象が転んだ

　除草剤を買った。
　近くのスーパーでは(既に)5割ほど値上がってたので､隣町にまで足を伸ばした。
　ウクライナ戦争による穀物や原油の価格上昇は留まる事を知らない。それは地球の裏側でも同じだった。
　とにかく､全体的に値上がりしてるのだ。野菜は勿論､油も小麦粉も精肉も､身の回りの全てが値上がりしている。
　勿論､除草剤も例外ではない。普段は199円で何とか収まってた(500ccの)やつが399円に一気に跳ね上がっていた。　
　徐々に値が上がるのならともかく､僅か数日で跳ね上がってしまう。

　日本が経済大国というのは､ずっと過去の事である。いや､アメリカがあえて作り上げた幻想だったのかもしれない。事実､今では韓国よりも貧乏だ。
　そんな状況で､”消費税を減税すれば､社会保障費を3割カットする”と更に消費税を上げようと脅す政治家がいる。
　物価が倍になった後に消費税を上げたら､(普段は大人し過ぎる)日本国民でもヒステリーを起こすだろう。やがてそのヒステリーは暴動に転じ､選挙どころではなくなる。
　これは政治じゃなくて､明らかに脅しである。脅しで票を集めるまでに自民党は落ちぶれてしまったのだろうか？
　彼ら自民党に差す傘は､今やどこにもなさそう思える。

　限りある予算の中でやりくりするのが政治なのに､彼らは湯水の如く予算を使いたがる。
　なのに､今の日本には未来を(切り開くどころか)生き抜く為の金も力も正義もない。
　井上陽水の｢傘がない｣(1972)の歌詞を思い出す。
　”行かなくちゃ
　君に会いに行かなくちゃ
　雨に濡れて(も)行かなくちゃ
　(でも)傘がない”

　今の日本はこんな状態であろうか。
　”経済を建て直さなくちゃ　
　なんとか建て直さなくちゃ
　逆風の中でもやらなくちゃ
　でも(肝心の)金が無い”

　そんでもって挙げ句は､消費税を更に上げようとする。
　政治家は､まるで消費税(増税)を魔法の杖みたいに振り回す。
　これは､農作物の単価を上げれば百姓は救われると思ってるのと同じである。そう､飛びすぎるボールを使って本塁打を多くすれば､球場は活気づくと勘違いしてるのと同じである。
　いや､ラーメンの単価を2千円に上げれば､高級感が増し､コロナ渦で激減した客足が戻ると高を括ってるのと同じだろうか。

　給与水準が高い欧米が消費税に積極的なのは理解できなくもない。しかし､給与が韓国よりも低い日本が､今の物価高の現状で消費税を更に上げたらどうなるのか？
　中国やロシアみたいに天然資源が豊富にある国ならば､世界的不況も経済制裁にも何とか持ちこたえれるだろうが､資源も経済力も何もない日本は何を頼りに行きていくのか？
　肝心のアメリカですら､今や頼りになるパートナーとは言えなくなリつつある。

　井上陽水が嘆くように､今の日本には(延々と降り続く)雨という慢性的な不況を避けるだけの”傘がない”のだ。　
　”冷たい雨がボクの目にしみる
　君のこと以外は何も見えなくなる
　それはいいことかもしれない？
　でも心配なのは
　今日の雨だ
　今のボクにはもう傘がない”

　これこそが今の日本を象徴している。
　今の日本の政治には､明日を生きるお金すらない。いや､明日を切り開く勇気も叡智もない。
　消費税を上げても､更にお金はなくなる。
　物価はどんどん跳ね上がり､やがて日本島民は､延々と降り続く混乱と不況の雨に濡れたまま凍え付き､手にはスマホだけを握りしめ､”君に会いに行かなくちゃ”とメールを残し､死に絶えるのだろうか・・・