カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

ブッダは3人いる ー 仏教概論(9)学び合いの会

2022-12-21 10:10:48 | 神学


Ⅶ 日本仏教の各宗派

 ここでは日本仏教の各宗派の誕生の背景とその教義の特徴が紹介された。仏教関連の書物では、仏教の説明は、宗派の説明が中心になるか、教祖の説明が中心になるか、に分かれるようだ。思想別に見ていく(例えば華厳系、密教系、浄土系など)こともあるようだし、教義別で見ていく(例えば華厳経系、般若経系、法華経系など)こともあるようだ。仏教学界でどれが主流なのかは知らないが、わかりやすいのは宗派別と教祖別の説明だろう。

①宗派別の説明

 配布された第一の資料は「日本の宗教史」と題されていた。出典は不明だが、よく見る整理の仕方だ。「神仏習合→国家神道→政教分離」 と言う流れでの歴史的説明が中心だった。

【日本の宗教史】

 

 こういう説明の仕方はあまりにも教科書的で、内容に踏み込んだ議論が同時になされているケースが少ない印象を受ける。たとえば、政教分離政策の評価だ。

 現在、旧統一教会(かっては統一協会とも言った 世界平和統一家庭連合 Family Federation for World Peace and Unification)の解散命令問題が大きな問題になっているが、議論の視点は常に政教分離論だ(1)。だが、この政教分離論のために、われわれはいまでも先の戦争で亡くなった死者に国民としてどのようにして感謝と敬意と哀悼の意を表して良いのかがわからないままになっている(2)。こういう図表を見てなるほどと感心しているわけにはいかないだろう。旧統一教会問題は政教分離論だけではなく、カルト問題、テロ対策、霊感商法問題など他の角度からも議論が続いているが、政教分離論が戦後論で果たした役割の評価はまだ決着がついていない。

 配布された第二の図表は「日本仏教の宗派の流れ」と題されている。これもよく見る図表だが,出典はわからない。日本の宗教の議論は文化庁の「宗教年鑑」を参照するのが基本だが、ここには歴史記述は少しはあるがほとんどが宗教統計だ。届け出中心の宗教統計の信頼性を論ずる議論もあるが、我々素人が各都道府県単位まで降りて集計し直すのは無理だろう(3)。

【日本仏教の宗派の流れ】

 

 こういう分類の仕方(奈良・天台・真言・浄土・禅・日蓮)が一般的なのかどうかはわからないが、宗教年鑑は「南都六宗・天台宗系・真言宗系・浄土宗系・浄土真宗系・禅系・日蓮宗系」という分類で、寺院数と信者数を示している(4)。年のために表を載せておこう。

【各宗派の寺院数・信者数一覧】

 

 

 

 各宗派の信者数や寺院数の一覧はこの宗教年鑑に詳しく載っている。ネットで簡単に見ることができるので便利だ。

②教祖別の説明

 教祖(宗祖)別の各宗派の比較や説明もよく見られる。参考までに宗教年鑑の表をみてみよう。

【主な宗派の概要】

 各宗派の宗祖・総本山・本尊・経典・信者数が記されている。なにか受験勉強時代を思い起こさせる図表で、あまりおもしろみはない。なぜこれほどまでに日本仏教の宗派は多様なのか。各宗派の違いをあれこれ並び立てられても、素人の我々にはさっぱりわからない。

 この三回にわたる仏教概論を通してわかったのは、大乗仏教は結局ブッダ信仰であり、どの宗派でもブッダへの信仰では共通している。ただ、ブッダには3人いる、と考えたほうがわかりやすいのではないか、ということだ。ブッダとは、釈迦であり、阿弥陀仏であり、大日如来である。顕教ではブッダは釈迦であり、密教では大日如来であり、浄土信仰では阿弥陀仏である、と理解したい。歴史的背景は別として、ブッダをどういう角度から理解するかで、ブッダは、釈迦になり(覚り)、大日如来になり(宇宙)、阿弥陀仏になる(救い)、と言いたいところだ(5)。



1 カトリック教会は1980年代からすでに統一教会はキリスト教ではないと断言している。
2 いわゆる戦後論だ。たとえば橋爪大三郎氏は近著でこう述べている。「この結果、どうなったか。戦争の死者に敬意を表すことが出来なくなった・・・何のために死んだのか、その行為が価値あることなのか、それがいまあるネイションとどういう関係にあるのか、を語る言葉がない」(『アメリカの教会』光文社 2022 453頁)
3 キリスト教年鑑にも旧統一教会の情報は載っていない。なお、旧統一教会は、令和4年版の宗教年鑑では、「世界統一家庭連合(旧:世界基督教統一神霊協会)」として「キリスト教系」の「単位包括団体」の欄に載っている。尚、宗教法人法の包括団体とは教派・宗派・教団などのことで、個別の神社・寺院・教会などは被包括団体と呼ばれているようだ。たとえば、カトリック中央協議会は包括団体で、各小教区や修道会は被包括団体になるようだ。なお、これは宗教法人法の話で税法上の位置づけとは別らしい。たとえば、教会維持費(月定献金)は宗教法人だから非課税だが、教会が領収書を発行すると(納入袋に印鑑を押すと)課税されてしまうようだ。そこで、教会維持費は振り込みで、という教会が多いようだ。小教区が信徒から徴収する駐車場代金も税法上難しい問題をはらんでいると聞く。この種の細かい話は各小教区の教会委員会の役員方が詳しいらしい。
4 ちなみに、この図表では新宗教新新宗教は「日蓮系新宗教教団」のカテゴリーに入っているように見える。さらに言えば創価学会はかっては日蓮宗系、なかでも日蓮正宗系といわれたが、現在は日蓮正宗から離れ、独自の教団として活動しているという。創価学会の本尊は日蓮、教義は立正安国論、お経は法華経の方便品と如来寿量品だという。
5 立川武蔵 『ブッダを訪ねて』 集英社 2014 

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