今回は医薬品不足についてお話してみましょう。
最近、ニュースや医療機関から医薬品の供給が安定しないということを耳にされた方もおられるかと思います。
そもそもなぜ医療用医薬品の供給が足りなくなるのでしょうか。
それには様々な理由があります。
ひとつはcovid-19の流行や、ロシアとウクライナの問題があります。
これらは医薬品に限らず、半導体やその他の原材料不足や流通経路の乱れなどにより自動車をはじめあらゆるものの供給の不足や遅れにつながっています。
医薬品に関してはそれらに加えて、品質管理の問題が影響しているようです。
発端となったのは、2020年末頃に、ジェネリック医薬品を作っている製薬会社で、抗真菌剤の中に睡眠薬の成分が誤って混入し、健康被害が出るという事件ではないでしょうか。
このニュースは大きく報道されましたので、ご存知かもしれませんね。
医薬品は、厚生労働省に申請し、承認された方法で製造する必要があります。
また、製造所(工場)はGMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造管理及び品質管理の基準という厚生労働省令(法律のようなもの)に適合している必要があります。
先述の事件は、これらの手順が守られていなかったことが原因で起こりました。
この事件以降、多くの製薬会社は製造工程や製造所が適切に運用されているかの自主点検を行ったようです。
その結果、不適切であった製品がいくつか見つかり、出荷停止や製品の回収が行われました。
ある製品に対してそのような措置が取られると、代替品として別のメーカーの製品や別の医薬品の需要が急増します。
しかし、需要が急に増えたからと言って、短時間で製造量を増やすことは大変困難です。
国内の製薬メーカーでも、成分となる原薬は海外から輸入しているものも多くあります。
したがって、需要が急増しそうな状況になると、在庫が枯渇してしまうのを避けるためにメーカーが自主的に供給量を調整することになります。
本来その製品を使用していた患者さんの治療に影響が出ないよう、出荷を維持するために出荷数を調整するのです。
このような状態になることが出荷調整です。
これはいわゆる売り惜しみとかではなく、必要とする患者さんを守るための措置ともいえるのではないでしょうか。
また、生殖医療に使用する医薬品については、今年4月からの不妊治療の保険適用によるお薬の需要の増加なども影響していると思われます。
当院では、これまで多くの薬を使用していた実績に応じて、メーカーのさまのご協力も得ながら可能な限り必要な医薬品の調達に努めております。
一部のお薬に関しては不足傾向が避けられないもののありますが、治療の中断を回避するために、治療に影響のない範囲で同効薬への処方変更を行うケースもございますので、ご理解とご協力いただきますようよろしくお願いいたします。
なお、処方変更となりましても基本的には治療効果への影響はありませんのでご安心いただければと思います。
お薬に関しまして、何か気になる点などがございましたら、医師・薬剤師にお気軽におたずねください。
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「新薬ってどのように開発されるの」 その4 医薬品の承認審査
(文責:[生殖医療薬剤部門] 山本 健児)
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