終戦の日 | おおとり駆の城日記

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子供の頃からお城好き 今までに巡ったお城の感想 その他どうでもいい趣味のことなどあれこれ綴っていきます

今日は75回目の終戦の日です。

日本人にとって、決して忘れてはいけない、わずか70数年前にあった愚行と悲劇に思いを馳せ、鎮魂と内省の想いを胸に刻む日です。


太平洋戦争末期の1944年11月以降、アメリカ軍による国内都市部への空襲が本格化し、死者は約56万人、負傷者は約30万人に達したといわれています。
爆撃の対象となった市町村は800以上に及び、都市機能は失われ、建造や文化財は多大な被害を受けました。その中には、多くの城も含まれていました。

日本の主要都市は県庁所在地に限らず、そのほとんどが江戸時代に藩の政庁が置かれていた街です。
都市が空襲を受ける=城が被害にあうのはある意味避けがたいことでした。
また、明治以降、地方の巨大城郭には陸軍の施設や軍事工場などが置かれていたことも空爆を受けた理由の一つです。


空襲の被害としてよく語られるのは、やはり城のシンボルである天守ですが、水戸城、名古屋城、大垣城、和歌山城、岡山城、福山城、広島城の7つの城の天守が、空襲により焼失・倒壊しています。
これらはすべて戦前の旧国宝に指定された建物でした。
また天守ではありませんが、旧国宝の建造物としては仙台城の大手門と隅櫓、伊予松山城の天神櫓など11棟、宇和島城の追手門なども被災しています。


1945年5月14日未明 焼夷弾爆撃により炎上する名古屋城天守


被災した城の中でも、全壊といえるほどの被害を受けたのが首里城と広島城です。


1945年3月、南洋諸島や硫黄島で日本軍を破り、日本本土に迫っていたアメリカ軍は次の標的を沖縄に定めます。
日本軍は首里城に地下壕を築き、これを司令部として上陸してきたアメリカ軍に反抗。それに対し、アメリカ軍は5月25日から3日間にわたり、軍艦ミシシッピをはじめとする戦艦からの砲撃を開始。
首里城攻撃を含むこのときの艦砲射撃は、「鉄の暴風」と表現されるほど凄まじいもので、首里城は正殿や守礼門をはじめほぼすべての建物・城門が破壊され、わずかな石垣が残るのみとなりました。
同時に、歴代琉球国王の肖像画をはじめ、貴重な歴史資料が失われてしまいました。

先日のNHKニュースではこの首里城地下の塹壕に初めてテレビカメラが入った様子が報道されました。


そして8月6日8時15分、人類初の原子爆弾が広島に落とされます。
原爆の投下目標は、広島城から900m程度しか離れていない相生橋だったといわれています。広島城内には天守のほか江戸時代以降の現存建造物も残されていましたが、爆風によってことごとく倒壊してしまいます。
他の多くの天守は焼夷弾によって焼失したのに対し、広島城天守は倒壊こそしましたが、意外なことに炎上はしなかったのです。
それらの部材は周辺の住民らによって持ち去られ、バラックの建材などに使われたといわれています。


投下された原爆の爆風により倒壊し瓦礫の山となった広島城天守


現在は世界遺産にも登録されている姫路城も7月3日の姫路空襲では爆撃を受けましたが、大天守や西の丸に着弾した焼夷弾はことごとく不発に終わり、建造物は奇跡的に無事でした。
この姫路空襲は市街地の40%が焼失するほどの大きな被害でしたが、焼け野原の中、空襲を耐えしのいだ姫路城天守を見て、多くの市民が涙したといいます。


この姫路城の例もそうですが、現存天守の中には幸運により被災を免れた城もあります。例えば、高知では7月4日未明に夜間爆撃が行われ、内曲輪内で火災が発生しましたが、本丸に建つ現存の天守と御殿は無傷で残りました。また、彦根城では、8月15日に空爆が予定されていたといわれていますが、その前日に日本がポツダム宣言を受け入れ無条件降伏が決定したため、直前でこの日の爆撃は中止されたとの秘話があります。


戦後の昭和30年〜40年代には城の再建ブームが起こり、焼失した6つの城(水戸城を除く名古屋、岡山、和歌山、大垣、広島、福山)は二度と燃えることがないよう願いを込めていずれも鉄筋コンクリートで復元されました。また、それ以外の城や櫓も鉄筋コンクリートあるいは近年は木造で再建されている天守が数多くあり、史実になかったいわゆる模擬天守も含めれば現在その数は全国で100以上とも言われています。

現在残る多くの城はもともと戦国時代から江戸時代にかけて築かれた軍事施設であり、戦いのためのものですが、現在では観光スポット、あるいは地域のランドマーク、我々のような城マニアが歴史を体感することができる聖地として、戦争とは無縁の平和のシンボルとしての役割を果たしています。


二度と理不尽な理由でこれら貴重な文化財を自らの手で破壊することがないよう、次の世代に残し伝えていくことが現代を生きる我々の責任だと思います。



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