じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

宮本輝「小旗」

2022-11-01 17:38:53 | Weblog

★ 昨日の夕方、くっきりとした虹が出た。灰色の空を背景に2重のアーチが描かれていた。

★ さて、今日は宮本輝さんの「星々の悲しみ」(文春文庫)から「火」と「小旗」を読んだ。

★ 「火」は、マッチの火を見つめることによって、蓄膿症の不快感を和らげる男の話。物語は、数十年前のまだテレビが珍しく、力道山が活躍するプロレスが大人気だった時代と、作品が書かれた「今」とを行き来する。京阪四条駅がまだ地上にあったところが懐かしい。

★ 「小旗」は、「父が精神病院で死んだ」から始まる。主人公は大学卒業を間近にしながら、就職も決まらず、繁華街をぶらつく日々を送っていた。そんな時、父が死んだという知らせを受ける。

★ この父親は事業を始めては失敗を重ね、遂に姿をくらました。残された母親と主人公の元には悪い筋の借金取りが昼夜を問わずやってきていた。

★ しばらくして、父親が女性と同棲していると知って母親は怒り心頭。そうこうしているうちに父親は卒中で倒れ半身不随に。言葉が通じない苛立ちからか乱暴になり精神科のある病院に収容される。

★ 主人公は父親が亡くなった病院へと向かう途中、律義に小旗を振る男を見かける。往来を整理しているようだが、その姿に気を引かれる。

★ どちらも私小説のような味わいがある。それでいて、暗い色彩を感じる。人生はどす黒く、それでも人は生きねばならない。

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