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まだぽつぽつ外出が出来ていた昨年、移動時に読んでいたのがこちら。
家名田馨子著 「パリ16区美しく生きる人の１２か月」
パリ在住のコンサルタント、家名田馨子さんのエッセイです。
慶応大学卒業後、IBMの広報担当を経て渡仏。パリ政治学院に留学後、ラグジュアリーブランドのコンサルタント業務やダイナーズクラブの会員誌での執筆を皮切りに、現在では芸術・建築やブランドの分野でのコラム執筆や講義をおこなっておられる方です。
本書では、著者の住むパリ、特に邸宅のある高級住宅地の16区での暮らしを、12ヶ月の章に分けて、それぞれの四季折々の文化都市パリの習慣や行事などを織り交ぜて紹介しています。
その中では、著者が小学生時代に、パリに駐在していたお父様との思い出や、留学時代の上流社会の人々との華やかな社交、そして異国に出たからこそ見えた日本人や日本観などにも触れられています。
パリ政治学院時代のルイヴィトンでの実施研修や、ロンシャン競馬場や舞踏会での心温まるエピソード、オートクチュールコレクションのショー、夏のバカンスやスイスのレマン湖で開かれた友人の結婚パーティでの出来事など、どれも描かれている話は、華やかで夢のようでありながらも、:どこか知らない世界をめいいっぱい吸収させてもらっている気持ちになります。
きらびやかで世間離れした世界のお話しですが、決して鼻持ちならない印象でないのは、エピソードの一つ一つに筆者の愛、見識の深さと知性が感じられるから。階級社会のフランスの、あまり焦点の当てられなかった上流社会の人々の誇りと心意気を改めて感じさせられました。
何度も本文の中で登場してくるフランス人独特の、「趣き（リュクス）」、高い美意識は、どこかいつも勇み足で合理的なものが人生や暮らしを快適にすると思いがちな私たち日本人にも、一石を投じる内容です。
実際の足で外の世界に向かうのが難しいこの時期、せめて本の中から、ゆったりと華やかで美しい世界を堪能してみてください。
