ホタルの独り言 Part 2

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ノハラボタル(千葉県大多喜町で発見)

2022-07-06 17:18:15 | その他ホタル

 ノハラボタル Pyropyga alticola Green, 1961 は、ホタル科(Family Lampyridae)ノハラボタル属(Genus Pyropyga)で北アメリカ原産のホタルであるが、日本に帰化し、関東各地で確認されているが、このほど知人の皆川みちる氏が千葉県大多喜町松尾の西畑川沿いの畑地において本種を発見し、スマートフォンにて撮影している。

 ノハラボタルは陸生のホタルで、卵、幼虫、蛹は発光するが、成虫は昼行性でほとんど発光しない。生態の詳細は分かっていないが、発生は年2化で、その他はオバボタル等の陸生ボタルに似ていると思われる。

 ノハラボタルは、1983年に多摩川六郷橋緑地(東京都大田区)で採集された1個体が文献上の最初の採集記録と思われる(金子 1997)。この標本に基づき、佐藤正孝博士がPyropyga属の1種であることを同定した(川島 2014)。1986年に深津武馬が大井埠頭(東京都大田区;現 東京港野島公園内)で採集し、その後、大田区以外では1993年に荒川区東尾久から(田悟 2007)で見つかり、東京都以外では1994年に埼玉県越谷市東町(木元 1998)、1997年に神奈川県川崎市(新多摩川大橋下流部)(雛倉 2008)、2004年に千葉県流山市小屋(田悟 2007)、2012年に茨城県龍ヶ崎市(小貝川河川敷)(大桃 2013)、2013年に栃木県足利市(渡良瀬遊水地)(大川 2013)などで見つかっており、その他の地域でも報告がある。
 今のところ東京、埼玉、神奈川、千葉、茨城、栃木の関東6県に限られているようである。ただし、これまでの記録は多摩川、江戸川、荒川など河川の近辺であり、河川敷に沿って分布を拡大していると思われていたが、今回の千葉県大多喜町では、河川沿いではあるものの、大きな川ではなく河川敷もない。そこに生息しているのかどうかは不明で、人為的な放虫の可能性もない訳ではないが、千葉県の内陸部での発見は初めてであるので報告したい。

参考文献

  • Kawashima, I., 2018. External characters of the naturalized species, Pyropyga alticola Green, 1961 (Coleoptera: Lampyridae: Lampyrinae: Photinini) settled in the Kanto Plain, central Honshu, Japan. Japanese Journal of Systematic Entomology, 24(1): 67-72.
  • 金子義紀(1997)大田区のコウチュウ目.大田区自然環境保全基礎調査報告書 大田区の昆虫 p 136.
  • 木元達之助(1998)コクロオバボタルの採集例.Coleopterists’ News 121: 15.
  • 木元達之助(1998)「コクロオバボタルの採集例」の訂正.Coleopterists’ News 124: 11.
  • 後藤好正、川島逸郎(1998)東京都多摩川河川敷で記録された帰化ボタル.全国ホタル研究会誌 31: 27.
  • 田悟敏弘(2007)ノハラボタルの発生状況等について.寄せ蛾記 127: 38-40.
  • 雛倉正人(2008)川崎市のノハラボタル.神奈川虫報 162: 24.
  • 大桃定洋(2013)コウチュウ目.茨城県自然博物館総合調査報告書 2012年 茨城県の昆虫類および無脊椎動物の動向 p 22-28.
  • 大川秀雄(2013)渡良瀬遊水地でノハラボタルを採集.インセクト 64(2): 158.
  • 川島逸郎(2014)名も無き渡航者 "Pyropyga(ピロピガ)".神奈川県立生命の星・地球博物館 特別展 「どうする?どうなる!外来生物 とりもどそう私たちの原風景」 展示解説書 p 107-108.
  • 大川秀雄(2017)足利市渡良瀬川のノハラボタル.インセクト 68(2): 131-132.
ノハラボタルの写真

ノハラボタル(撮影:皆川みちる氏/撮影地:千葉県大多喜町松尾 西畑川沿いの畑地 2022.6.18)

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