旧客の内装が…
古くから海運の要衝として栄え、今なお当時の建物が残る北九州市の門司港エリア。
「門司港レトロ」として現在では多くの方が訪れる観光スポットとなっています。
そんな門司港の中心部から少し離れ、関門橋にほど近い和布刈地区。
そこに2両の車両が保存されています。
1両はEF30 1。関門トンネル区間用に作られた交直流電気機関車の試作車です。
そしてそれに繋がれているのがいわゆる「旧客」のオハフ33 488。
どちらも貴重な保存車です。
そんな和布刈地区の保存車が鉄道ファンの間で(炎上気味に)話題となっています。
というのも2024年5月、オハフ33 488を改装しカフェ「めかりテラス」がオープンしたのですが、
その改装の仕方が「残っていた座席を含めほぼ全ての内装部品を撤去し、全く面影が残らない」形となったため。
鉄道ファンとしては現役になるべく近い形で残してもらいたいというのが自然な感情のため、全く内装が変わってしまったことに複雑な気持ちを覚える方が多いのは無理からぬことです。
個人的にも、やはり大幅に変えてしまうのはもったいない…という気持ちなのが正直なところ。
ただ、もしかしたらカフェの運営者は(鉄道ファンではない)一般向けとしてこの店舗を運営しているのかもしれません。
旧客の内装より改装後の内装のほうが好みと感じる一般客の方が多い可能性もあります。
いずれにしても1回見に行ってみたい、そう思いました。
ということで、今回は現状のオハフ33 488がどうなっているのか、カフェにどれくらいの方が訪れているのか、そしてカフェで提供されているという噂の「磯が薫るソーダ」とはいったいどんなお味なのか…
実際に見てきたのでご紹介します!
久しぶりに門司港まで
2024年5月25日、まずは特急ソニックに乗って小倉へ向かいます。
今回使うのはこちらのきっぷ。
「ネット限定!お買い物往復きっぷ」です。
博多~門司港間特急普通車自由席の往復で3100円、しかも1000円分のアミュプラザ小倉・博多で使える利用券が付いているので実質2100円(片道あたり1050円)。
博多~門司港間の片道普通運賃は1500円なのでなんとそれよりも安いという恐ろしいきっぷです。
特急ソニック7号に乗って小倉へ。
小倉で普通列車門司港行きに乗り換え、門司港に到着しました。
門司港に来るのはかなり久しぶりですね。
潮風号でめかりテラスへ
ここから乗車するのは北九州銀行レトロライン「潮風号」。
鹿児島本線貨物支線と田野浦公共臨港鉄道を利用して運行開始されたトロッコ列車です。
乗車するのは10年ぶりくらい?
もと南阿蘇鉄道のちいさなディーゼル機関車にもと島原鉄道のトロッコ車両2両が挟まれたかわいい編成。
乗車して右側を見ると、ビニールシートで覆われた土山。
ここには最近旧門司駅の遺構が眠っていることが明らかになったそうです。
10:00、警笛とともに列車は発車。
10分間の短い列車の旅のスタートです。
列車は草生した線路の脇を走っていきます。
実はここは鹿児島本線貨物支線と田野浦公共臨港鉄道の境界駅だった(貨)外浜駅の跡。
外浜駅の案内こそありませんでしたが、車内放送でもここが昔貨物線だったことが紹介されていました。
列車は海沿いへ。
関門橋の姿が見えてきました。
ノーフォーク広場を発車し、列車は和布刈トンネルに入ります。
このトンネルが潮風号のハイライト!
トンネルに入るとブラックライトで関門海峡の魚たちが天井に映し出されました!
