僕の業務の1つに「新規用途探索」というものがある。
見込みのありそうな用途・面白そうな用途(大体は上層部が思いついたアイデア)に関して、アイデアを具体的な設計に落とし込むお仕事だ。
また並行して、特許調査や試験方法の検討なども行い、製品検討の周辺整備も行う。

これが思った以上に難しい。
要は各課・各グループが持つ製品に手を加えるわけだけど、その製品の原料のスペック・実際の物性・各種特徴などをちゃんと把握しておかないといけない。
これまで「分かっている」と思っていた製品が「分かっているつもりで実は何にも見えていなかった」と分かり、担当者に聞いて回っている日々だ。


実際のところ、どんなに勉強を重ねても、実際に触った人の肌感覚1つに遠く及ばないと痛感している。
各課の月次報告や週報などを読み重ねてスペックや特徴を頭に入れても、いざ実物を触ってみると想像と全く違う。
また、市場規模や価格設定なども、雑誌や新聞のスケールと自社のそれは大きく異なっている事が多い。
自分一人で何とかしようとするのは果てしない遠回りで(しかも結局間違う)、有識者に聞きに行くのがほぼ唯一の正解だと感じている。

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コミュニケーションが苦手だから聞きに行くのを避ける。これは不可能だと心得た方がいい。
企業の研究開発では、自分が扱いようのない製品・原料・装置等々を組み合わせていかねばならず、独力ではいずれ潰れる。

朗報なのは、コミュニケーションが極度に苦手な僕ですら、やろうと思えばそれなりにできている(当社比)ことだ。
コツの1つは「素の自分をさらけ出すこと」だと感じている

僕は吃音持ちで喋り方も挙動不審。素の自分の話し方は、まんまオタクだ。
これが嫌で嫌で仕方が無くて、ナメられないように話し方を飾り、「普通の話し方」に自分を押し込めていた。
しかし最近は、年次が上がった事もあり、少しずつ本来の自分の話し方で喋りかけられるようになってきた。
すると、がぜん話が弾むことに気が付いた。
不思議なことに、相手も僕がオタクっぽい話し方をした方が、なんだか嬉しそうに話をしてくれる。
楽しくなって、本来聞くはずのなかった製品の裏話まで聞けてしまう。それこそが至石となる。

...本筋から逸れてしまったが、研究開発こそ裏表のないコミュニケーションが活きてくると感じている。
自分を飾らない姿勢が、研究対象をありのままに見つめる力に繋がり、製品へのより深い理解へと繋がるんじゃないかと勝手ながら考えている。