じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

永井路子「黒雪賦」

2022-08-12 21:13:46 | Weblog

★ 中学生の夏休みの宿題、生徒たちを悩ますのは「読書感想文」、「歴史新聞」あるいは「国調べ」、「理科の自由研究」である。

★ 「歴史新聞」は中学2年生の課題。各人が関心のある時代、テーマを設定し、架空の新聞を創るというもの。ネットで調べた資料をまとめたり、絵の得意な生徒は、カラフルな人物想を描いたりとなかなか多彩だ。やり始めたら面白そうだが、テーマを選ぶのが大変そうだ。

★ さて、今日は永井路子さんの「炎環」(文春文庫)から「黒雪賦」を読んだ。梶原景時の物語だ。大河ドラマでは、中村獅童さんが演じられていた。ドラマを復習する感じで、すらすら読めた。

★ 人の運命など、何が幸福をもたらし、何が災いするかわからない。源頼朝は旗揚げしたもの、石橋山の戦いで敗走。追手から身を隠しているところを敵将の梶原景時に発見される。この時、梶原は頼朝一行を見逃した。敵方の侍とはいえ、頼朝にとって梶原は命の恩人となった。

★ いったん房総半島に逃れた頼朝は勢いを取り戻し、鎌倉を拠点とする。梶原は、頼朝に御家人として受け入れられ、壇ノ浦の戦いや義経追討を経て、地位を固めていった。

★ 梶原はどうも頼朝の本心が読めたようだ。彼は頼朝に武士の時代の到来を託し、敢えて汚れ役を引き受けた。

★ 華々しい出世が曇り始めたのは、頼朝の急死である。頼家が2代目の鎌倉殿となると、他の御家人たちが梶原排除に動く。梶原は抗弁することなく、謹慎。やがて鎌倉から追放される。

★ もはや梶原を亡き者とするため、他の御家人たちが兵を送った。梶原は上洛に勝負をかけるのだが。

★ 梶原はなぜ、石橋山で頼朝一行を見逃したのか。梶原には梶原の目算があったのか。それとも天の差配を感じたのか。いったん政権が成立すると権力闘争は世の常。現代でも政治家の嫉妬やっかみは凄まじい。最近は「自分は骨格じゃなかったのか」と愚痴を言って存在感をアピールする政治家もいた。

★ 結局、梶原は権力闘争に敗れたのだが、今もって語られるのは、愚直なほどに一本筋が通っているからだろうか。

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