ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

開田高原の天の川

2021-05-05 20:50:57 | 風景写真/星

 開田高原の天の川を撮ってきた。

 開田高原の天の川は、2019年5月5日に天の川、2021年3月20日には天の川アーチを撮影し、本ブログ記事「開田高原の星空(天と地の融合)」に掲載しているが、今回、再度撮影をしてきた。
 東京都は新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言中であり、不要不急の外出自粛と都外への移動を控えるよう要請されており、この遠征日以外の休祭日は、当然のことながら自宅から出ることはなかったが、この時期だけに発生する昆虫の「発生のメカニズム」を調べることを主目的にし、天の川撮影は空き時間のついでである。昆虫の「発生のメカニズム」は、ライフワークの「ホタルの研究」に関連し、データを得るために発生状況を実際に見る必要があった。
 緊急事態は医療の現場であり、感染予防は医療を守るための社会的責任であり、個人の行動は今や自己責任では済まないが、感染の最大要因は「3密」と「複数人での会食とその場所」であると言われているから、感染していない者が、車で移動し、感染の有無が分からない他人との接触を避ければ、自身が感染することもなく、感染を拡大させることはないと思う。エビデンスのない自身の都合と勝手な判断によるもので、言い訳がましいと思われるだろう。また「私は夜の撮影すら我慢している」と自粛警察から更に厳しいコメントを頂くかもしれないが、身内や知り合いからの助言や意見はともかく、SNSで匿名の他人からとやかく言われる筋合いはない。この遠征が感染の危険性があるという科学的根拠もないので、心に手かせ足かせを付けたまま実行した。
 昆虫の発生メカニズムに関しては貴重な観察とデータが得られた。本記事では、開田高原の天の川について、嘘偽りなく記したい。

 開田高原は、長野県木曽町にある標高が1,100~1,300mの高原で、光害が少なく星の観測や撮影に適した場所である。開田高原はどのくらい暗いのであろうか。
 インターネットの光害マップで見ることもできるが、美しい星空を撮影する場合は環境省が2020年の夏に実施したデジタルカメラによる夜空の明るさ調査の結果を参考にすると良い。全国各地の調査参加者により撮影された天頂付近の星空の画像データを環境省が画像解析によって分析し、その結果を夜空の明るさが客観的に評価できる数値「等級(mag/□"):(マグニチュードパー平方秒角)」で公表している。評価にあたっては、国際ダークスカイ協会による金銀銅の分類における星空の見やすさに関する客観的な評価部分が参考にされている。
 「等級(mag/□"):(マグニチュードパー平方秒角)」は、天頂付近の天空の写真上で 星が存在しない背景の明るさ(等級、mag)を単位平方秒角あたり( ”)で示したもの である。言い換えれば、縦横が角度 1 秒の範囲の空からやってくる光の量が何等級の星の輝きに相当するか、という値になる。したがって、値が大きいほど夜空が暗く星が見えやすいことを示している。都市部では17~18程度で天の川は全く見えない。19~20でぼんやり見えるくらいであり、21を超えると天の川の複雑な構造が確認でき、星団などの観測も容易になる。
 では、調査結果から開田高原の数値を見てみると、今回撮影した木曽馬の里は、21.78mag/□"、星景撮影の実績から星が良く見えると思っていた乗鞍高原は、21.79mag/□" であった。ちなみに日本全国で一番数値が高いのは、与論島の21.98mag/□" である。調査にはなかったが、宮古島も私の経験から数値が高いと思う。乗鞍高原では8月に星空を撮っているが、横たわる夏の天の川は未撮影なので、天候条件が合えば撮りたいと思う。

 5月3日の16時に自宅を出発し、最寄りの中央道・国立府中ICから乗り、甲府昭和ICで降りて、あとは国道20号線を走り諏訪の手前から152号線で高遠まで、そして361号線で木曽の開田高原を目指した。このGW期間中は、高速道路のETC休日割引が適用されないため、高速道路料金を少しでも節約するための選択である。途中、コンビニエンスストアに寄り、その日の夕食と翌日の朝食を購入。この店員2名が、本遠征における唯一の見知らぬ他人との接触である。
 現地には、22時到着。車内で待機しながら遅い夕食(おにぎり3つ)を済ませ、窓から空を見上げると全体に雲がかかって星が見えない状態。GPV気象予報では、23時以降は雲が流れて快晴になっていたので、そのまま待機していると、予報通りに雲が流れて行った。
 23時に車の脇にカメラをセットし撮影を開始。今回は、今までとは違う設定で撮影した。露出はマニュアルにし、絞りはF2.8の開放。シャッタースピードは25秒。ISO感度は2000に設定した。露出不足にならず、ノイズもある程度抑えられ、尚且つ広角17mmレンズで星を点に写す限界の値である。星の色を出すためにソフトフィルターを付けて、レリーズのシャッターボタンをロック。カメラは連写モードになっているので、レリーズのシャッターボタンを解除するまでタイムラプス動画用に何百枚も撮ることが出来る。撮影中は、再び車内で待機である。
 翌4日は、午前1時半頃に月齢21.6の月が昇ってくるので、それまでの撮影である。条件さえ良ければ、ゴールデンウィークにピークを迎える流星群「みずがめ座η流星群」も楽しめるが、放射点が地平線上に昇ってくるのが午前1時過ぎで月と一緒。地平線の上下数度では、流星はまったく見えないので仕方ない。8月の「ペルセウス座流星群」は条件が良いので期待したい。
 午前0時半を回ったのでカメラの様子を見てみると、何とソフトフィルターが曇っている。気温は1℃。湿度が高いこともあり、曇ってしまったのである。連写はそこまでにし、一旦フィルターを外して曇りを拭き、あとは時間まで場所を変えながら数枚撮影して終了した。撮影後は車中泊し、帰りは中央道伊那ICから乗って帰路に就いたが、小仏トンネル手前10kmの渋滞。夕方には25kmに伸びていたようだ。私も要因の一員だが、車での外出組が多いことに複雑な気持である。

 以下の写真は、今回撮影したソフトフィルターを付けていないものと付けた画像を掲載した。1枚目には流星が写っているが、撮影時間からみずがめ座η流星群ではない。ソフトフィルターを付けた画像では、天の川に大きなS字型で横たる特徴的な形をしている「さそり座」やデネブ・アルタイル・ベガの3つの星を結んで描かれる大きな三角形をした夏の大三角も捉えることができた。ちなみに、さそり座のα星は赤い色をしたアンタレスと呼ばれており、夏の大三角を構成するベガとアルタイルは、七夕の伝説における「おりひめ(織姫)」と「ひこぼし(彦星)」である。
 タイムラプス動画は、3月20日に同じ場所で撮っていたものと併せて編集したものを掲載した。

参考

  1. 環境省「令和2年度 夏の星空観察 デジタルカメラによる夜空の明るさ調査の結果について」
  2. Sky Brightness Nomogram", http://www.darkskiesawareness.org/nomogram.php,

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

開田高原の天の川の写真

開田高原の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル撮影 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:長野県木曽町/開田高原 2021.5.04 0:51)

開田高原の天の川の写真

開田高原の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / マニュアル撮影 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:長野県木曽町/開田高原 2021.5.04 0:56)

開田高原の天の川(タイムラプス動画)

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