天井に絵が映し出されるのは北斗星のA個室ロイヤルの一部や伊豆急行のロイヤルボックスで行われていたようですが、私はどちらも乗ったことがありません。
貴重な体験ですね。
トンネルを抜けた列車は、件の旧客を横目に見つつ、終点の関門海峡めかりに到着しました。
関門海峡めかり駅は九州最北端の駅だそうです。
いよいよ対面!オハフ33 488
駅から降りてすぐ、今回の目的地・めかりテラスにやってきました。
冒頭紹介したように、ここにはEF30 1とオハフ33 488の2両の車両が保存されています。
EF30の方には手が入っていないようなので、まずはオハフ33 488の外観がどうなったのかを見ていきましょう。
こちらは妻面。
残念ながら塗装が傷んでいるのと、尾灯が片方無くなっているのがわかります。
今回の改修ではこの部分は直されることがなかったようです。
そして、外観上一番目立つ「P」の看板。
この看板を取り付けた支柱はデッキ部分に固定されていました。
続いては側面。
こちらも少し塗装が剥げかかったところがあります。
一番目立つのが窓を埋めて取り付けられた排気ダクト。
反対側の側面。
窓枠が青い「P」と書かれたなにかで埋められています。
ランプが置いてあるのがなんとなく食堂車に見えなくもないです(?)
床下には新たに取り付けられたと思われるパイプ。
キッチンがあらたに設置されたのでその水回り用でしょうか?
車体から吊り下げられているように見えます。
個人的に一番気になったのがEF30と連結されている側の妻面。
ここはかなり腐食が進んでいるようですね…
中に潜入!
次はいよいよ中に入っていきます!
入口に掲げられている漫画によれば、門司港のいいところは景色と「文化。明治から昭和の建物やお祭りが残っているから」だそうです。
一歩入ると、入口はかなりくたびれているものの、レトロ感が残っています。
尾灯があった場所には穴が空いていました。
そして、扉をくぐると…
…お客さんめっちゃいる…!
ということで、人が捌けた時点での写真を貼ると…
こんな感じ。
事前情報通り、旧客の座席や内装は全部取り払われ、白を基調とした内装。
左側にパンがいっぱいに並べられ、右にテーブル、奥には注文カウンター、奥には厨房が備えられているようです。
入口側には銘板が貼られていますが…
今回大規模に改造されているので、もう1枚追加したほうがいいような…
窓際に並んでいるパンは美味しそう…!
こういうパン屋さんの内装、個人的には好きです。
座席からは関門海峡の美しい景色を眺めることができます。
ここで…
個人的に一番気になっていた「磯が薫るソーダ」を飲んでみることに!
北九州市の市議さんが紹介されていてちょっと気になっていたんですよね。
それがこちら。
見た目は普通のソーダですが…
飲んでみると…
…………………めっちゃワカメ。
美味しいかどうかで言うと…………話のタネにはいいのかなと。
奥の厨房で作っているパンもいい香りが漂ってきて美味しそうでしたが、朝ご飯食べてきたので…
ということで、今回はめかりテラスのオハフ33 488の現状をご紹介しました!
北九州銀行レトロラインの終着駅の隣りにあるということもあり、お客さんの入りはけっこう良いようでした。
インバウンドや家族連れも多く、外観が列車ということもあって子どもたちに人気な様子が伺えました。
現代風に改装されたこともあって過ごしやすそうではあります。
中でパンを手作りされているようで、出来立てが味わえるというメリットもありますね。
その一方で……やはり、内装を大きく変えてしまったのが個人的には少し残念に感じました。
(ただ、線路を現役で走っている状態でこの改装が施されたら…個人的には乗りに行ったかもしれません。レストラン列車好きなので)
そして、外観がかなりくたびれているのがちょっと気になりました。
潮風が当たる海辺にあるので、補修にはかなり手間がかかるとは思いますが、ぜひ定期的なメンテナンスをお願いできたらと思います。
国鉄分割民営化の時期を中心に、譲渡された客車が改造されて飲食店となった例は枚挙にいとまがありませんが、解体が進み、現在ほとんど残っていないのも事実です。
めかりテラスのオハフ33は末永く保存されてほしいと願います。
それでは。