秋田の相続は秋田市の司法書士おぎわら相続登記事務所秋田、司法書士荻原正樹です。
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今日のお話しは、所有権移転登記の抹消と錯誤です。
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所有権移転登記の申請をして
その登記が完了した後に
何ならかの理由で
この所有権移転登記を抹消してほしい
という依頼があることがあります
この場合
実体法上の原因としては
大まかに言って
登記申請時からそもそも登記原因が発生していなかった場合
と
登記申請時には登記原因は存在していたもののその後これを元に戻すような意思表示等があった場合
とが考えられるかと思います
例えば
前者の例で言えば
そもそもその契約自体が公序良俗に反するものであった
とか
契約に停止条件が付されており条件が成就していなかった
というような場合が考えられます
「民法」
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
(条件が成就した場合の効果)
第百二十七条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
~以下略~
後者でいえば
契約が取り消されたり
解除されたような場合が考えられます
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
(解除権の行使)
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
~以下略~
なお
民法は
不動産物権変動において
意思主義を採用していますので
代金支払の有無に関わらず
売買契約や贈与契約などの契約を締結した時点において
不動産の所有権が移転することを原則としており
登記は
対抗要件
という位置づけになっています
(物権の設定及び移転)
第百七十六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
さて
意思表示の要素(法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの)に錯語がある場合
以前は
その効果は
無効
だったのですが
現行民法においては
取消し
に変わっています
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
~以下略~
ですので
意思表示の内容に錯誤があり
民法95条によって法律行為を取り消したことを原因として
所有権移転登記の抹消を申請する場合
その登記原因は
年月日取消し
となります
(後記通達参照)
では
もとから契約が無効であったような場合
登記原因はどうなるでしょうか?
私個人の意見としては
錯誤
で良いと思います
なぜなら
登記原因としての「錯誤」は
民法95条の「錯誤」を意味するものではなく
広く「登記申請内容等に誤りがあったこと」を表すもの
だと解釈しているからです
例えば
登記申請時
Aさんの住所が本来
秋田市秋田町1番3号
であるところ
間違って
秋田市秋田町1番1号
と申請し
登記官もこの間違いに気が付かずにそのまま登記されてしまったとします
この場合
正しい住所に直す必要があるのですが
その
所有権登記名義人住所更正登記
を申請するときに利用する登記原因は
錯誤
です
つまり
この場合は
本来であれば1番3号と記載すべき申請書において
間違って1番1号と記載したことによって誤って登記されてしまっているので
この誤りを正すための申請であり
その原因は登記申請書の記載に誤記があったこと
つまり広く「登記申請内容等に誤りがあったこと」です
この場合に
民法の錯語の規定に従って
年月日取消し
とする登記原因を使うのはおかしいと思います
なぜなら
登記申請における「登記原因」とは登記申請の元となった実体法上の原因について標記すべきものであって
登記申請意思について標記するものではないと考えられるところ
売買や贈与といった実体法上の意思表示においては何ら当事者の意思に瑕疵はなく
取り消すべき意思表示がないと考えられるから
です
では
所有権移転登記の抹消の場合はどうでしょうか
例えば
当事者間で停止条件付の贈与契約が締結されており
その停止条件が成就していないにも関わらず
所有権移転登記の申請がなされて登記が受理されたとします
この場合
停止条件が成就していないので
法律行為は当初から無効です
無効ですから
これを取り消すなどということはあり得ません
だとすると
所有権抹消登記の登記原因としては
やはり
錯誤
ではないでしょうか
これに対しては
法務局から
錯誤によって登記申請がされたのであるから
年月日取消し
という原因を使うべきである
申請を取り下げるように
という指示がありました
理由を聞いてみたところ
通達で
錯誤による所有権抹消のときは年月日取消しという原因を使うという記載があるから
だそうです
法務局が言う通達とは次のものです
令和2年3月31日法務省民二第328号
民法の一部を改正する法律等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)
第2 改正に伴う不動産登記事務の取扱いについて
1 意思表示
上記第1の1(1)のとおり,改正法により錯誤の効果が取消しに改められたところ,新法第95条第1項に基づき意思表示が取り消されたことにより登記の抹消の申請をするときは,その登記原因は「年月日取消」となる。
要するに
錯誤の効果が無効から取消しに変わったので
意思表示に錯語があったことを理由に法律行為の取消しがなされたときの登記原因については「年月日取消し」になりますよ
という至極普通の事を言っているだけです
仮に
この登記原因には「登記申請意思」も関係してくるのであって
登記申請意思に錯語があるのであるから年月日取消しなのだ
と考えるとすると他の登記との整合性が問題になると思います
つまり
登記一般において
登記原因日付は原因となる法律行為が成立した日ではなく登記申請意思及びその日付を問題とすべきように思われますが
そんな話は一度も聞いたことがありません
同職の皆さんは
どのようにお考えになられますかね?
ご相談はお気軽に
司法書士おぎわら相続登記事務所秋田
土地家屋調査士荻原正樹事務所
秋田市東通五丁目12番17号1A
☎018-827-5280