
三階にさしかかると、地響きと轟音とともに、突然すざましい炎が起こります。
武蔵が腰の刀に手をかけ、妖怪が現れるかと身構えると、その異変はピタリと止み、あたりはまた何もない暗闇に戻りました。
三階から四階にあがるとまた同じような轟音と炎が起こります。
しかし、武蔵が刀に手を回すと、またピタリと炎とともに音がやみます。
武蔵は構わずさらに天守を登ります。
そして、最上階に座りこみ、妖怪が現れるのを待ちます。
夜も明けようかという頃、どこからともなく武蔵を呼ぶ声が聞こえ、目を開けると、美しい姫が現れ、武蔵に語りかけました。
「私は姫路城の守り神、刑部(おさかべ)明神です。
あなたが今夜来てくれたおかげで、妖怪は恐れをなして逃げていきました。
褒美にこの剣を与えましょう。」と言って姿を消しました。
武蔵の前には白木の箱に入った郷義弘(ごうのよしひろ)の名刀が、残されていたということです。
「播州皿屋敷」
当時の姫路城主、小寺則職は、家臣の青山鉄山の陰謀により、花見の席で危うく毒殺されそうになります。しかし、この企ては則職の忠臣・衣笠元信の
愛人・お菊の通報により未遂に終わります。
その後もお菊は、鉄山の動向を探るため、鉄山の屋敷に侍女として潜入しますが、鉄山の家臣・町坪弾四郎(ちょうのつぼだんしろう)にスパイであることを気づかれてしまいます。
お菊に好意を持っていた弾四郎は卑劣にも、強引に言い寄りますが、お菊は言うことを聞きません。
逆恨みした弾四郎は鉄山が大切にしていた10枚の皿のうち、1枚を隠し、その罪をお菊に着せたうえ、ついにはお菊を庭の井戸に投げ込んで殺してしまいました。
するとその日の夜から、井戸の中から『一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚、七枚、八枚、九枚……』と、皿を数える声が聞えるようになり、人々は弾四郎の屋敷を皿屋敷と呼んだというものです。
江戸時代の怪談「番町皿屋敷」は四谷の番町が舞台になっていますが、この「播州皿屋敷」がもとになっているといわれています。