ドイツのストライキ。

ここ数か月繰り広げられていたドイツでのストライキ。ドイツ鉄道や空港の運行が止まったり、病院や郵便局もストを。オーストリアに住んでいた5年間では直面しなかったので、こうも頻繁にと驚いていました。

 

今まではニュースで、いやぁ、困っちゃうねぐらいに眺めていたのですが、
3月のストライキがある作品の初演と重なり、前日の夜にオーガナイズチームから電話が…

 

「あぁ…Kiki…規則で聞いたらいけないんだけどさ…あぁ…金曜日のプレミアのスタッフの一人がさぁ…あぁ…」

と、歯切れの悪すぎる導入にピンときたわたし。

「あぁ、ストライキに参加するんですか?」

「あぁ…いやぁ、もちろん彼にも聞けないんだけどさ…ただもしそうなら、幕上げられないんだよね…いやぁ…君の仕事じゃないっていうか…でも君は秋にこのプロダクションの制作チームだったし、全部把握してるじゃない…それで…あのぉ…」

 

めちゃくちゃ困ってるじゃん、と苦笑いが漏れてしまいました。

「あぁ、いいですよ。私はストライキには参加する予定じゃなかったし。」

「ほんとに!本来君の仕事じゃないから、もちろん別で支払うからさ…あぁ良かった…全部キャンセルしないといけないとこだったよ…」

「私もあなたも当事者なのにね…お互い苦労しますね…」と電話を切りました。

結局全員出勤したから、大丈夫だ!と翌朝また電話がありました。新作の制作にかかる労力と費用と時間、そして人数を知っている内部の人が、ストライキに参加するのはかなり勇気がいる行為でもあります。すでに技術部がストには参加しないと表明していたのでなおさら。

 

ストライキに参加するかどうかを聞いてはいけないというのは、初耳だったし、パフォーマンスをする人たちの契約書にはストに参加できないと明記されているというのも知りませんでした。でも主要部門の人がストに参加すれば結局、公演も開催もできないので、表に出る人だけがストライキできないというのはちょっとどうかな…とも思いますが、代わりがいないという理屈なんだと思います。

 


そしてどうやら、交渉が合意に達したようです。しばらく2年は同じ理由でのストライキはなさそうです。私も電車が止まれば、徒歩1時間かけて移動し、ストに参加する人がいればそれを埋めて。めちゃくちゃ振り回されました。

 

頻繁にストが繰り広げられる中、日本ではやらないのか?と聞かれ…

うーん…よく知らないなというのが本音でした。でも未だかつて、ストライキでJR止まりますって直面したことないし、たぶんそうそうないんでしょうね。

 

正直、当事者の私も振り回されるので、公務員のストライキがどれだけ影響が大きいか、もとい市民からしたら、どれだけ迷惑被るものか理解できます。ただ、こうやって徹底して権利を主張する文化でフェミニズムや多様化を勝ち取ってきたのだと思うと考えさせられるものがあります。

 

なんか給料がちょっとだけ上がるらしいのですが、もうドイツの給料明細と契約が複雑すぎて、私にはよくわかりません。来年の確定申告は税理士さんに頼むことにします。自動で毎月税金払ってるけど、確定申告すると2000-3000€戻ってくると周りに言われて、来年は重い腰を上げようかと…もしまだドイツで働いていたらですが。

 

ドイツの社会システムについては、いまだによくわかりません。
ただ、契約、書類社会であることは痛感していて、そしてそれはただの紙ではなくて、ちゃんと効力があるのだということはうっすら理解してきました。私も周りから、契約書の労働時間についてよく聞かれては、「わぁkIKI、それじゃあ働きすぎだよ。契約書の規定以上働かなくても誰にも何も言われないよ。君の権利なんだから」と切々と語られます。

 

好きなことを仕事にしているので、タフに取り組めるし、やりたいという気持ちと

私が自分の権利に基づいて主張し働くことは、すなわち同じ契約で働く同僚たちの権利を守ることでもあるという狭間でいつも仕事をしています。

 

ドイツが最高でもないのですが、ドイツで働き始めて8ヶ月、かなり日本と仕組みが違うようだということがわかってきた今日この頃です。

まぁでも暖かい季節で良かった。春の散歩を今の制作チームで。