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「すみません。先生は只今席を外しておりまして…。あと一時間程もすれば、お戻りになられると思います。」

 

と、笑顔で話され、健二はオフィスで待つ事にした。予約も取らずに訪ねたものだから仕方がない。

世間話をするわけでもなく沈黙の時間が流れたが、坂崎という事務員はひたすらゲージに入ったハムスターをつついたり、デスクを歩かせて戻しては話しかけ、自分の世界に入り込んでいる。

 

 

暫くすると席を立ち、いきなり出て行ったかと思えば、いい匂いのする紙袋を下げて戻ってきた。

 

(先生もそうだが、この女もどこか随分と子供っぽい)

 

 

紙袋を先生のデスクにそっと置くと、またハムスターに話しかけるのだった。順番にゲージから出たハムスターのうちの二匹は特によく太っていて、いちごちゃん、茂くん。と呼ばれている。

 

 

彼等の散歩をやめ、デスクの上の木屑を片付けると彼女は引き出しからヒモのような物を出した後、パソコンの横に置いた。

チラリと時計を見たすぐに後のことであった。

 

 

 

彼女が運んできた珈琲が半分になった頃、勢いよくバンとドアが開く。デスクの上の紙袋を確認した後、健二を見つけたようだ。

 

 

「欽堂くん。まってたよぉ」

 

 

ヘラヘラ笑う彼を見ると、これから打ち明ける罪も許されたような気がした。

 

 

 

「すみません、いきなり訪ねてしまって。実は先生に謝らなければならない事があるんです。前回の事なのですが…」

 

 

 

「じゃあ、中で話そうかぁ」

 

 

 

 

 

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