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【将棋ウォーズ自戦記】正確に緩める~強い下駄の預け方

2022-01-18 02:17:00 | 将棋ウォーズ自戦記
 飛車先を早く決めてきたので向かい飛車にした。相手は角道を開けず銀を上がった。こちらは様子をみつつ囲っていく。相手は角を中央に運び美濃に組んできた。玉のこびんを開けずに美濃に組みたいというのは、振り飛車へのリスペクトだろうか。

 僕は穴熊に組んだ。5筋の歩を切り銀を進出させた。相手は銀桂を活用する。僕は右四間飛車に転回して縦の攻めを狙った。穴熊の魅力の1つは飛車の活用の広さにもあると思う。相手は角頭を攻めてきた。僕は構わず飛車先から突っかけた。取り込みが利いて、それから角を引いた。すると相手は飛車取りに角を飛び出してきた。僕は構わず桂取りに角を飛び出した。そこで相手は中央に歩を突き出してきた。

面白い手だ! 取る手もある。かわす手もある。取らせる手は? 角で取る以外は、桂取りが消えてしまう。たった一歩でどれだけ迷わせることができるだろう。どれもありそう。(どれかはわるそう)迷いと葛藤の時間。これも将棋の楽しい時間の1つではないだろうか。じっくりと時を忘れて読み耽りたい。しかし3分切れ負けではそんな暇はない。

 僕は突かれた歩を角で取った。すると相手は銀を立って角に当てた。僕はそれを角で食いちぎり、桂頭に歩を打った。すると相手は中央に飛車を回ってきた。僕はそれを歩で止めた。相手は飛車取りに角を打ち込んできた。僕は桂を取りと金を作った。すると相手は打ち込んだ角はそのままに自陣の角で歩を払った。それは嫌な手だった。(落ち着いたいい手だった)攻めてきてくれればそれに対応すればよく、と金が残っていれば活用すればいい。(指し手がわかりやすいのだ)こうして落ち着いて手を渡された方が、指し手に迷い時間を使わされてしまう。(手を消されてしまうと新しく探さなければならない)早指しの強さとは、手を見つける力とは別に手を見つけさせない術というのもあるのではないだろうか。(人間同士の戦いでは、実際の形勢以上にわかりやすさ、勝ちやすさといった要素がものを言うことも多い)

 さて、飛車取りが残っている。逃げ場が多い。逃げる必要があるかも定かでない。だから困る。僕は三間に転回しさばきの視点を変えることにした。すると相手は歩の後ろに馬を作った。(飛車のさばきが一手で完全に封じられた)完全に構想ミスだ。他に飛車を1つ浮き角に当てる手も考えたが、下段に馬を作られると次に歩で飛車を押さえる筋がありそれが不満で却下したのだ。ここでは飛車を中段に浮いておく手があり、それが角の干渉を受けずに安定したポジションだった。

「香は下段から打て」とも言われる。
 飛車は戻ることのできる香である。
 ならば「飛車は中段で使え」も理にかなっている。
 僕は振り飛車党だが、飛車の使い方がまだまだ未熟なようだ。

 以下間違いながらも中央に拠点を残し、ふんどしの桂を打ち込むことに成功した。その瞬間、相手はと金を作って三間飛車に当ててきた。さて、飛車をただで取るか。(成桂がそっぽに行く)囲いの金を取って食いつくか。(速いが駒を渡してしまう。生存した飛車に活躍される恐れがある。成桂を何で取り返されるか、その後の食いつき方も悩ましい)よさげではあるが、具体的に難しい。再び巡ってきた迷いと葛藤の時間。「この一手」という局面では迷わないが、迷える局面ではとことん迷うことができるのが人間だ。そこをどう戦っていくかが早指し戦の課題だろう。

 僕は最も筋がよさげな手、囲いの金をはがす手を選択した。穴熊らしい攻め合いにみえたが、この局面における特別な事情(馬が穴熊の金に直射していること。桂を渡すと金取りに打たれる桂がド急所であること)が頭に入っていなかった。1秒も考えなかったが、冷静に飛車を端まで逃げておく手もあったようだ。一手緩めても、飛車の守備力が残っていると寄りにくいことは大きい。対して相手は、ふんどしの桂から逃れることができない。

 直線的な変化に飛び込んでいくから「一手間違えたら勝てない」(あるいは勝ちがない)という局面に追い込まれてしまうが、一旦緩めれば確実に優勢を維持できているというケースは多い。しかし、気持ちが前に前に行っている状態で、リズムを変えることはなかなか難しい。とは言え、いつも一定のリズムで指してくる相手も対応しやすいのではないだろうか。例えば、シュートしかない選手、ドリブルしかない選手、いくら技術がすごくてもわかっていれば手は打ちやすい。それよりも何をやってくるかわからない選手の方が、手に負えないのではないだろうか。緩急を自在にコントロールできる選手こそ、真の達人と呼べるのかもしれない。

 互いに我が道を行く。僕は要の金に対し中央のと金を支えに銀で食いついた。二枚飛車に対して金を取って底歩で耐えた。相手は金取りに桂を打った。そこで金銀三枚あるので端から銀を捨てる鋭い筋を使えばほぼ寄っていたと思われる。しかし、僕は重く銀を打ち玉を追った。腹に金を打ち更に追う。相手が上に逃げたところで桂を補充する。以下桂を渡して詰めかけてきたところで、桂を連打しての即詰みとなった。拾い勝ちだった。腹に金を打った時、香の頭にかわされていると後続がない。言わば腹金は間違い頼みの一手だったのだ。(こういう手で勝っていても成長はない)相手が間違わなければ寄らないような手は駄目だ。
 重い銀打ちでは、一旦桂をかわしておくところで、それに対して銀を打ち込んで寄せにくる手が怖いが、銀桂が手に入れば「歩頭の桂!」でこびんをこじ開けて即詰みとなるのだった。最後はたまたま勝てたが、それだけのことだ。「読み切って勝つ」そういう強い勝ち方をしてみたいものだ。

 

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