じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

藤堂志津子「幸運の犬」

2022-06-29 14:27:02 | Weblog
★ 京都の梅雨明けは祇園祭と共に訪れるものだった。それが今年は「しとしと雨」も終盤のバケツをひっくり返したような豪雨もなく、6月にあっさりと明けてしまった。地球がおかしくなってきているのを実感する。

★ 今朝の京都新聞のコラム「凡語」。蘇民将来のエピソードを紹介していた。明日は氷を模した和菓子「水無月」を食べる日。小豆の色は厄払いとか。エアコンなどなかった時代。古の人々のちょっとした癒しだろうか。

★ さて、今日は藤堂志津子さんの「秋の猫」(集英社文庫)から「幸運の犬」を読んだ。他人の男女の仲など興味はないが、藤堂さんの文章に引き入れられた。

★ 主人公の女性は40歳を迎える。若い頃はヤンチャな日々を送っていたが、今の夫と知り合い、彼を支えることに生きがいを感じていた。彼の職業はグラフィックデザイナー。結婚当初は貧乏で、小さなアパート暮らし。彼らはある日、子犬を拾う。たまたまなのか、あるいは何らかの力が働いたのか、それから急に仕事が舞い込むようになった。

★ 夫はこの犬(吉を招いたからキチ坊と名付けられた)が幸運を招いてくれたと信じることにした。

★ それから仕事は途切れることはなく、夫婦は豊かさを手に入れた。しかし、年月は人の心を変える。まだ芽が出ない頃は、彼の才能を信じて励ましてくれる妻をありがたく思っていた夫だが、今はそれを重荷に感じるようになった。才能の限界を感じ始めているからなのかも知れないが、おだてるのではなく、一緒に歩いてくれる人を求めるようになった。

★ 妻の方も変わった。妻という役割よりも夫のファン、夫のマネージャーとして彼を見るようになった。それがあるいは夫にとって重荷だったのかも知れない。夫婦仲は急激に冷めていった。

★ 遂に離婚を決意した二人。妻が(ハッタリ気味に)出した条件は慰藉料5000万円。夫の出した条件は、今後二度と「キチ坊」と会わないこと。両者話し合いが成立。めでたく離婚となったのだが。

★ 男女の仲は難しい。
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