眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ディープ・スリープ・モード

2022-01-20 02:48:00 | ナノノベル
「ペン1本も置いてはならない」
 すべての堕落はそんなところから始まるからだ。
 最初は軽い気持ちで置いてしまう。実際、いつでも動かすことは可能なはずだ。しかし、一旦緩み始めた行いはほとんど制御不可能だ。人間の仕様とは、滑稽なほど愚かに作られているものだ。

「敵が攻めてきたぞ!」
 あなたが血相を変えて飛び込んできた。
 その時、私の戦闘機の上は、あり得ないほどに余計な物であふれていた。鉛筆、ノート、靴下、パンツ、お菓子、トートバッグ、小銭入れ、乾電池、サプリメント……。

「だから言ったでしょう」
 あなたは言わんこっちゃないという顔で戦闘機を見上げている。
 これでは、すぐにコックピットに入ることは困難だ。
 こんな時が来るなんて夢にも思わなかった。来てほしくもないし、来てはならないのだ。何かの間違いであるべきだ。

「何この縫いぐるみは?」
「お気に入りのだけど」
 飾るものではなく捨てるには捨てられない。巡り巡って戦闘機の上にたどり着いたのだった。

「敵が迫っているのよ!」

 そう言うあなたの顔には恐怖が見えない。
 これはフェイク・ニュースではないのか?

「さあ、早く片づけなさい!」
 そう。まさにそれがあなたの目的だ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 300 | トップ | 【将棋ウォーズ自戦記】1秒... »

コメントを投稿